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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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薬を渡しに行く ⑥

「ここで戦うといい」

 プルフェがそう言って案内した場所は、ただ広い空間である。

 巨体であるケルベロスたちやプルフェが自由に動き回れるだけの巨大な空間。その場は無機質で、彼らが魔物であるので物なども置かれていない。

 お気に入りだという果物などが積まれている程度である。

「ここ、どのくらい暴れても大丈夫? 魔法とかも、平気?」

 ケルベロスたちやプルフェと戦うとなると、遠慮なんてしていられない。しかし場所が壊れてしまったら問題なのでそう言っておく。

「問題ない。ここは壊れないように出来ている」

 その言葉の意味をリアは分からない。そういう風な空間として作られているとしても、そんなことが出来る存在がどれだけいるだろうか。

(……この場所はプルフェが生み出したもの? でも作っているではなく、出来ていると言っているのならば他の何者かが作り出したものの可能性はある。そうなるとプルフェよりも上位の存在だと思う。魔物はそれぞれの種族によって特性が違う。出来ることと出来ないことがそれで異なるはず。そう考えるとこういう空間を操るなんていう器用な真似が出来るなんてよっぽどそういう特性に優れている魔物っていうこと?)

 言葉はほとんど喋らない代わりに、リアはずっと思考し続けている。

(――これだけのものを生み出せるような存在がいるというのが恐ろしい。流石に私もこれだけのことが出来る相手と対峙したら勝てないかもしれない。その存在は危険なのかは確認しておきたい。世界で噂になっていないことを考えるとおそらくそこまで派手には動いていない? 流石にそういうどうしようもないほど力を持っている存在が動いていれば確実に目立つ。人の目に付くところにいるのならば絶対に噂にはなる。一切人前には出ずに生きている? それが人ではない何かならば長生きしているはずだよね)

 無言になったリアにプルフェは不思議そうに声をかける。

「どうした?」

「この空間、凄いと思って。こういう特別な場所を作れる人、私知らない」

「それはそうだろう。人が会えるような方ではない」

「……その人についても、私知りたい」

「教えるのは構わないが……まさか戦いたいなどと思ってないだろうな?」

「思ってる。強い存在と戦う、私強くなる」

 リアの言葉にプルフェは呆れた様子で言う。

「とんだ戦闘狂だな。本当にやめた方がいい。あの方は神と呼ぶのに相応しい存在だ。人の身ではどうしようもない」

「より一層、その存在にも勝てるようになりたい」

 相手が力を持つ魔物達からも神と呼ばれるような存在だったとしても――リアにとってみれば関係がないのだ。

 自分と、それ以外。

 リアの中にはそういう分類しかない。

 自分以外の存在には全員勝てるようにならなければならないと、リアはそんな風に思っているのだから。

「……稀有な人間だな、本当に」

「その神様のこと、戦った後に教えて」

「まぁ、いいだろう。しかしどちらにしてもすぐには会うことは叶わないだろう」

 おそらくそれだけ人間の身では会いにくい場所にいるのだろうというのが、その物言いから理解出来た。

 さてそんな会話を交わした後、まずリアはケルベロスたちとの模擬戦をする。

 プルフェに魔法を使うことが問題ないと言われていたので、最初から全力で魔法を使って、武器を振り回す。

 ケルベロスたちの体はリアよりもずっと大きい。人間の中でも特に小さなリアは、巨体を持つ魔物からしてみれば本当に小さな存在である。

 巨体だというのにも関わらず、ケルベロスは俊敏だ。

 体が大きいからこそ、それに攻撃を入れることは大雑把でも出来る。ただし、硬すぎて傷がつけるのが難しい。魔力を武器に込めて思いっきり振り下ろせば、傷はつく。しかしそれもすぐに自己回復される。

 ケルベロスは俊敏で、硬い。

 しかし何度も攻撃を試せば、ケルベロスを倒すための方法はなんとなくリアには理解出来た。

 今回はあくまで殺し合いではなく、模擬戦である。

 ケルベロスたちはリアよりも強い。油断している時ならばともかく戦闘態勢であるその魔物は中々厄介である。

(――頑張れば殺せないわけじゃない。そのぐらいの強さ。でも模擬戦で勝つのは難しいかも。なりふり構わなければ殺せるかもだけど、ケルベロスたちを殺すのが私の目的じゃない。それにもしここで誤ってケルベロスたちを殺すことになったらプルフェに私が殺される)

 ケルベロス達に関しては、頑張れば殺せる確率はそれなりにある。ケルベロスが油断していれば寝首を掻くことは出来るだろう。とはいえ、そんなことをしたらその友人であるプルフェに殺される。

 プルフェに関しては、おそらく今のリアでは殺せない。

 それをリアは十分に理解している。

 なので、模擬戦ではケルベロスたちにも勝てなかった。ケルベロス達は「人の身でこれだけ戦えるとは恐ろしい」などと言っていたが、リアはこうして勝てないようならまだまだだと自分で思っている。



 ――その後、リアの魔力が回復してからプルフェとの模擬戦が始まった。



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