友達を作りたいネアラを見る
(あら、何やってるんだろ、あれ)
さて、いつものように《何人もその存在を知りえない》を行使して、ぶらぶらしていたリアだったが、家の近くでネアラのことを見た。
ネアラの姿を住んでいる家の近くで見ることは自然なことであるが、その様子はおかしかった。
ネアラは、じーっと、ある一団を見ていた。
「そっちいったぞ!」
「よしっ」
それは、ボール遊びをしている子供たちである。
じーっと見つめているネアラは気配を消しており、子供たちがネアラに気付いた様子はない。
(なんで気配を消して子供たちを見ているんだろう)
などと考えながら、リアはネアラのすぐ横までやってきた。もちろん、ユニークスキルを行使しているリアにネアラは気付かない。
「………」
ネアラは無言のまま、緊張した面立ちである。真剣に子供たちのことを見ている。
リアはその横でじーっとネアラとネアラが見つめている子供たちの集団を見ている。
(もしかして輪に入りたいのかな。ネアラは友達がほしいっていってたし)
そう結論付けるリアである。まぁ、ネアラはリアやソラトが相手にしていないときは、大体暇である。一人で訓練をすることもあるだろうが、リアみたいに『強くなることが趣味』とかではなければ退屈になるのも当然である。
リルア皇国は大陸も違う遠く離れた国だ。『姿無き英雄』に出会ったことで、こうしてこの町にやってきたネアラは一人でいることがさびしかったのだろう。
(うーん、正直私は一人が好きだし、他人とかかわるのは苦手だし、友達はルーンがいれば満足だし、ネアラの友達を作りたい気持ちはわかんないなー。でもそうか、今まで命を狙われていた皇女様だったわけで、友達ってあんまりいなかったのかな?)
義妹のことを考えながら、なかなか子供たちの集団に話しかけられもしないネアラを見つめる。輪に入りたそうにじーっと見つめているネアラだが、『姿無き英雄』から習った気配遮断を行使しているため、子供たちが見ているネアラに気付く様子はない。
(もっと堂々と見つめていればいいのに。そうしたら「お前、なんで見ているんだ?」とか「輪に入りたいのか?」とか話しかけてきそうなのに)
などと考えながら、リアはネアラを観察している。
友達を作りたいと一生懸命なネアラの観察を楽しんでいるリアである。しばらくの観察対象をネアラに決めたらしい。
(魔物と戦うより、子供たちの輪に入ることをためらうってなかなかネアラもずれているなぁ)
人のことを言えないであろうリアは、ネアラに対してそんなことを考えている。
まぁ、《超越者》であるリアの義妹になれるような特異な存在であるネアラがいろいろずれているのも当然である。
(背中押してあげようかな? 誰も見ていないし。背中を押して、すぐにユニークスキルを使えば気付かないだろうし)
いい加減、義妹の前にぐらい姿を現せよと突っ込まれそうだからそういう思考をしているのがリアである。誰も見ていないのだから「がんばれ」と口にするだけ姿を現すとか、色々方法はあるだろうが、リア的には誰も見ていなくても気付かれたくはないらしい。
(よし)
そんなわけで子供たちの輪の中に入りたいけど、入れない。どうしようとずっと子供たちのことを見ているネアラを、心の準備ができていないうちにリアは押した。
「!?」
ネアラが驚いた顔をする。
そしてネアラは子供たちの前に躍り出る形になってしまった。
「ん? なんだ、お前っ」
「珍しい髪の色!」
突然、子供たちの前に躍り出る形になったネアラは、ボール遊びをしていた子供たちに囲まれた。
「え、えっと妾は……」
最近では自分のことを『私』というようになっていたネアラだが、突然のことによほどあわてているのだろう一人称が『妾』に戻っていた。
「自分のこと妾っていったっ」
「おもしろーい」
「お前どこからきたんだ?」
物珍しいものを見るように子供たちは騒ぎ始めた。あんなに輪の中に入りたそうにしていたネアラだが、いざ子供たちに囲まれると焦った様子を見せている。
「え、えっと」
質問攻めさせてどうしたらいいかわからないネアラ。その様子は年相応な少女である。
「あ、あの、私、も一緒に遊ばせてください!」
質問の答えになっていないが、ネアラがようやく言えた言葉はそれだった。
その言葉を聞いて、子供たちは驚いた顔をして、次の瞬間笑った。
「なんだ、一緒に遊びたかったのか」
「名前なんていうの?」
「ねぇ、あのさ」
そして勇気を出して口にしたからこそ、ネアラは子供たちの輪の中に入ることになるのであった。
子供たちに囲まれ、ネアラは笑みを見せるのである。
(よし、ネアラも子供も私には気付いていないね。ネアラも甘いなぁ。街中だろうとも、隙がありすぎだよね。世の中何が起こるかわからないのだから、もっと警戒心を持たなきゃ。うん、今度ネアラに警戒心を持たせるために魔物の中突っ込ませよう)
リアはネアラが楽しそうにしている様子を見ながらそんな物騒なことを考えるのであった。
ネット小説大賞一次選考通過していました。これからもがんばります。




