課外実習があるらしい。
「課外実習が行われるから、プリントを読んでおくように」
担任の教師がそんな言葉を言い放つのをリア・アルナスは相変わらずの無表情のままに聞いていた。
(課外実習か。ギルド側では参加したことあったけれど、生徒としての参加だと動きにくそう。班での行動らしいし)
課外実習はリアの通うアルフィルド学園の生徒たちに実践を積ませるための実習である。この実習において魔物があふれる地で生徒たちは自給自足の生活をしばらく送ることになる。
リアやソラトはギルドのメンバーとして魔物との戦闘も難なくこなすことができるが、大多数の生徒たちはそうではない。
そもそも学園はそういう存在になるために学ぶ場であり、本来ならもうすでにそういう力を身につけているリアたちが通う必要のない場所である。
この課外実習においてギルドのメンバーは、学園からの依頼を受けて不足の事態が起こらないようにと見回りをする役割を毎年負っている。リアももう少しランクが低かったころにそれに参加したこともあった。
課外実習は必修単位であり、落とすわけにはいかないものだ。
だから学園に在籍し続けるためには参加しなければならないのだが、リアはちょっと嫌そうな顔をしている。
(一人で行動していいならレベル上げも含めて魔物狩りまくるのに。誰と同じ班になるかによっても色々面倒かもしれない。学園の中じゃ私、戦闘能力平均以下って見られるぐらいにしているし)
無表情のまま考え込むリアである。
ちなみに一人で黙り込んでいるのはリアと、もう一人、カトラス・イルバネスぐらいである。
他のクラスメイトたちははじめての課外実習ということで各々ざわめいている。
「ティアルク、緊張しますわね」
「ああ、そうだな」
ティアルク・ルミアネスの声もリアの耳には聞こえてくる。
(ハーレム主人公って、《ギルドランクA》なのになにいっているんだろうか……。課外実習ぐらいで緊張していたらこの先やっていけないと思うんだけど。上を目指すなら。でも、上を目指しているようには見えないし、仕方ないか)
正直常にスキルを使い、常にレベルを上げることを優先しているリアはティアルク・ルミアネスが本当に強くなりたいと思っているようには思えない。
本当に強くなりたいのならば、学園に通わず師である二人に習ったほうが断然戦闘面のためにはなるだろう。学園に通っているにしても友人たちと遊ぶことばかりして、普通の一般生徒のやっている努力しかしていない。
(うーん、というか、私ルミさんたちに言われてぶちのめしたけど、結局それためになってないよね。ハーレム主人公ってこのままぐたぐた伸びなさそう。努力もしてないし)
ルミとゲンはティアルクに期待しているようだが、正直その期待は無意味だとリアは思う。
いくら周りが期待していようが本人がやる気を出さなければ意味がない。努力は今の現状に満足していないからこそ、為すものである。リアも、自分の強さに満足をしていないからこそ、もっと強さを求めて強くなるための努力を続けている。
が、ティアルク・ルミアネスは満足している。
そして、この学園の生徒たちも……。トップである生徒会たちも。
生徒会のメンバーたちは、この学園でトップクラスの実力者であり、その年の割りには強いという事実があるからこそ満足してしまっているのかもしれない。
もしくは、レベルが上がりにくくなりもう無理だとあきらめたからかもしれない。
何かを手に入れるために代償は必要で。強くなるためにはそれなりに危険を犯さなければならないのも当然である。
(過去あり主人公は典型的な諦め君って感じだしなー。課外実習どちらかと一緒になれば観察して遊んでも楽しいかな。というか、ラウルがギルドに登録したばばかりだし、もしかしたらギルド要員として借り出されるかもな)
相変わらずリアは誰とも話すことはなく、心の中で沢山のことを考えている。
リアの前世の友人であった《爆炎の騎士》ラウルはギルドマスターの元へ預けられている。リアが誰かを連れてきたことにもちろんギルドマスターは驚いていたが、転生したことも前世のこともどう説明すればいいかもわからないし、喋る気もしなかったリアは適当にはぐらかした。
《ギルド最高ランク》の所持者であるリアの推薦もあってギルドランクCから始まっている。最もゲーム時代におけるカンストの150レベルの所持者なのだからすぐに最高ランクになるだろうが。
(ラウルが課外実習のためにうろうろするなら、班と行動しながらラウルを探しても面白いかもな)
と、ラウルが課外実習にギルド要員として参加するのならば、探して遊んでみようなどとリアは考える。
リアにとってラウルはある意味特別である。
この世界で唯一、VRMMOの話ができる相手であり、前世を共有できる相手なのだ。
突然この世界に来てしまったラウルにとっては不本意なことだろうが、リアはラウルという友人がこの世界に来てくれてうれしいと思っている。
(課外実習の班どうなるかな)
リアはそんなことを考えながら相変わらず無言であった。
相変わらず学園に友達のいないリアである。




