ソラトは今日もリアのことしか考えていない ③
「《炎槍》と?」
ソラトは一瞬、嫌そうな顔をする。
「ああ。ソラトももうすぐ学園を卒業だろう。リアの傍で働くにしても、ギルドメンバーの一員として働き続けるだろう? いずれお前もギルド会議に出席することになりそうだし、縁を結んでおくことはいいことだぞ」
「……ギルドマスター、《炎槍》がリアちゃんに会いたがっているの知ってて、俺と依頼させようとしてる?」
「よく分かっているじゃないか。お前と《炎槍》関わらせたら面白そうだろ?」
ギルドマスターにそんなことを言われて、ソラトは微妙な表情をした。
愉快犯であるギルドマスターからすれば、ソラトと《炎槍》を関わらせることで何かしらの化学反応が起こることを期待しているのかもしれない。最もただ面白そうだからと言う理由だけでソラトと《炎槍》をあわせようとしているわけではないだろう。
ギルドマスターが口にしている通り、ソラトはこれからギルドに所属する一員として活躍していく人材である。きっといつの日か、ギルド会議に参加できるようになるだろう。それでいて《超越者》に至るだろうとギルドマスターから期待されている。
既に《超越者》に至っているリアの陰に隠れているが、十分に異質な存在である。彼だって十代でそれだけの結果を残しているのだ。
「……依頼はちゃんとこなすけど、リアちゃんのことをよく知らないくせにリアちゃんと関連付けられて噂になっているのムカつく」
「お前だってリアと関わりがあるって言って回ればいいじゃねーか」
「そんな風に言いふらして俺がリアちゃんに嫌われたらどうするの!? 俺はリアちゃんに嫌われたら生きていけない!」
ソラトはリアが関わっていると本当にポンコツ化する。どんな強敵を前にしてもいつも冷静で、動じない。それでいて華麗に対応を終えてしまう。普段のソラトはそういう男であるが、リアのことが関わるとがらりと雰囲気が変わる。
「ははっ、本当にお前は面白いな」
ギルドマスターは面白そうに爆笑した後、依頼の詳細を話す。
「お前に頼みたい依頼についてだが、魔物の対応以外にも反乱を抑えてほしいんだ」
「内乱? こんな時期にそんなことを起こす馬鹿が?」
「そう言ってやるな。こういう状況だからこそ、馬鹿みたいなことを起こすやつはいるんだよ」
ギルドマスターの言葉にソラトは面倒そうな表情を浮かべる。
「とある街を治める貴族が魔物への対応が遅れたんだ。それで死人も出た。そこを付けこまれたらしい。元々貴族へ反意を翻そうとしていたらしくてな。周りを味方につけて反乱を起こしたようだ。ただでさえその街の周りには魔物がそれなりに出現していて、それどころではない状況だ。反乱はさっさと鎮圧するに限る」
「それって貴族側で鎮圧が難しい?」
「反乱軍側に被害者の遺族たちがいるというのもあり動きにくいのもあるだろう。あとは頭の痛くなる話だが、冒険者の一部が加担している」
「へぇ……。ギルドに依頼されたわけじゃないのに、政治にそうやって割り込んでるんだ」
「そうだな。だからそいつらの回収も必要だ。こういう人にまつわる対応はリアだと結局力づくで解決しかねーからな」
「まぁ、リアちゃんは喋るのも人前に出るのも嫌いだし」
リアは人と喋ることも、人前に出ることも極端に嫌がる。だからこういう反乱の対応は、結局力ずくで治めるだけになるだろう。
ただでさえ魔物の対応で忙しい時期に、そういう人同士の争いというのは少なからず起きる。人々が一致団結して向き合わなければならない時にそのようなことをする連中のことをソラトは馬鹿だと思う。
結局、そういう内乱が起きる状況というのは魔物の襲撃がまだ緩やかな街で起こりうる。街自体が滅亡の危機にある場合はそのようなことを起こす暇などないのだから。少なからずの余裕があるからこそ、そういうことが起こりうる。
「《炎槍》はそういう対応って上手く出来るタイプ?」
「単純な一面はあるが、そのあたりは出来るはずだ。そのあたりはお前の方が得意だろう、ソラト」
「ギルドマスターは俺のこと、買いかぶりすぎ。俺はそういう内乱への対応はそんなにしたことない」
「それでもお前は出来るって俺は分かっているぞ。それにソラトが反乱をおさめたり、活躍したら――その分、リアだってお前のこと褒めると思うぞ。人に多く関わって、上手く片付けるというのはリアだと難しいことだからな。自分が出来ないことを成し遂げたらリアのことだから、『ソラト、凄い』ぐらいは言うだろうな」
「俺、頑張る! いっぱい活躍して、リアちゃんに褒めてもらう!! リアちゃんがどうしてもしなきゃならない人への対応を俺に任せてくれるようになるぐらいには結果残したい!」
「急に元気だな……」
「だって、リアちゃんにもしかしたらいつか頼られることが出来るかも! リアちゃんは一人で生きていけるようなそういう女の子だけど、リアちゃんが困った時に頼られたい! それで頼まれごとを片付けたらリアちゃんが『ありがとう』って言ってくれるわけだろ?」
ソラトは興奮したように勢いよくそんな気持ち悪いことを言っている。
そしてやる気を出したソラトは、ギルドマスターに言われた街へと向かうのであった。




