《爆炎の騎士》さんはかく思う
「はー、まさか、こんなことになるとは……」
真っ赤な髪に、騎士の鎧。それが『ホワイトガーデン』におけるトッププレイヤー、《爆炎の騎士》の象徴であった。
VRMMOの世界で《爆炎の騎士》として名を馳せたラウルは、現在ゲームの中にトリップするという嘘みたいな経験をしている。
「ナナが、この世界に転生しているとかもなぁ……」
それに加え、VRMMO時代の友人でいつの間にかゲームにこなくなっていた《風神》ナナが転生しているというわけのわからない状況である。ナナ――現在のリアが死に、転生したという事実。それはショックであったし、もう二度と、例え元の世界に戻れたとしてもリアとともにゲームをすることはできない。会うこともできない。だが、リアがこの世界に転生していたからこそ、トリップをしたラウルは助かっている一面がある。
どういう経緯であるかは知らない。リアがこの世界で十六年もの間、どのように生きてきたのかもラウルはわからない。だが、ギルドマスターの養子となり、レベル1から《ギルド最高ランク》に上るまでレベルを上げているのだ。ここはゲームとは違う。現実である。戦いの中では簡単に命を落とすことさえもある。だというのに、その世界でリアはずっと戦ってきたのだ。
(……俺はカンストして150あるけど、それはゲームでの話であって、レベルの割りには戦えはしない。というか、解体とかもよくわかんねぇしな)
ラウルがいるのはギルドマスターに手配された部屋だ。リアはコミュ障が激しく、ギルドマスターの知らないリアの知り合いということでラウルはギルドマスターに散々質問もされたものである。しかし、リアは養父のギルドマスターにさえも前世の事など話してもいないようで、説明もできなかった。
リアが「ラウルは、レベル高いけどいろいろ戦えないから教えてあげて」とギルドマスターにいったのもあって、色々教わっているが、レベルと色々合わないとよく突っ込まれている。
(リアに教わるのが一番いいけれど、なぜか学園に通っているらしいしな。……つか、《姿無き英雄》とかどれだけ厨二なんだ。この世界は恐ろしいからバレたくないってこそこそしているらしいけど、なんつーか、ゲーム時代のあいつはもっとどうどうとトッププレイヤーしていたんだがなぁ)
ゲーム時代のリアを知っているラウルにとって、《風神》ナナと《姿無き英雄》はあまり重ならない。戦い方も違えば、この世界でのあり方も違う。
ただ、重なる部分もあるといえばある。
それは、戦闘に進んで飛び込むところである。
(ゲーム時代はただデスペナがあるだけだからって進んで特攻してたっけ。それで死に戻りしてたか。何度も何度も突っ込んで、無理だろって相手に勝ったりしてたっけ。……この世界は一度死んだら終わりなのに色々無茶してレベル上げているみたいだけど…特攻して無茶してるのは変わらないか)
そう、リアはゲーム時代から結構無茶をやらかしていた。やってみなければわからないと絶対無理だと友人に言われる敵に突っ込み、死亡。デスペナを食らう。というのをよくやっていた。
この現実の世界でも同じような無理をしているとは思わなかったが。
(はー、ドラゴンと友達とか、《姿無き英雄》と呼ばれ色々やらかしているとか、リアは全く何をやっているんだか……)
考えれば考えるほど不思議である。トリップして無双するとかそういうわけでもなく、レベル1から黙々と上げてこの世界で強者となり得ているのだ。おかしい。
確かにこの世界は『ホワイトガーデン』と酷似している。だからスキルの事もわかって、レベルも上げやすかったのは確かだろう。しかし、それでも《超越者》に至るのは大変であるというのは、ギルドマスターからも聞いている。
この世界の常識もあまり知らないけど役には立つと、リアはギルドマスターに告げた。それもあって、色々常識を教わっている。その常識の中に《超越者》の事もあった。
そこに至った最年少――それがリアだといっていた。ギルドマスターが知り得る限りの範囲で、最年少。十代でそこに至れるものはリア以外知らないといっていたのだ。
(まぁ、リアの幼馴染も行くかもっていってたけど……。はー、しかもそいつリアに惚れているらしいし、俺喧嘩売られるかもっていってたし)
正直リアを追いかけて10代にしてはレベルが異常に高い存在に喧嘩を売られるなんてラウルは勘弁してほしかった。というか、ラウルはレベルが高いし、レベル差はあるが、現実での戦い方をよく知らないのもあって、勝てるかどうかがわからないのだ。
(……どうにか、会うまでに色々やらなきゃな。学ぶことが多すぎる。いつか、地球に帰れることもあるかもしれない。でも、帰れない可能性が高い。どうにか頑張らなければな)
そんな風にラウルは気合をいれるのであった。
ちなみに、リアとは再会してから一度も会っていない。
この世界に来てからむしろギルドマスターとの交流が深まっているラウルであった。




