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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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夏の日に、ソラトは将来のことを考える ⑨

「あぁあ、リアちゃんが目の前にいるの最高!!」

「ソラト、煩い。静かにする。人が来ると怒る」

「ごめんね、リアちゃん。リアちゃんが近くにいて会話してくれるだけで幸せすぎて!! 最高の夏休みだよ!!」

「……ソラト、本当に煩い」

 さて、リアとソラトは依頼を受けるために件の魔物が居る街へと向かっていた。

 その場所までリアとソラトがスキルを使えばすぐに向かうことが出来た。というわけで、一緒に向かっているわけだが、ソラトのテンションは異様に高かった。

(リアちゃんと一緒に居れる夏休みとか、最高すぎる。今年は学園の最終年だし、その年にリアちゃんと思い出が作れるのは本当に幸せ。卒業後もしばらくはリアちゃんは表に出て薬師やってそうだから、その間にリアちゃんと沢山遊べたらいいなぁ)

 ソラトの頭の中は、依頼のことよりもリアのことばかりである。

 ユニークスキルをよく使っているリアが、ちゃんと目の前にいるという事実はソラトを興奮させるには十分な事実である。

「ソラト、にこにこしすぎ」

「だって嬉しいし。リアちゃんと一緒に依頼を受けられることも、リアちゃんの親しくしているエルフの女王様に会えたことも!」

「……そう」

「俺はリアちゃんの全部を知りたいんだから!!」

「……ソラト、気持ち悪い」

「気持ち悪いって酷いなぁ! でもリアちゃんの言う言葉なら全部受け入れるよ!」

 リアとソラトは、正反対の雰囲気である。

 リアの前にいるソラトは学園に居る時とも、《炎剣》として過ごしている時ともまた違う。

 おそらく、片方しか知らない人からしてみれば驚くことだろう。

 そんなこんな話しているうちに、目的の街へとたどり着く。

 リアは当然のように姿を消しているので、依頼主などとの会話はソラトが請け負っている。真面目に、冷静沈着な様子で依頼主と対応するソラト。その様子を見ていると先ほどまで「リアちゃんリアちゃん」言いながらはしゃいでいた人と同一人物には見えないだろう。

 顔を隠しているとはいえ、ギルドで活躍しているソラトには《姿無き英雄》ほどではないとはいえファンはそれなりにいる。その街にもソラトに憧れている者が居たらしく、囲まれているがソラトはそっけなくしか返さない。

 そういうところが「かっこいい」と騒がれていたりするが……、横で見ているリアからしてみればそういうソラトは中々不思議な気持ちに毎回なる。

 なんせ、ソラトはリアの前ではいつも元気である。にこにこしていて、騒がしくて、煩い。

 それが仕事をしている時のソラトはちゃんとしているのである。

 ソラトは依頼主との話をつけると、さっそく依頼をこなすために街の外に出る。

「リアちゃん、目的の魔物が居る場所ちゃんと聞いたから行こう!」

 そして誰もいないことを確認するや否やその調子である。

「リアちゃん、無視しないでー。リアちゃんと俺は喋りたい!!」

 リアが返事をせずにいると、そうやって騒ぎ出す。

「……ソラト、煩い。早く、依頼こなす」

「俺はどれだけ時間かかってもいいけどね! その分、リアちゃんと一緒に居られる時間が増えるわけだし」

「嫌。さっさと終わらせる」

 リアはソラトの言葉にばっさりとそういう。

 ソラトにとってリアの言葉は絶対なので、なんだかんだそれに頷く。

 本人としてみればもっとリアと一緒に過ごしたいという気持ちがないわけではないが、それよりもリアの意思の方が最重要なのである。

 リアとソラトは会話を交わしながら、目的地につく。

 そこは湖である。

 エルフの国の所有するその湖は、美味しい魚の取れる観光地でもある。

 さて、マナの言っていた件の魔物はこの湖に住まう魚の魔物である。基本的にはこの国の人々と共存しているその魔物が、繁殖期に伴い暴れている。

 その結果、漁が上手くいかず、人が近づくことが制限されている。

 所謂お金持ちと言われる人々は、エルフの国に観光に来ることもそれなりにある。

 その観光業のお金は、エルフの国にとってもそれなりに重要なものである。

「暴れてる。あれ、少し数減らす」

「ちょっと減らしてもいいなら焼いて食べてもいいと思う! リアちゃんと一緒に食べたい!」

「美味しく出来るなら、食べてもいい」

「絶対に美味しいものにするから、一緒に食べよう」

 絶滅させなければ問題ないと言われているので、その魔物の数を少しだけ減らすことにする。また大暴れしている個体に関しては力づくで大人しくさせる。

 リアとソラトはてきぱきとその依頼をこなしていった。

 ギルドで名を馳せる《姿無き英雄》と《炎剣》の二人が揃っているので、当然それは簡単に行われた。

 数を減らして、大人しくさせる。

 それが終われば、ソラトはせっせとリアに食べさせるためにその場で料理を始める。

 ソラトは基本的に何でもそつなくこなすタイプの人間なので、手際よく料理をすませる。その間リアは何一つ手伝っていない。それでもソラトはリアが一緒に居るだけで嬉しいので楽しそうにしている。

「リアちゃん、ほら、色々作ったから食べてみて」

 何種類もの料理をささっと作ったソラトはリアにそういって差し出す。

「美味しい」

 そしてリアがそういえば、ソラトは嬉しそうに笑うのだった。


 

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