幼馴染がリンチされていても放置
エルフの国から戻ってきたリアは、次の日普通に学園に通っていた。先日《姿無き英雄》としてエルフの国で色々やらかしてきた後とはとてもじゃなければ思えない。
クラスメイトたちがエルフの国の建国祭の話をしていようが、無関心なままに本を読んでいた。読んでいる本は、エルフ族についての書籍だ。なんとなく、エルフの国にいった後だからこれを読んでいるらしかった。ちなみにもちろん、《隠蔽》のスキルを行使していて、その本の内容を周りに悟らせないようにしている。
リアは黙々と読書をしている。相変わらず人とかかわる気は一切ないリアである。
学園生活において友人の一人も作らないというのは、普通に考えてなんともまぁさびしい学園生活と言えるのだが、リアはこのままのんびりと一人で学園生活を過ごすことを心から望んでいた。
そのため、誰かに話しかけられることも一切望んでいなかったし、例えば興味がでた人間がいたとしても観察こそしたとしても自ら話しかけることなど欠片もする予定がなかった。
リアはちらりと同じクラスであるレクリア・ミントスアへと視線を向ける。茶色色の髪を腰までなびかせた美しい少女。よくよく見てみれば確かにリアの知っている《エルフの女王》と似ている気もしなくもない。
(レクリア・ミントスアが、女王様の親族かぁ。隠しているのはばれると色々と厄介だからだろうな。女王様と親しいっていうだけでそれだけで狙われることになるんだから)
《エルフの女王》の名を持つ者の意味は大きい。
その親族だというだけで周りの全てが変わってしまうほどに、多大な影響力を与える。
リア自身もそういう影響が嫌だからこそ、隠している。リアはリアである。幾ら《姿無き英雄》という肩書があろうとも、《臆病者》でコミュニケーション能力皆無の少女、それがリアである。
《姿無き英雄》だと悟られれば自分の平穏な暮らしは失われてしまうとそれを隠すことにそれはもう必死であった。
そんなリアであるが、暇なときは《何人もその存在を知りえない》を行使して学園内を闊歩している。
リアにとって情報収集をすることは趣味である。学園に入学して二か月以上経過しているが、その間こうやって学園内の情報を集めることはよくあることであった。
そんなわけで学園内の教師や生徒が「自分だけの秘密だ!」などと思っているであろうことは結構リアに筒抜けであったりする。様々な情報をリアは持っている。そして無駄な記憶力を発揮して、それらを覚えている。
やろうと思えばその秘密を片手に脅しをかけ金銭を奪い取るなどといった非道な真似だってできるだろうが、リアにはその必要性はない。そもそも脅すという行為自体面倒なことであるし、お金に関して言えばギルド最高ランクの依頼をこなしてきたリアには一生暮らしていけるだけのお金がある。
この学園の学費はそれなりに高いのだが、リアは普通に自分のお金で学費を払っていた。
で、そんなリアであるが、現在は見知った人間を見ていた。
「おい、お前いい加減にしろよ」
「《姿無き英雄》の弟子だなんて――」
正しくは、幼馴染であるソラトが男たちに囲まれて責められているのを見ていた。
その様子を見ながら、あいつは全く何をしているんだとでもいうようなそんな思いにリアはかられていた。
そもそも《炎剣》であるという事実を隠すのならば、《姿無き英雄》の弟子であるというある意味事実である話をする必要はないのである。ただ、リアとのつながり感じたいなどとわけわからない理由でわざわざ苛められる要素を付け足しているなんて馬鹿なのかとしか言いようがない。
「何をいい加減に? 俺は別に嘘なんていってないしー」
ソラトのそんな言葉を聞きながら、リアは
(うわ、むかつく言い方)
などと思って思わず顔をしかめてしまった。
(これさ、私でもいらってくる。なんだろう、なんか殴りたくなるってか手を出したくなるような言い方っていうか……。全く馬鹿だ、ソラト)
そこからソラトに対するリンチ(ただしレベル差が激しすぎてソラトはやられたふりをしているが、ダメージはない)を見ながらもリアはひどい思考である。
(そもそも私と同じが良いとかわけのわからない理由で学園に入学するのもふざけているし、誰かと仲良くする気もないとかいってわざわざ嫌われるような言動するのもふざけてるし……。ソラトって、本当、ふざけている。あれが《炎剣》だって知ったら皆卒倒しそう)
あんなのでも《炎剣》という二つ名を与えられた強者なのである。リアは自分の事を棚に上げて、なんでレベルが高い人は総じて性格が色々あれなんだろうなどと考えていた。そんなことを考えているリアも色々な意味でずれているし、色々おかしいのだが。
しばらくソラトをリンチしていた男たちは、「もうこれに懲りてふざけたこというなよ」などといって去って行った。残されたソラトは男たちの姿が見えなくなると立ち上がる。平然とした表情だ。
ユニークスキルを行使してその場にいるリアにもちろん、ソラトは気づいていない。
(面倒だろうから、《姿無き英雄》の弟子っていうの撤回すればいいのに)
などと考えながらも、ソラトを観察するのも飽きたのかその後はすぐにリアはソラトに話しかけることもなくその場から去っていくのであった。




