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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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ぼっち《英雄》は生徒会を観察してみる。

 このアルフィルド学園において、生徒会という役職は大きな権力を持つ。

 それは、この強者こそが絶対的な力を持つ世界が故に、学園内における強者で構成されている。

 生徒会長マルス・リガント。若くしてユニークスキルを発現させている、肉体派の男。

 副会長アイディーン・キムヤナ。水属性の適性を持ち、氷魔法が得意な才女。

 その二人が最も有名だが、生徒会というものはたった二人で構成されているわけではない。マルスとアイディーンの他にも三人居る。

 書記のクノ・ミズトラン。槍の使い手で、ユニークスキルは発現していないものの自分の戦い方が確立されている男。

 会計のジルベルト・アシュイエ。弓矢の使い手で、遠く離れた距離からでも得物をしとめる事が出来る実力を持つ男。

 補佐のファン・ポトーナ。闇属性に特化した魔法剣士で、接近戦のプロフェッショナルな男。

 アイディーン以外は、全員男である。それが、どういう状況をもたらすかといえば……、

 (氷の副会長様、逆ハー築いてて面白いよね)

 マルス以外の生徒会の男がアイディーンに並みならぬ思いを持っているという、逆ハーである。

 今、生徒会室には生徒会五人全員がそろっている。その様子を窓の外から見つめ、リアは面白そうに笑っている。

 魔力を部屋へと垂れ流し、部屋の会話まで聞き取っている。知らず知らずのうちに生徒会の五人はリアに話を聞かれている事になるのだが、彼らは気づけない。

 「アイディーン、今日でかけないかい?」

 ジルベルト・アシュイエは男であるのに、髪を長く伸ばしている中性的な顔立ちをした美しい青年である。髪の色は薄い茶色。

 「てめぇ、何抜け駆けをしてやがる!」

 怒りに声を上げるのはクノ・ミズトラン。マルス同様肉体派といえる筋肉が凄い男である。ちなみに髪の色は赤。背は高く、柄が悪い。

 「……違う、俺と一緒。アイディーン先輩は」

 淡々とまるで事実を述べるかのようにそんなことをいって火に油を注いでいるのはファン・ポトーナ。背が低く、実際年齢よりも年下に見られる事が多い可愛らしい顔立ちをした少年だ。

 (逆ハーってめんどくさそうだよね。ハーレム系主人公も居るし、さらっと逆ハー築いている氷の副会長も居るし。なんかこの世界顔面偏差値無駄に高いよね)

 三人の男がアイディーンの事を争い合っているのを横目に見ながらもリアはそんな事を考える。

 リアが思うにこの転生した世界の人々は基本的に前世でいう美男美女が多い。揃いも揃って顔面偏差値が無駄に高いものが多い。

 (っていうか、自分の事なのにそしらぬ顔している氷の副会長っていいキャラしていると思う)

 次にちらりとマルスの隣で黙々と作業をしながらも、自分の事を争っている面々の会話を華麗にスルーしているアイディーンを見る。気づいていないわけではないだろう。こんな大声で自分の事を話されているのに気付かないなんていう鈍感属性をアイディーンは持ち合わせてはいないだろう。

 マルスもマルスで、アイディーンの事を他の生徒会が争い合っている事を知っているだろうに興味がないのか総スルーである。

 (なんていうスルースキル! 面白いけどさ、もうちょっと相手にしてあげないと憐れだよね)

 その無駄に高いスルースキルにリアは感心すると同時に、何処までもスルーされている生徒会三人を憐れに思う。

 そもそも生徒会とは、学園の生徒たちにとってあこがれの存在である。実力があるのに加え、無駄に美形が多い。だというのにそんな三人が揃いも揃ってアピールして相手にされていないのは見て居て面白いものであった。

 「俺が!」「俺と!」「アイディーン先輩は!」

 口々に声を上げる三人の手は止まっている。アイディーンの事で争いあうのに必死で、仕事をする手が止まっていた。

 それをアイディーンが、何処までも冷たい目で見て居る事に三人は気づいていない。言い争いを始めた三人に声をかけたのは、アイディーンではなくマルスであった。

 「仕事をしないなら帰るがよい」

 マルスの冷たい言葉に三人は固まる。それはそうだろう。マルスよりも三人ともレベルが低いのだ。この学園において表面上は生徒内最強(実際はリア、ソラト、ティアルクが居るため違うが)であるのだから彼らがその怒りを現した声に焦るのも無理はない事だ。

 「すまない、マルス」

 「真面目にやる……」

 「すみません」

 三人とは、口々にそれを告げると沈んだ様子で仕事を再開しはじめた。アイディーンは三人に対する興味がほとんどないのか声をかけることはない。生徒会の三人は見て居て愉快な気分になるほどにアイディーンに相手にされていなかった。

 (氷の副会長は本当良い性格してるよね! 私そういう性格している氷の副会長の事結構好きだよ、見てて面白いしね)

 アイディーンの知らぬところで《姿無き英雄》からの個人的な評価が上がっている事をアイディーンはもちろん知らない。

 (しかし、生徒会だと筋肉会長と氷の副会長が別格だね。あとの三人はそこそこ強い程度だし)

 うんうんと頷きながらも、視線はマルスとアイディーンに向けられている。

 (氷の副会長の恋愛模様気になるからまた観察にこよーっと)

 そんなことを思って笑いながらもリアはその場を後にするのであった。




 ぼっち《英雄》は生徒会を観察して遊んでいる。




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