王城に顔を出したら、呆れられた。
「女王様、来ました!」
リアが渋々、王城に忍び込んで、マナの自室にたどり着いた時、マナはそこに側近のカイトと共にいた。
この前、カイトには自分の事はばれているので、リアは堂々とその場にやってきていた。
姿を現したリアを見る二人の目は呆れていた。
「リア、さっき見た時も思ったけれど随分祭りを満喫しているわね」
「また、忍び込んだのか。全く、結界が意味をなしていないとは」
マナはリアが随分祭りを楽しんでいることについて、カイトはこの王城にさらっと忍び込んでいることについてである。
そもそも、マナに建国祭に来るように言われておきながら挨拶に来ることもせずに一人祭りを楽しんでいる時点で色々とおかしい。人族最強のエルフの女王様に誘われるなんてことがあるならば、皆喜んで挨拶に来るものである。
「祭りは好きなので。あと、エルフの国の建国祭はじめてなので」
リアは祭りというものが嫌いではない。そしてエルフの国の建国祭にははじめてやってきたため、少しはしゃいでしまっていたらしかった。
「そう。ふふ、まぁ、楽しんでいるならいいわ」
「はい、楽しんでます。また楽しんできていいですか」
「……もう、どんだけリアはここにいるのが嫌なのよ」
「自分よりレベルが圧倒的に高いお二人のいる空間にいるのが怖いから、今すぐ去りたいです」
ばっさり本心を言った。なんだかんだで自分よりレベルの高い存在におびえながらもマナとカイトがリアをどうこうする気がないのを知っているからかそんな感じの態度である。
「別にとって食ったりするわけじゃないんだから、そこまで怯えるな」
「それは無理な相談です」
と、リアが言うのもリアは基本的に常に色々なものに対して怯えているような《臆病者》なので、こういう状況で怖いという感情を感じないというのは無理な話である。
ネガティブな面も持ち合わせているリアからすれば、今この場でマナとカイトに襲われたら生きて帰れないというところまでいっている。それは、ないといえるけれども絶対ないということはありえないのだからそういう事が起こるかもしれないとリアは考える。
故に、《臆病者》の称号をリアは所持している。
「リア、今日呼んだのは私がリアと会いたかったからなの。だからお話しましょう」
「……そんな理由で呼ばないでほしかったのですが」
「だって呼ばないとリアは来ないでしょう」
「それは当たり前の事です」
そういう受け答えをするリアをマナはそれはもう楽しそうに見ている。
そして次の瞬間、
「相変わらず可愛いわね」
などと告げながらリアの体を抱きしめた。
小さなリアの体はすっぽりとマナの腕の中で納まる。
「……うぉおお。なぜ、抱きしめるのですか」
「リア、逃げるから」
「と、というか、今日建国祭なので女王様忙しいんじゃないんですか! 私なんかに構っている暇ないんじゃ…」
「残念、余裕はあるわ。第一ギルド最高ランクの《姿無き英雄》をもてなすのも女王としての重要な仕事だわ」
「わ、私は離してほしいのですが。恥ずかしいので」
「ダメよ」
さらっとリアの言葉を拒絶したマナは、前に会った時と同様リアを抱え込み、すわり、自分の膝の上へと載せる。
リアはそのあたりでもうあきらめた顔をしていた。
人族最強に変なところで抗ったとしても結局どうしようもないのだ。敵意がないのなら好きにやらせた方がいいのかもしれないとさえ考えている。
(あまり人に触れられるの好きじゃないけれど、女王様に対してそんな拒絶の言葉言いにくいし。というか、なんで私は毎回膝に乗せられているのか。子供扱いとか嫌なのに)
と相変わらず脳内では喋りまくっているが、リアの実際の口は一切動いていない。
無表情を浮かべながらもじっとしている。
膝の上に乗せられながらも警戒しているリアをマナは益々面白そうな目で見ている。
そしてカイトはそんなエルフ族の女王様とギルド最高ランク保持者を見ながらどんな反応をしたらいいかわからない様子であった。
「リア、そんなに警戒しなくていいのよ」
「無理です」
「リアは普段どんな生活をしているの? 学園に通っているのでしょう?」
「普通です」
リアの実際の学園生活を知っているソラトあたりが聞いていれば「常にスキルを使い続け、色々な人のうわさ話を勝手に聞いていたりするのは普通ではない」という結論を下すであろうが、生憎ここにはリアの学園生活を知っているものはいない。
カイトは学園に通っているのかと突っ込みたくなったが、口を閉じたままマナとリアの話を聞いていた。
「ルーンは元気?」
「元気です」
「リアって喋るの苦手よね、もう少し喋りなさい」
「無理です」
第一勢いのままに口を開いているときはともかく、普段はリアは重度の人見知りであるためであって二回目のマナたち相手にそんなに喋るわけはないのだ。
「そう、まぁ、いいわ。そのうちもっと喋ってもらうから」
「そうですか」
リアはマナの膝の上に乗せられたままの会話である。
そうしてそうこう話しているうちに、『マナ様、国民たちの前へ挨拶をお願いします』と外から声をかけられマナは女王としての仕事に向かうことになった。リアはその際逃げようとしたが一緒に来なさいと捕まったため、《何人もその存在を知りえない》を行使してマナたちについていくこととなった。




