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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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こっそりしていてもエルフの女王様には見つかってしまうのですよ。

 エルフの国、マナフィルムに到着したリアはこの前と同じく一般人として関所を通過していた。

 《超越者》ともあれば、もっと大々的に入国をするものばかりだが、生憎目立つことが死ぬほど大嫌いなリアはこっそりとしかやってこない。

 関所の兵たちもまさか、「建国祭を、見に来た」などと片言でしかしゃべらなかった少女が《姿無き英雄》だとは想像さえもしない。寧ろリアを《姿無き英雄》だなんていったところで、周りを歩く一般人たちはそれを認めはしないだろう。たとえ、真実だったとしても。

 一般的な認識として考えれば、《姿無き英雄》は幼い少女ではない。男であるという噂だ。実際の《姿無き英雄》を知るものは限られており、噂のみが様々に広がっている。リア・アルナス=《姿無き英雄》だなんて誰も思わない。

 (どうせ、来なきゃいけないんだからのんびりと食べ歩きしようかな。建国祭に来るようには言われたけど、他に何も言われてないし)

 エルフの女王様に建国祭に来るように手紙でいわれながら、エルフの女王様の元へ挨拶に行く気は特にないらしい。それでいいのか、と思われそうだが、実際建国祭に来るようにしか言われてないからいいだろうとリアは思う。

 どうせ、ここまで来たのだからとリアは建国祭を満喫する気のようだ。建国祭はそれはもう盛り上がる。エルフの国中が、お祭り騒ぎ状態になるのである。

 屋台が立ち並び、いたる所で人々が騒いでいる。

 エルフ以外の種族も結構この場にはいる。建国祭を見に来る観光客というのは多い。さまざまな人々がごった煮になっていることもあって、問題が起きないように警備のエルフもうろうろしている。

 「一つ」

 「お? 嬢ちゃん、たこ焼き一つ欲しいのか? 六個入りと八個入りあるが、どちらがいい?」

 「六」

 そんな賑わいに満ちたマナフィルムの首都で、リアはたこ焼きを購入していた。スキルを行使して海を渡ったこともあっておなかがすいていたらしい。

 「よし、持っていきな、嬢ちゃん」

 支払いを済ませて、たこ焼きを受け取る。リアは無表情なまま、内心ほくほくであった。

 人気のない裏路地に入ると、そこに座り込みたこ焼きを食べる。

 そのおいしさに思わず口元が緩む。

 (次、何食べようかな。どうせなら色々食べまわりたい)

 エルフの女王様の元には行く気はないらしい。建国祭には来ているから文句ないだろうとばかりに食べ歩きをする気満々である。

 それから色々な屋台を周り、それぞれの食べ物を頼んで、食してぶらぶらする。

 そうこうしていれば、リアは見知った顔を見た。

 「レクリア様、お次はどちらにいきますか?」

 「そうですわねぇ」

 レクリア・ミントスアである。あのティアルク・ルミアネスのハーレムたちの一員であるエルフの少女だ。

 エルフ族であるから、エルフの国の建国祭にやってきているらしい。

 それを見てリアはそういえば、レクリア・ミントスアってエルフだったっけと面倒そうな顔をした。

 (顔見られたら面倒そう。そうだ、お面買おう。顔見えなくなるし、丁度良い)

 などという思いから、お面を買った。この世界がVRMMOの世界であるのもあって、地球と同じように祭りではそういうものが売ってあるのである。

 「お面、くだ、さい」

 「おう、嬢ちゃん、どれがいい?」

 お面やさんにそう問いかけられて、リアはまじまじとお面を見る。

 エルフの女王様のお面、ホワイトドラゴンのお面、《姿無き英雄》のつけている仮面のお面―――など有名な人々のお面が立ち並ぶ。

 (え、《姿無き英雄》の仮面の奴もあるの? うーん、これは特にいつもつけられるし関心がない。それよりもルーンの奴がいいなぁ)

 という思いからホワイトドラゴンのお面を購入すると、装着して祭りを楽しむ。

 (てか、気にしなかったけどミントスアって様付けされてたよね。もしかして身分を隠して学園にいる的な感じ? 流石、ハーレム主人公の周りにはそういうのが集まるんだね)

 レクリア・ミントスアについて少し考えて、今考えても仕方がないかと頭を振る。

 その後はかき氷、焼きそば、クレープ、焼き鳥など沢山のものを食する。そのほかにも金魚すくいや射的なども行う。

 思いっきり一人でリアは祭りを満喫していた。

 

 目立つ行動は一切していなかった。


 しかし、流石としか言いようがないことだがエルフの女王様はリアの前に現れた。

 あたりがざわめいているなと思ったらマナがその場におり、「ふふ、私の事は気にせずに皆楽しんで」と笑っていた。リアは近くに居ながら、気づかれていないことを祈っていたが、横を通り過ぎる時に「リアちゃん、おいで」とぼそっと告げた。

 ほかの人々に聞こえないように小さな声でいってくれたことには感謝したものの、お面をかぶって平然と一般市民にまぎれていたつもりなのにバレてしまったことにリアは恐怖した。

 (やっぱ、自分よりレベルの高い人って怖いなぁ。こわいから面倒だけど挨拶にいかなければか)

 そんな思いにかられたリアは、そのすぐ後に《何人もその存在を知りえない》を行使して、エルフの国のお城へと向かうのであった。

 もちろん、王城へはこの前と同じ手段でこっそりと忍び込むのであった。





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