繁殖期の本格化と学園について ②
ギルドは魔物の繁殖期において、大きな役割を持つ。
各国からの要請を受けて出現した魔物を倒したり、住民たちを避難させたりとなんでも行うものである。
最も高位ランク者で、戦いにしか特化していないリアが繁殖期において行うことと言えば魔物を倒すこと以外はあり得ない。
「やる気満々だな」
「当然、魔物の繁殖期。私が見たことない魔物も沢山出る。それにレベル上げのチャンス」
リアの頭の中は自分のレベルをあげることばかりである。自分が死なないように動くことは当然のこととして、彼女にとって繁殖期などという魔物が溢れる場はレベルアップに最適なのだ。
彼女の言葉にギルドマスターは面白そうに笑う。
「本当にリアは面白いな。急ぎで行ってもらいたい場所は三か所だ」
「どこ?」
リアが問いかけるとギルドマスターはその場所を告げる。その場所は普通なら到着するのに時間を有するが、リアならば手遅れになる前に辿り着くであろうことをギルドマスターは知っている。
「優先順位は?」
「どこも最優先だ。手が回っていないからな。あとはギルドへの要請が間に合っていない場所も沢山あるだろう。そのあたりも手が回りそうなら見て回ってほしい」
「了解。色んな場所にギルドの人、配置している?」
「ああ。何かあればそいつらに言え」
「……なるべく私、人と話したくないから緊急時以外は話さない。各場所の責任者、口堅い人?」
「ああ」
「分かった」
彼女はこんな時でも、自分の存在が周りに露見することを気にしている。
「そういえば、お前が面倒見ている奴は繁殖期はどうするんだ?」
「学園の所にはいなかった。個別で動く気だと思う。ネアラたちと一緒かも」
カトラス・イルバネスは、学園で募集している部隊には入っていなかった。個別でギルドの一員として動くつもりではないかとリアは思っている。それはネアラたちだってそうであろう。
そうやって会話を交わしていると、リアはその教室へと近づいてくる存在に気付く。
「ソラトか」
「うん。ソラト。私とお義父さん居るの気づいた」
二人が気づいた気配はソラトのものである。ソラトもリアと同じように学園を休む手続きを進めていた。ギルドランク高位者たちは学園の生徒たちに交じるような遊びをする暇はない。
「リアちゃん!!」
ソラトはリアがユニークスキルを使わずに、その場に姿を現しているのを見て嬉しそうに笑って駆け寄ってくる。
「……ソラト、学園で話しかけるの駄目。ばれたら面倒」
「大丈夫だよ。周りに人が居ないのはちゃんと確認したから。それにリアちゃんは誰か来たらユニークスキル使って逃げたらいいよ」
「……ソラトがお義父さんと知り合いばれたら、私まで連鎖してバレる」
「俺も隠れるから。リアちゃん、これから魔物討伐?」
「ん。危ない所行く。魔物倒す」
ソラトはにこにこしながらリアへと話しかけている。それに対して相変わらずリアは淡々と、どうでもよさそうに無表情に答えている。
「俺もリアちゃんについていきたいところだけど……、今の俺じゃまだまだリアちゃんにとって足手まといなのは分かってるから俺は俺で頑張る!」
ソラトはリアと一緒に魔物討伐を行いたいと思っているが、こういう状況化でそのようなことを言っていられないこともちゃんと理解している。リアはその行動一つで、街や村などを救うことの出来る存在である。そんな存在の足をとめてしまえば、それだけ失われる命がある。
ソラトは自分がリアの足手まといにならないぐらいに、同レベルに至れていたら――と自分の不甲斐なさに少し苛立ちを感じている。とはいえ、幾ら追いつこうとしても中々追いつけないのがリア・アルナスと言う少女だとソラトは知っている。
「ん。ソラトも、死なないように」
「リアちゃん、心配してくれているの? リアちゃんがそう言ってくれるなら、俺は何が何でも死なないようにするからね! 生き残ってリアちゃんに褒めてもらえるように頑張るから、俺が結果出したらリアちゃん、褒めて!!」
「……ソラト、ギルドの一員、頑張るの当然」
「そうだけど! 俺はリアちゃんに褒めてもらえた方がやる気でる!」
リアは呆れた目でソラトを見ている。
「ははっ、リア。別に減るものじゃないし、ソラトが結果出したら褒めてやればどうだ?」
「……お義父さん、面白がり過ぎ」
「ギルドとしても《炎剣》にやる気を出してもらえた方がありがたいことだからな」
「……はぁ」
リアは面白そうに見ているギルドマスターと、期待したように見ているソラトを見てため息を吐く。
「……分かった。ソラトが結果出したら褒める」
「じゃあ、俺頑張る!! ギルドマスター、俺が行った方がいい場所教えて。片付けてくるから!!」
リアが渋々と言った様子で頷けば、ソラトは嬉しそうに声をあげるのであった。
そして《姿無き英雄》と《炎剣》はギルドマスターからそれぞれに適した要請の情報を受け取り、動き出すのであった。




