帰り際にいらない情報を渡される。
建国祭はそれから女王を狙う不届き者も数多くいたが、三人に対処されて何事もなく過ぎていく。
あとから聞いた話だが、エルフの女王、人族最強の存在という事でマナは狙われているらしい。
それもそうだろうと、話を聞いてリアは感じる。強者であるということはそれだけ目立つ存在であるということ。そして目立つ存在であるということはそれだけで、狙われる存在であるということである。大抵のものは強者にひれ伏すが、中には馬鹿もいる。しかし見下してはならない。この世に絶対はなく、圧倒的な強者が驚くべき存在に殺されるという事もないわけでは決してないのだから。
リアはそれを理解しているからこそ、余計に自分の存在を隠している。恐ろしいから。なるべくできうる限り長い間を生きたいから。一度死んだ記憶を持ち合わせているからこそ、リアは死というものにそれほどまでに怯えている。
―――死にたくない、そう、本当にそれだけなのだ。
「リア、今日は来てくれてありがとう」
「……来なかったら、女王様、来る、いうから。きたく、なかった」
「とかいって、建国祭を思いっきり楽しんでいたじゃない」
「……どうせ、なら楽しむ」
マナのからかうような言葉に対し、ぷいっとそっぽむいてリアは告げる。
どうせ来なければならないのならば、楽しむのは当たり前だとそんな風に告げて。
もう建国祭は終わっている。
今、リアがいるのはマナの自室である。そしてこの場には、マナとカイトとリアしかいない。
というか、ほかに人がいるというのならばリアはこんな風に会話を交わすことなどしない。姿をさらすことさえも絶対にしないだろう。マナとカイトにはすっかり自分の事がばれているからこそ姿を現しているだけである。
最も基本的にリアは警戒心が強いので、相手が絶対的な強者である《エルフの女王》マナと《女王の右腕》カイトではなければばれていようともこんな簡単に姿を現すことはあまりしないが。
リアはふかふかのソファに腰かけ、足をぶらぶらさせている。足が床に届いていない。
マナはそんなリアを見てにこにこしていて、カイトもまた面白そうにリアを見ている。
「ふふ、リアは面白いわね」
「……そう、ですか」
「ええ、面白いわ。ところで、リア。貴方リカードに聞いたけれど、アルフィルド学園に通っているんですってね」
「は? 《超越者》のくせに学校に通っているのか?」
ふとマナが言った言葉に、カイトが思わずといったように反応をする。やっぱり誰でも驚くべきことなのであった。
「資格ほしいんで、通ってます」
「じゃあレクリアって子知っている? エルフの」
「え」
マナから予想外の名前が出てきて、リアは嫌そうに返事をした。顔をしかめている。
内心ではめんどくさそうだと思っていた。
「知っているのね」
「クラスメート」
「まぁ、クラスも一緒なの。あの子、実は私の姪にあたるのよね」
「え」
さらっと暴露されたことに益々嫌そうな表情をリアは浮かべる。
(えー、女王様の姪って、エルフの王族の血筋ってなんて面倒な!)
そんな気持ちになるのも当たり前だった。
(っていうか、やっぱり嫌な予感あたった。レクリア・ミントスアってば様付されてたもんね、あれって王家の血筋だからかー、うわー。めんどくさ。てか流石だな、ハーレム主人公、ハーレムにかこっている女たちがそろいもそろってわけありって……どこの主人公だ)
呆れた気持ちになりながらも思考する。
ハーレム主人公―――ティアルク・ルミアネスは流石である。流石、どこの主人公だと思えるほどに主人公属性を帯びている。まるで物語の主人公のようである。
それらを観察するのは楽しいけれども正直かかわりたいとは欠片も思っていないためそういう事情を聴くのはちょっと嫌なリアであった。
「………それ、私に、いって、どうする、ですか」
「どうもしないわよ。ただリアが聞いたらどんな顔するかなっていっただけよ。嫌そうな顔している」
「……遊ばない、で、ください」
むすーっとした表情を浮かべて、不機嫌そうだ。
そんな表情を浮かべている姿はやっぱり子供じみている。今年15歳だが、見た目とそんな表情でもっと年下に見える。
最もそんなことをリアに告げれば、リアは一層不機嫌になることだろうが。
「……も、帰ります」
「あら、もう帰るの。ゆっくりしててくれていいのに」
「や、です。帰ります。さらば、です」
リアはソファから立ち上がって、それだけ告げる。マナはなんだかんだでリアを帰してくれた(というか、建国祭にリアが来てくれただけで満足していた模様)。
(あーあー、聞きたくない情報聞いちゃった)
などと思いながらもリアは王城から出て帰路につくのである。
相変わらず《何人もその存在を知りえない》、《瞬速》、《空中歩行》の三つのスキルを行使して海を渡るのであった。




