リアは検証をしながら、魔物を倒していく ⑬
リアはそれが喋ったことにも、誰もいないこの場でリアに話しかけてきたことにも驚いた。
彼女は一度、自分に話しかけてきたのではないのでは……と静観を決め込む。しかしその魔物は、やはりリア・アルナスという少女に気づいているらしい。
「そこの、姿を隠している。人間……。なぜ、人間が一人でこのようなところにいるのであるか」
リアが姿を隠していることもはっきりそれは認識しているらしかった。
(襲い掛かってくる気配はなし。というより体を動かす力を持たない? 人語は喋れて、頭は働いているけれどそれだけってこと? 体が麻痺していて動かせないとか、そういう状況? んー、それにしても私のことを人間であるということは認識しているなんてどういう風に分かっているんだろう)
リアはそんなことを考えながら、どう反応をするかというのを悩んでいる様子を見せる。このまま無言のままでも状況が動かないと判断し、口を開く。
「魔物たち見つけた。狩り。あなた、動けない?」
「狩り……か」
彼女の躊躇ない言葉に、その魔物は諦めたような呟きを発する。仲間たちが狩られる現状だというのにも関わらず、その魔物は動じない。慌てることも、取り乱すことも全くなく――無感動な瞳で、リアを見ている。
「あなたも、狩る」
「……よかろう」
「抗わない?」
「……我は抗う力を持たぬ。お前は力を持つ人間であるというのが分かる。どうすることも出来ぬ」
「潔い」
「我はどうせ利用されている身。このまま生き永らえるよりも死に絶えた方が良い」
彼女はそんな魔物の言葉を聞きながら特に、感情が動かされることはない。彼女はただその死にかけの魔物の声を聞いているだけである。
「そう。なら、さようなら」
生きようとする力を持たない。寧ろこの魔物は、寿命をとっくに超えているようにリアには思えた。理由は知らないが、利用されている身などと言われているところからも自分の意思で命を繋いでいるわけではないだろう。
それにこの魔物は、この拠点が彼女の手によって滅びるであろうことは理解しているのだ。
彼女はそのまま、その魔物を狩った。
首が飛び、命が失われるその瞬間、その魔物は笑っていた。
(この拠点の中でどういう立場であるのか、なんであんな状態で生きていたのかは分からないけれど……きっと何かしら特別な立ち位置。それにしても寿命で亡くなるのを無理やりつなぎとめていた感じだけどなんでだったんだろう?)
彼女はただそんなことを考えながら、その魔物の死体があった部屋を見て回る。
そこにはリアが読めない魔物の文字で書かれたものも多くあった。あとは先ほどの魔物の日記のようなものも見つけた。彼女はそれももしかしたら何かしら面白い情報があるかもしれないと《アイテムボックス》の中へと放り込んでおく。
魔物でも日記を書くのかと驚いたが、それはこの拠点に住まう魔物が人型で、知能を持ち合わせているからに他ならないだろう。
その部屋である程度、物色したリアはそのまま他の場所を見て回る。
――そしてめぼしいものを全て、《アイテムボックス》へと入れ終わると狩りが始まる。
「ギュイイイイイ!?」
「ギュイッ!!」
同種の魔物の命が失われていくこと。
それに対して彼らは大変動揺している。
その命が失われるのは突然だ。
何の前触れもなく、ただその場に居る姿の見えない存在に狩りつくされていく。
彼女は自分が狩ると決めた相手に対して全く容赦がない。
(んー。まだまだいるなぁ)
狩って、狩って、狩って――、だけどまだ魔物達は殲滅出来ない。
彼女が思っているよりも、数が多い。だけど着実に、その数を減らしていく。
そして狩りは、終わる。
(これで、最後の一匹)
最後の一匹の命を狩り取る。
その場に存在しているのはリアだけである。他の者たちの命はもう既に彼女に狩られた。
(これでこの拠点はどうにか出来たけれど、こういう知能を持つ魔物の拠点、他にもあるかな。あるならその拠点の魔物たちがもしかしたら渦に何かしているかも。……それならそういう魔物の拠点を壊して回るのもありか。私の知らない技術がもっと見られるかもしれないし)
彼女にとってこういう魔物の拠点を壊滅させることも日常の一環でしかない。
(でもこういう魔物の拠点ばかりを潰しているわけにもいかないか。街が魔物に襲われているならそっちの対応もしなきゃだし)
ギルドの一員であるリアは、街の危機を放置して好き勝手にしているわけにもいかない。そういうわけできちんとリアはやらなければならないことを整理しながら渦に関する検証を進めつつ、他にも知能ある魔物たちが暗躍していないか調べることにした。
(お義父さんへの詳しい報告は後でするでいいか。今はお義父さんも忙しいだろうし。私も繁殖期の本格化がおさまるまではゆっくり出来ないし)
今回潰した拠点に関する報告はきちんとギルドマスターにした方がいいだろうとリアは判断する。
そしてリアはその拠点で別の魔物が繁殖しないように処理をした後、その場を後にするのだった。




