もうすぐ試験ということもあって少し周りはばたばたしている。
あと一か月も経たないうちに、新入生たちにとってはじめての定期試験が行われる。
試験は、薬学、歴史、魔物学、武器学、実技など多数の科目が存在する。強くなるための学園が、リアたちの通うこの場所であり、そのこともあって試験科目はほとんど実践に基づいたものである。
そしてそういうものであるからこそ、難しい。
新入生たちの大多数は、定期試験の勉強をはじめようとばたばたしはじめていた。
相も変わらず読書に励むリアの周りでもクラスメイトたちがあわただしく話し合っていたりもする。こんな中でテスト勉強もせず余裕そうなリアを、クラスメイトたちが何とも言えない表情で見ていようとも、リアはマイペースにその視線なんか気にしてませんとばかりに、黙々と読書をしていた。
事実、実践に基づいた試験は、《姿無き英雄》として様々な実践を経験しているリアからしてみれば、身についているものばかりだった。まぁ、中には身についていないものもあるが、それは家に帰ってから勉強すれば事足りる程度の範囲だ。
授業を受けているからには、まじめに学んで、今後の糧にしたいと思っているリアは《超越者》であるから勉学に励まなくていいとか、そういう考えは一切なく、基本的に貪欲に知識を求めていたりする。
(試験かぁ。そこそこ難しいってのはお義父さんとルカ姉には聞いているけれど、でもそれで成績上位になるのも面倒)
この学園で優秀な成績を残せば、将来の見通しが立つということもあり、皆が真剣にテストに取り組むものであるのだが、もう既に自分がどうやって生きるか決めているリアからしてみれば、目立ちたくないので成績上位には入りたくなかった。
(あ、でも調合学とかは良い成績とっておかなきゃ。就職できないのは困る)
ギルド最高ランク保持者であるのだから、就職する必要がないというのにリアはそんな思考に陥っていた。
(てか、主人公君は空気読まずに一位とか余裕で取りそうだなー。なんだろう、本当にバレたくないなら私やソラトみたいに徹底的にやればいいのになぁ)
そういえば、前世で読んだ携帯小説とかの最強主人公は大抵隠したいとかいいながら隠す気ゼロだった気がするなと思い出しながらそんな風にリアは考える。
ティアルク・ルミアネスはただでさえ、現時点で目立っている。成績優秀で、人気者で、見目が麗しい少年として。
生徒会にも目をつけられているし、その周りに美しい少女たちが存在するのも彼が有名な理由の一つであろう。
というか、男子生徒からは羨望とか、嫉妬の目で見られているのにそれに気づかないあたりが、それだけティアルク・ルミアネスが鈍感だということである。
(なんで主人公君ってあんなに鈍感なんだろうか。あれだけ向けられている好意に気づかないとかふつうありえないよね)
リアがそう思うのも無理はない。周りの態度はひどくわかりやすい。これを見ても気づかない奴はどれだけ鈍感なんだと驚くほどである。
そんな主人公属性を持ち合わせた鈍感なティアルクは、現在いつものメンバーに囲まれて定期試験の勉強を行っている。正直な話を言えば、ギルドで働いておきながら勉強が必要なのだろうか、とリアは思うのだが、リアとティアルクでは経験の差が激しい。
リアは戦いの中に自ら突込み、常に戦い続けている。それも自分が死にたくないからレベルを上げたいという理由で。
対してティアルクは学園生活を楽しみ、与えられた状況に満足している。リアとの戦いで(というか、あしらわれただけともいえるが)、それなりにやる気を出したようだが、自分から戦いの中に身を置こうという意思はない。
故に、伸びない。
現状に満足してしまっては、死にもの狂いで強くなろうとしなければ高レベルになればなるほどレベルを上げることは難しくなるものだ。
(しかし本当に主人公君って色々な意味で主人公君だよね。ビビる。あれだけ主人公属性持ち合わせた人が現実にいるとかねー)
なんて考えながらもリアは次にちらりとカトラス・イルバネスの方を見る。例の過去あり主人公君である。こちらは定期試験前だというのに余裕なのか、それともやる気がないのか知らないが、一切勉強する気はなさそうだ。
(本当ハーレム系主人公に過去あり主人公に……このクラスはいろいろと面倒なのがそろっているよね)
リアはそう思っているが、一番秘密を抱えているのは明らかにリアである。リアの言葉でいわせればリアも『実力を隠したい系主人公』とでもいえそうである。
(ま、いいや。私は定期試験はどれだけ目立たない点数を取るかだよね、問題は。優秀な成績で目をつけられるなんて絶対にやだし。平均的な点数を取りたい。わざわざ課題も手を抜いてだしていたわけだし。今更良い点数とってもおそらくカンニングとか言われそうだしなー。それは絶対やだ。手の抜き方を考えるの面倒だけど、頑張ろう)
そしてそんな思いにかられながら、リアはどのくらいなら普通の人は知っているかななどと黙々と考え続けるのであった。
周りが定期試験前だからと慌てていようとも、リアは本当にいつでもマイペースであった。
そうして、もうすぐ定期試験はやってくる。




