夏休みに突入しました
「リアちゃん、一緒どこかいこう!」
「嫌」
夏休みに突入した初日。リア・アルナスは、自宅でのんびりと本を読んで過ごしていた。
読んでいる本は薬草学についての本だ。ここが家なのもあって、リアは寛いでおり、隠蔽も使っていない。
そんな場所にやってきたのは、ソラトであった。
満面の笑みでリアの事を誘うものの、ばっさりと断られてしまう。
「なんで!?」
「……めんどくさい。なんでソラトと出かけなきゃならないの」
視線さえもソラトに向けずに淡々と答える。
「大体、ソラトと出かけて、学園の生徒見られたら、面倒」
「ユニークスキル使っててもいいから!」
「……それ、意味ない」
「あるよ! ユニークスキル使ってようが、リアちゃんと一緒に出掛けられたって事実があれば俺はそれだけでいいよ!」
ソラトはどれだけリアの事が大好きなのだろうか、何処までも必死である。
「……ソラ兄、どれだけリア姉と出かけたいの」
呆れたように問いかけたのは、コーヒーを飲んでいたネアラである。今まで一言もしゃべっていなかったが、実はネアラはずっとこの場にいた。
リアに助けられ、リアの義妹になってそれなりに時間は経過しており、ネアラはこんな《姿無き英雄》と《炎剣》を見ても特に動揺しないようになっていた。
慣れというものは恐ろしいものである。
「どれくらいってすっごくだよ! リアちゃんと夏休みにデートできると思うだけでわくわくするし」
「……デートなんかしないし」
「リアちゃんにその気がなくても、一緒に出掛けられるだけで全然いいよ!」
「……必死過ぎて、逆に出かけたくない」
「リアちゃん、酷い」
「……ソラト、めんどくさい。ちょっと黙って」
リアは基本的に自分本位な生き物である。ソラトに対してもこういう態度をよくとる。
本人としてみれば、本を読んでいて忙しくてソラトの相手をしたくないという事なのだろう。
「でも、リアちゃんどうせすぐ、霊榠山にいっちゃうんでしょ!?」
「うん。ルーンと遊ぶ」
「霊榠山にいくのですか?」
上からソラト、リア、ネアラの言葉である。
ソラトの問いかけに、リアが頷き、そして何故霊榠山に行くのか? と不思議そうにネアラが言葉を発す。
ネアラはリアの唯一の友人が霊榠山の《ホワイトドラゴン》などとは知らない。リアも必要以上に自分の事は語らないし、リアがよく家に居ないのはいつもの事であり、そのうち何度か霊榠山まで出かけているなどと知っているはずもなかった。
「ん、友達がいる」
「霊榠山にですか?」
「ん、ドラゴンの友達」
「はい!?」
本に視線を移したまま、淡々とした答えがリアの口から放たれる。ドラゴンの友達という言葉にネアラが驚愕の声を上げる。
「リアちゃんは、あの霊榠山に住んでいる《ホワイトドラゴン》と友人なんだよ。それですぐそっちに行くんだ。あそこは、俺もキツイから、ついていけねぇし」
答える気がないリアの代わりに、ソラトがネアラに向かって答える。
幾らソラトが《炎剣》と呼ばれる存在であろうとも、霊榠山はソラトにとって危険な場所であり、なおかつソラトはリアの幼馴染であるがルーンには会ったことがない。
だからこそ不機嫌そうだ。
本当なら夏休みもずっとリアと一緒に居たいのだろう。だというのにリアは気がつけば色々な場所に出没していたりするのである。
「え」
ネアラの顔が驚愕のまま固まってしまった。
「ん、ルーン、友達。ルーンとの殺し合い(遊び)楽しい」
「遊びって、リアちゃん殺し合いだろ。本当、リアちゃんは《ホワイトドラゴン》と殺し合っておいて遊んでるっていうなんて流石だよな。あー、俺もはやくリアちゃんに追いつきたい」
「追いつかせない。それに、ルーンとの遊びにソラト邪魔。いらない」
「ひどいリアちゃん、でも大好き!」
「はいはい」
固まっているネアラなどそっちのけでリアとソラトはそんな会話を交わす。リアとソラトはネアラが驚いていることなどどうでもいいらしい。
「殺し合っているの…?」
「遊んでいるの。……ルーンと、遊ぶ、レベル上がる。好き。楽しい」
「あー…リア姉って、ちょっと戦闘狂だよね」
「そんなつもり、ない」
リアは否定しているが、いくら自分が強くなれば死なずに済むからという理由で命の危険があろうと強くなるために色々な戦場に飛び込んでいくリアはなんだかんだで戦闘狂である。
第一まともな神経をしているならばあの霊榠山の《ホワイトドラゴン》に向かって何度も何度も戦いを挑むなんて真似出来るはずがない。
「リアちゃん、いついくの?」
「明日にでも」
「じゃあ、今日しかないじゃん! リアちゃんどうせ霊榠山いったり、依頼受けたり、旅したりでここかえってこないよね!?」
「ん、たぶん」
「じゃあ、今からでかけようよ!」
「やだ」
「魔物狩りとかでいいから!」
「やだ」
「本当は二人がいいけど、ネアラを鍛えるってことは!?」
「やだ」
「リアちゃーん……」
「そんな顔してもいかない」
その後何度も何度も出かけようとソラトはリアの事を誘うものの、リアは一切なびかなかったのでした。




