リアと女王様
「リアは相変わらず小さいわね」
「………限界超えちゃったから、成長しないんです」
「それはわかっているけれど。というか、リア、《姿無き英雄》だって隠しているけれど、数十年後とかどうする気なの? 姿が何十年たっても変わらないって、普通じゃないわよ?」
リアとマナは、椅子に腰かけて会話を交わす。
マナの言っている事は最もである。《超越者》にさっさと至ってしまったリアは、成長は限りなくゆっくりになっている。これからリアがどんどんレベルを上げていくというのならば、益々成長は緩やかになっていく。
それならば、幾ら普通に擬態していようとも、それは意味をなさなくなる。
数十年たっても姿が変わらないというのならば、それは超越者であるという証なのだから。隠していても仕方がないのではないか、というのがマナの正直な感想である。
「それは、そうですけど」
「いずれバレてしまうっていうのなら、曝け出せばいいのに」
「嫌、です」
《超越者》であり、《姿無き英雄》と呼ばれる最強の一角であるのだから隠す必要はない。隠していれば色々弊害はあるが、それよりも利益の方が多いだろう。
「将来どうする気なの?」
「そんなの、その時、考えます」
リアは結構適当であるらしい。将来的に見た目の問題で露見する事であるが、ひとまずその問題は放置しているらしい。
「リアは本当に……、色々ズレているわね」
「……もう、かえっていいですか?」
「もうちょっと話しましょう」
帰りたそうに視線を窓の方に向けているリア(どうやら帰りは窓から出ていく気らしい)に、マナはそういって笑いかけた。
「夏休みなのでしょう? 時間はあるのだから何日でもいてくれていいのよ?」
「や、です。私、やりたいことあるので」
マナからしてみれば、面白い存在であるリアはいくらでも王城に滞在してくれて構わないのだろう。にこにこと笑っている。
しかし向かいに座っているリアは、相変わらず無表情である。
(何日もここにいるとか無理! 女王様とか右腕さんとか、私より強い存在が居る場所にいるとか。あぁあ、考えただけで恐ろしい)
そんな風に考えるのがリアである。
平気な顔して喋っているように見えるリアであるが、その内心は怯えきっている。まぁ、最もリアに限って言えば、怯えていない時の方が少ないのだが。
「やりたいこと? ああ、ルーンの所にいくの?」
「……はい、ルーンと遊ぶのです」
「リカードに聞いたけど、殺し合いを遊ぶっていっているのが面白いわ」
「殺し合いっていっても、降参したら終わりですし。まぁ、私は、本気で向かってますけど……」
霊榠山の《ホワイトドラゴン》ルーン。
そう呼ばれる存在は、恐れられている存在だ。知能のある魔物。敵に回したらいけないとされている存在。長い時を生きているドラゴン。――――一部では、神とあがめられているようなそんな存在。
「ルーンは強いものね」
「……はい」
「勝てるようになりたいの?」
「もちろん」
《ホワイトドラゴン》と友人であるというだけでは、リアは満足していない。
勝ちたいと望んでいる。
勝てないとあきらめることもなく、ただ勝ちたいと。
(諦めない事も、一種の才能なのかしらね。リアがこれだけ強くなれたのは、貪欲なまでの強くなりたいという渇望から。そして、これ以上強くなれないとあきらめなかったから―――)
マナはそんなことを考えながらも、「勝ちたい」と口にしたリアを見る。ルーンの話をしていたからだろうか。今すぐにでもルーンと戦いたくなっているのか、リアは心なしかうずうずしているように見えた。
(多分、私にも向かってくる。私を超えようと向かってくる。それが、いつの日になるかはわからないけど、リアはあきらめないだろう。――ああ、だからこそ、リアって面白いわ)
あきらめる事などなく、ただ強くなりたいという願望の元、ひたすらに強さを磨く。
リアはそういう少女である。
「……女王様、私、夏休み、ルーンと、思いっきり遊びたい。だから、もういっていいですか?」
「そう、じゃあまたね、リア」
「……はい、また」
リアがあまりにもうずうずしていたから、ルーンと戦いたいというオーラを出していたから結局マナも帰りたいという言葉にお別れの言葉を口にした。リアはそれに頷いたかと思うと、《何人もその存在を知りえない》で姿をけし、そのままその場からいなくなったのだった。
(楽しみだわ。リアが、ルーンに勝てる日が。そして私に迫ってくる日が)
驚くほどに強さを求め、どんどん強くなるリアを思い、マナは何時かそういう日が来るだろうとそんな風に笑うのであった。




