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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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宣言をして闇討ちしました。

 「ルノさん」

 「わっ、リアちゃん!」

 ギルドマスターから仕事内容を聞いたリアは、《風音姫》と呼ばれるギルド最高ランク所持者であるルノ・フィナンシェリの住まう一人暮らしの家に勝手に侵入していた。

 ギルド最高ランクであるのもあって、ルノの住まっている家はそれはもう大きく立派である。普通のギルド最高ランクはそういうものなのである。一般的なアパートに住んでいるリアが色々おかしいだけの話である。

 そして勝手に侵入したリアに流石に気づいていなかったらしいルノはそれはもう驚いた様子を見せた。まぁ、普通に考えていつの間にか家に侵入し、突然話しかけられたら驚くのは当たり前だろう。

 しかし、まぁ、リアが接触してくるときは大抵こんな感じなので、話しかけてきたことがリアだとわかるとルノは冷静になったようだ。

 「リアちゃん、何の用?」

 「ルノさん、私、闇討ちする」

 「はい?」

 闇討ちするなどと言い出したリアに、何を言っているんだという表情を浮かべる。

 「ティアルク・ルミアネス、闇討ち。半殺し。決定」

 「え? ちょっと待って、リアちゃん、ティアルク何かしたの?」

 そういいながらもルノは冷や汗を流す。

 リアが有言実行の少女であることを十分に理解しているからだ。そして自分の弟子の事を思考する。

 (まさか、リアちゃんの年をばらしたとか? 嫌でもそれなら半殺しじゃなくて殺されるわね。それに私に宣言なんかせずに殺してから「殺したから」って報告に来るでしょうし。なら別の事を、リアちゃんに半殺しにされる程度の事をやらかしたってことかしら? いや、だけど、リアちゃんに半殺しにされるほどの事言ったかやったかしちゃうなんて……馬鹿ね、本当に)

 リアなら、殺すなら宣言もせずにパッと殺すだろう。半殺しにするといってきたのは、その程度の事をやらかしたということなのだ。

 リアは、《姿無き英雄》と呼ばれる強者である。やろうと思えばティアルクなんて一瞬で殺せる。

 「……私と、会った。いった。そして、護衛、やらされる」

 「そうなの…。それで護衛って誰の?」

 「ティアルク・ルミアネス、友人。エルフ、女王様、親族」

 「あら、ティアルクの友人、女王様の親族なの?」

 エルフであり、ギルド最高ランク所持者であるルノはエルフの女王に会ったこともあった。そのため、驚いた様子を浮かべる。

 ルノも知らない情報であったらしい。

 「ティアルク・ルミアネス、せい。私、護衛しなきゃ」

 《姿無き英雄》としての仮面をつけたままだが、その仮面の下が不機嫌に歪んでいることがルノにはわかった。

 (あら、もう、仕方がない弟子ね。《姿無き英雄》が自分の事露見するのを嫌っているってちゃんと言ったのに……)

 ルノは困ったように笑みを浮かべている。

 ティアルク・ルミアネスは、あの年頃にしては強く、将来が楽しみになる少年だ。しかし色々と詰めが甘いというのは、ルノもゲンも理解していることであった。

 学園へと通わせることにしたのは、普通の生活をしたいとティアルク自身が言っていたのも理由で、ルノとゲンはその学園生活の中でその詰めの甘さがどうにかなればいいと期待していた面もあった。

 《姿無き英雄》と呼ばれるリア・アルナスが弟子と同じ学園に居たということは、ルノにとってみれば幸いであったといえる。なんだかんだで、目の前で人が死ぬのは嫌だとリアは助けはするし、何かあっても《姿無き英雄》が居るならばなんとかなるからある。

 最もリアにとってみれば、迷惑な話だろうが。

 「………だから、闇討ち」

 「……殺しはしないのでしょう?」

 「ルノさんと、ゲンさん弟子、このくらいで殺さない。でも、もっと喋るなら殺す、かも」

 「……そこはこっちでちゃんと言っておくわ。ごめんね、リアちゃん。もうこんなことさせないから」

 「当たり前です」

 ルノの言葉にきっぱりとリアは答えた。

 「闇討ちする、説明して。もう、ないように」

 「わかったわ。まぁ、ティアルクは嘘がつけない所があるから友人に嘘を言えなかったのでしょうね」

 「そんなの、知らない」

 「とりあえずもうないようにするわ。今からするの?」

 「ん。だから、回収よろしくお願いします」

 わざわざ回収してもらうために言いに来たらしい。リアはなんだかんだで心を許した人には結構配慮して動いたりする。ティアルク・ルミアネスが同じギルド最高ランクであるルノとゲンの弟子であるからこそ、わざわざこうしていいにきたのである。

 そしてそんな会話をしたすぐ後、夏休みだからと友人たちと思いっきり遊んでいたティアルク・ルミアネスは背後から襲撃され、大けがを負うことになったのである。

 ルノから「《姿無き英雄》のこと話したのでしょう? 怒ってたもの。これで反省したらもう馬鹿みたいに嘘つけないからってぽろぽろ話さないようにね」と言われ、ティアルク・ルミアネスは《姿無き英雄》に対する恐怖心を募らせるのであった。









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