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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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久しぶりの学園 ①

 リア・アルナスは久しぶりに学園に顔を出している。

 繁殖期という人類にとっての危機が去り、人々は日常を取り戻しつつあった。ただし失った命は数え切れないものであった。多くの人が亡くなった事実は消えず、悲しみから立ち直れていない者は多い。

 学園の生徒達の中にも命を落としてしまった者は少なからずおり、追悼のための式典も行われた。

(……運悪く魔物が出て亡くなったのはともかくとして、自分から魔物討伐に向かったのはある意味仕方がないこと。力がないのにそういう所に飛び込んでしまえば死んでしまうのも当然だから)

 何人かの生徒が亡くなったことに泣いて、感情を露わにする学生はそれなりにいる。だけどリアにとっては人の死というのは身近なものである。

 それに事故のように魔物に遭遇してしまったことはともかくとして、自分から魔物の元へと飛び込んで亡くなったのは仕方がないことである。

 ちなみにティアルク・ルミアネス達一味は、嘆き悲しんでいる様子を見かけた。

 それだけ感受性が強いということだろう。

 ティアルク・ルミアネスは、繁殖期において活躍した。そしてギルドランクAであることも露見している。リアからしてみれば、正体を隠して学園生活を送るというのを目標にしながらも繁殖期で好き勝手に動いていたことに関しては考えなしだなぁとしか思えない。

 《竜雷》と《風音姫》の弟子であるということで、学園の生徒達はティアルク・ルミアネスのことを憧れの目で見ているものがそれはもう多い。そんな強者が生徒会長であることを喜び、短い間でも共に学び舎で過ごすことが出来ることを心強く思っているようである。

(めそめそしているなぁ。繁殖期においては人が亡くなることはよくある話なのだけど、メンタルが結構弱めだなぁ。卒業後にギルドのメンバーとして生きていくつもりならばそういう修羅場に慣れていないと大変そうだけど。というか、ただ同じ学園の生徒が亡くなっただけでこれかぁ)

 彼女は目の前で命の危険がある人がいれば助けるがそれだけである。なるべく人の死を見たくないとは思っているから、目の前の死は防ぐ。けれど、誰かの死に対してそれほどまで落ち込むことはあまり理解が出来ない。

 ティアルク・ルミアネスは、この学園内で最も有名で目立つ存在だ。その彼がこれだけ嘆いているというので、他の生徒達も影響を受けて嘆いている者が多い。皆、つられてしまっているのだろう。

(名誉ある死だとか言っているけれど、結局死んでしまったら終わりだからなぁ。うん、私は名誉ある死とか言われても、死ぬのだけは絶対に嫌だな。後から良い人だったとか、活躍しただとか言われたとしてもそういう死後の評判は要らない。私は周りからどういわれたとしても、どういう立場になったとしても生き延びる)

 こうして式典で、亡くなった生徒のことが語られるのを聞いてリアはただ思う。

 繁殖期において亡くなることは基本的に名誉ある死だと言われる。そして彼らの名は、記録として残されることだろう。家族たちからの言葉というのも語られる。

 その亡くなった学生が如何に幸せだったのか。亡くなったことは悲しいが立派に生きた。そういったことが綴られたもの。

 生物とはいつか死を迎えるものである。それは当たり前のことであるが、彼女は亡くなったとしてもそういう風に語られたくはないなとは思った。

(前世の私のお葬式、どうなってたんだろう? こんな感じで家族の言葉とか、弔いがされていたのかな)

 前世のことはリアは時々しか思い出さない。前世の彼女は、今の彼女を形作る重要な過去ではある。とはいえ、この世界で生きて十数年の彼女は強くなることしか考えておらず地球での暮らしは中々思い出さない。

 自分が前世で死んだ後、どうなったのだろうかと少し思いをはせる。

 自分の葬式がどうなっていたかはリアには分からない。ただ普通に葬式が行われただろうというのは分かる。今世ではリアは死んだとしてもそういう葬式はしてほしくないなとは思っている。

(あー、でも私の葬式をしないでほしいと言ったとしても、私が《姿無き英雄》として名が広まっているからこそ私が死んだら面倒そうだなぁ。うん、私は《超越者》だから長生きをする予定だけど……、人生の後半は表舞台に出ないというのもありと言えばありか。そのあたりはそのうち考えるか)

 少なくともリア・アルナスは今の所、一介の学生としか周りに認識されていない。そしてリアはこれからしばらくは成長に疑問が思われなくなるまでは普通の少女を装って生きるだろう。その後は大人しく過ごす予定だが……《超越者》である彼女にはそれよりもずっと先までの人生が続く。

 自らの終わりが来る時は、どこかの場面で殺されたりしない限りはまだまだ先のことなのだ。

(まぁ、ずっと先だと私の生き方も変わっているかもしれないしなぁ)

 今の所、リアはひたすらレベルを上げることしか考えていない。けれど、その先はまだまだ分からないことであった。



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