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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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夏の日に、ソラトは将来のことを考える ⑧

「リアちゃん、会いたかった!!」

「ソラト、煩い。少し黙って」

 リアが突然現れたことに対して、ソラトは嬉しそうに声をあげた。リアがソラトをぎろりと睨みつけて、黙るように言う。

 そうすればソラトは大人しく口を閉じた。

「あらあら、リア。幼なじみにそんな風に言ったらだめじゃない。それに少し貴方の話をしていただけよ?」

「女王様、ソラトに余計な話しないでください」

「あら、リアがソラトにあまり話をしていないから私が話してあげたのよ。ソラトはリアのことが大好きみたいだし。それにいきなり『黙って』なんて言われて大人しく言うことを聞いて、にこにこしながらリアを見ていて、ソラトって面白いわね」

 ソラトはマナの目から見ても面白い存在だった。

 突如現れたリアに冷たい態度を向けられても、リアがこの場に存在していることが嬉しくてたまらないといった様子を浮かべているのだから。

「ソラトは昔からこう」

「俺はリアちゃんが目の前にいて俺に向かって話しかけてくれるだけでも最高に幸せだから!!」

「……ソラト、女王様の前でもいつも通りすぎる。女王様だから問題なし。でも他の権力者の前では気をつけた方がいい」

「リアちゃん、俺のことを心配してくれているの? 大丈夫だよ! 俺だってちゃんと相手を見てどういう風な自分を見せるかとか考えているよ! それにしてもリアちゃんが俺のことを心配してくれているの嬉しすぎる!! リアちゃん、大好き!!」

「はぁ……」

 リアの言葉は少し態度を改めて欲しい……という気持ちも込められていたが、ソラトは元気にリアへの思いを口にしている。

 その様子を見ながら、マナはくすくすと笑っている。

「貴方たちは流石幼なじみというだけあって、仲が良いわね。リアにもこういう相手が居たんだなとほほえましい気持ちになるわ」

「仲良くない」

「俺とリアちゃんは仲良しです!」

 マナの言葉にリアとソラトは同時にそんなことを言う。

(リアは誰ともつるまないような、一人を好む性格をしている。表に出ることを拒んで、それで《姿無き英雄》なんて呼ばれていて……。そんなリアにもこういう幼なじみがいることはリカードにとっても喜ばしいことなのでしょうね)

 リアは孤高である。たった一人でも生きていける。誰かと共にいなくても、彼女にとっては自分の強くなりたいという欲を満たせればそれでいいので周りのことはあまり気にしない。

 それが出来るだけの肉体的な強さも、精神的な強さもリア・アルナスという少女は持ち合わせている。

 ただもし仮にリアがギルドマスターに見つかることもなく、ソラトという幼なじみもいなければ――もっとリアは誰とも関わることなく生きていただろう。今よりもずっと誰にも正体を知られることなく、どこかに所属することもなく……、ただただその功績だけが微かに周りに知られているといった程度だったかもしれない。

 今だってリアは誰にも知られることのない偉業を成し遂げていたりする。ただただ暗躍し、その功績を広めることもない。《姿無き英雄》という二つ名が広まっているからこそ、突然魔物が死んでいく光景を《姿無き英雄》の功績だと人々は認識しているが、そういう前提がなければ突如として魔物が息絶えてしまったという事実だけが残るから。

「女王様、何を笑っているんですか……」

「だって凄く愉快だもの。リアの新たな一面を知れた気になって、私はとても楽しいわ」

「……それより、私とソラトへの依頼、なんですか」

 リアは心の底から楽しそうにくすくす笑っているマナに向かって、諦めたようにそう問いかけた。

「魔物の繁殖期が近づいている影響で、魔物達が活発化しているの。それに伴って普段は大人しい魔物も暴れているわ。その魔物への対処が依頼よ」

「……それって私たち以外でも出来るのでは?」

「そうね。私も誰か依頼を受けに来た人に頼む予定だったのよ。そんなときにリカードがソラトとリアをよこすと言ってくれたから二人に頼むのよ。普段は大人しくてこの国の国民たちと共存している魔物だからなるべく痛めつける程度か、少し数を減らすぐらいにしてほしいわ」

「殺しつくすは駄目ってことですか」

「そうね。なるべくそれはしないでほしいわ。リアの戦い方だと、魔物相手への手加減は難しいかしら?」

「あんまり慣れてないけど、頑張ります」

 リアはマナの言葉にそう答えた。

 リア・アルナスの戦い方は、基本的に敵対するものの命を奪いつくすようなものである。魔物相手に手加減をすることはあまりなく、その力をふるって、魔物たちの命を狩っていく。リアが良く受けている依頼は討伐依頼ばかりなので、こういう依頼をされることは珍しい。

「なら、良かったわ。ソラトも問題はないかしら?」

「俺はリアちゃんと一緒に依頼を受けられるならどんな依頼でも問題ないので、大丈夫です!」

「……ソラト、貴方、リアのことを持ちだされて騙されたりしないかしら? なんだか心配になるわ」

「今の所ないです! それにもしそういうことがあるならちゃんと調べてから依頼を受けますから」

 ソラトはリアが目の前にいることが嬉しいのか、マナからの問いかけにも嬉しそうにそう答えるのだった。




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