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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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繁殖期の終わり ④

 模擬戦をやると決めたリアと悪魔族の男は、そのまま向かい合う。

 始まりの合図は不要。

 ――その場で行われるのは、《超越者》達による戦い。

 彼女は、そのまま飛び掛かった。

 リア・アルナスの強みはそのスピードである。筋力値と俊敏値の高い彼女は、それをもってして敵を殲滅していく。そういうスタイルの少女である。

 出し惜しみは最初からしない。

 なぜなら相手が自分よりも強者であるというのを感じ取っているから。

 見た目はただの優男にしか見えない。常に笑っているその顔を見ると、それだけの実力者であるようには見えない。

 ――だけれども、彼は確かに強者である。

 大剣を両手にリアはとびかかっている。それをその男は全く動じることなく避けていく。

「速いな。ユニークスキルで姿を隠しつつ、このスピードでとびかかってくるとは面白い」

「……簡単に避けておいて、よく言う」

「ははっ、お前だって俺がこの程度でやられるとは思っていないだろう?」

 男は何処までも楽し気である。彼女がこれだけの実力を持っているという事実が楽しくて仕方がないようだ。《超越者》に至るような存在というのはそもそも普通とは感覚が異なる。

「それはそう」

 この程度で簡単に倒されるような存在であるのならば、彼女は戦うことを求めないだろう。

 想像通り、その男が強者であることにリアは喜びを感じていた。

(強い。初見でこれだけ反応が出来て、簡単に対応できるだけで凄まじい。私は割と初見殺し気味なのに。こんなに簡単に私の攻撃を避けるなんて)

 強い存在と戦えることは、それだけ強くなるための道標となる。

 彼女の攻撃はただ武器で襲いかかるだけではない。時折複数の属性を使った魔法を行使する。動き回りながら、だけれども確実に魔法を発現させるリアを男はまた面白そうに見ている。

「ただ速いだけではなく、動き回りながら魔法まで使うか」

 普通なら、こんな風に動き回りながら魔法を行使することは難しい。それを簡単にやってのけるのが彼女である。それだけ彼女は戦いながら魔法を行使するというのを当たり前のように繰り返している。

 もちろん、最初からそれが出来たわけではない。度重なる戦いの中で、そうするのが当たり前になっているのである。

「……避けられる」

「簡単に俺にあてられると思うなよ」

 悪魔族の男は笑っている。

 ……そしてその男は、今の所リアの繰り出すあらゆる攻撃を避けているだけである。反撃を今の所、繰り出してこない。それはその男がそれだけ余裕を抱いているという証だろう。

(……焦りが見られない。私がこれだけとびかかっていて、これだけ余裕な存在って数えられるしかいないよなぁ。だからこそこうして戦えると鍛錬になるのだけど。お義父さんや女王様達とはまた雰囲気というか、戦い方とか異なるなぁ。それにこの人は表舞台にほとんど出てこないタイプ)

 リアはそんなことを考えながらも、どのようにすれば目の前の男に届くのか……というのを試行錯誤する。

 目の前の男へと、攻撃が届かない。

 幾ら剣や魔法を繰り出しても、どうすることも出来ない。

 ――そういう状況だったとしても彼女は諦めることはないのである。

 絶対に敵うことが出来ないと、そこで諦めてしまえばそこに追いつくことなど出来ない。

 連撃を繰り出す。止まることのない攻撃。そして剣だけではなく、足なども出る。だけど、それも対処されていく。

 一部、頬を掠めれそうな攻撃もあったが、それも結局対処をされる。

(んー。体力もお化けだなぁ。私も体力はかなりある方だけど、この男もそう。そうなると持久戦で勝ち越すとかも難しい。ただ力が強いだけで、体力面が弱いのならば戦いやすい。でもどちらもあるタイプだと結局、決着がつかないで終わるからなぁ)

 圧倒的な力を持つもの同士の本気の殺し合いとなると、拮抗して決着がつかないということもよくある話だ。

 リアと悪魔族の男の戦いは、殺し合いではなくただの模擬戦である。

 とはいえ、それでも一般人たちが見れば恐ろしい戦いであろう。

 そのままリアが攻撃を繰り出し、そしてそのまま男がガードするというのがいつまでも続くかと思われたが――男が魔法を使った。

 それは闇である。

 その場の全てを覆いつくすような真っ黒な空間が現れる。

 ……自然の魔力も含めて、悪魔族の男の支配下になっている。

(――この場全てを覆いつくすぐらいの魔力か。うーん、なんていうか私の体力とかをそぐ感じの何かが動いているな。自分の魔力で体を覆ってはいるけれど、時間がかかりすぎてしまったらこのままなし崩しに負ける。どちらにしても勝てないかもしれないけれど、それでも……やれるだけのことをして、あがく。それこそ勝利につながるから)

 その粘りつくような真っ黒な魔力は、触れ続けると大変なことになってしまう。それをリアは理解する。なので、すぐに行動に移す。

 強大な力を持つ魔力を実感しても、彼女は怯まない。

(それにしても、こういう風にその場を支配する贅沢な使い方もありだなぁ)

 寧ろその戦い方を、彼女は学ぶ。



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