とある噂を聞く
「---ここだけの、話なんだがな」
「実はさ」
「あそこの次男は……」
リア・アルナスはいつものように《何人もその存在を知りえない》を行使して、様々な場所へと出没していた。
学園の二学期が始まったのもあって、そういう自由に行動するのは放課後か休日だけだが、そういう時間にリアは情報収集をして遊んでいた。
こっそり誰かの会話を聞き、その情報を頭に留める。そういう事は昔からしていたことで、誰かの秘密を知ったところでリアには一切の罪悪感はない。
情報があった方が動きやすい部分もあるため、喜んで情報を集めている節もある。ちなみに、面倒な陰謀などがあれば義父であるギルドマスターに報告をしている。
(んー、夏休みはルーンと思いっきり遊べて楽しかったなぁ)
楽しかった夏休みに思いを馳せる。
リアの夏休みはその大部分が《ホワイトドラゴン》であるルーンと遊ぶことで占められていた。友人との殺し合いに楽しさを感じているリアはなんともまぁ、色々ずれているわけだが、周りとの付き合いが少ない彼女は自分の異常さをそこまで知らない。
《超越者》とはその種族の枠を超えた、異常者である。本来人がたどり着くことが出来ない境地までたどり着いたもの。
そんなものが学園に通っているなんて、世間に知られれば卒倒ものなのだが、本人はマイペースに学園生活を送っていた。
リアは町の中をうろうろする。
そんな中でティアルク・ルミアネスが色々やらかしているのも見たりもした。
ティアルク・ルミアネスはその不自然さを疑われている。中途半端に隠すからそうなるのである。
リアやソラトのように完璧に隠し通すか、いっそのこと本来のランクで堂々と実力を曝け出すのが一番であろう。
貴族といざこざのある少女を助けて、そして貴族とひと悶着していた。
(……女の子は助ける主義なのはいいけどさー、なんていうか、これ、ゲンさんとルノさんに迷惑かかるパターンだよねー)
なんて思いながらも、とりあえず仮にも《ギルドランクA》を所持しているのでどうにでもするだろうと考え放置することにした。
それでどうにかして、ティアルク・ルミアネスの正体が露見しようが正直リアからしてみればどうでもいいことである。
(なんか、面白い噂とかないかな)
などと考えながら、リアはまたうろうろしはじめる。
そんな中である会話が聞こえてきた。
「そういえば、聞いたか?」
「なにをだ?」
「……なんか、正体不明の男が現れたって。実力はあるらしいぜ」
その話にリアは耳を傾ける。
(正体不明の男? ってなんだろ?)
男たちはすぐ隣でリアが聞いているなどと思ってもいないのだろうペラペラ情報を流す。
「正体不明の男?」
「ああ。なんかレベルは高いらしいけど、色々不自然らしい。ギルド登録もしていなくて、どこにも所属していないって話で」
「それはまた……懐に抱えようと躍起になりそうだな」
そんな会話。
それを聞いてリアはんーと考える。
(実力はあって、不自然。どこにも所属していない。んー、これって)
そうして思い浮かべるのは義理の妹であるネアラの、母親のことである。
(ネアラのお母さんみたいな感じ?)
ネアラの母親は『ホワイトガーデン』をプレイしていたが、日本人としての体のままトリップしていた。だから知識はあっても、実力はなかった。
(……もしかしたら、アバターで転移ってパターン?)
実力があって、不自然で。それでいて、おそらく権力者たちが懐に抱えようとしていて身動きが取れない事になっている可能性もある。
(んー、ちょっと気になるけど。気が向いたら見に行こうかな)
リアは同じく『ホワイトガーデン』を知っているであろう存在であろうとも、自らかかわる気はなかった。ネアラの事に関しても目の前で生きようとしていたからこそ助けただけであり、自分の事が第一のリアの考えはそういうものである。
(私もアバターのままで転移できたらカンストしてたのにな。でも、それはそれで大変だったかもだし、赤ちゃんからの転生で良かったかも。いきなり転移とかだと、私真っ先に死にそうだし)
よく考えてみて転移したとすれば、色々と苦労が多かっただろう。赤ん坊からの転生なら、この世界に最初から存在しているわけで問題はない。しかし日本人の姿のままの転移や、アバターのままの転移だとなると、過去が存在しないとかいう事になりそうである。
(あ、でもアバターだと過去はあるか。私のアバターの過去もあったし)
リアは思考する。
そう、この世界は『ホワイトガーデン』の世界の未来という位置付で、少なからず『アバター』たちの歴史がある。イベントなどが、キャラがなした偉業のようになっているとかそんな感じである。
(となると、行方不明扱い? それなりに有名人なら『アバター』の過去もあるし。いや、でもそれはそれで持ち上げられたりして大変だよね。やっぱ赤ん坊からの転生で良かったな、私)
リアはそんな風に考えて、その場から姿を消すのだった。
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