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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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《かくて炎の雨は降り注ぐ》

 アルフィルド学園においてソラト・マネリは自称《姿無き英雄》の弟子であると知られている。

 誰も姿も声も、性別も知らない世界中で知られる最強の一角。

 落ちこぼれであるソラトが「俺は《姿無き英雄》の弟子だ」と言い放っている姿は滑稽そのものであり、学園の生徒たちからすれば許せない事である。

 まぁ、実際の所ソラトはリアに色々と学んでいる面もあるので、弟子というのは限りなく真実に近い言葉である。ただし、決して学園の生徒たちにとって信じられるような言葉ではないのであった。

 そしてソラト・マネリは学園においていじめを受けている。本人は決して気にしていないけれども、それは確かにいじめである。

 《姿無き英雄》に憧れている者たちは、ソラトのようなものがそのようなものを名乗る事がどうしても許せないのだ。それに加えてソラトの性格は決して良いとは言えない(敢えて人に嫌われるような態度をしているのもあるが)。

 寧ろいじめなんてものを受けるのははじめてであり、面白がっている節もあるのだからそれを知っている者からすれば、いじめっ子たちが憐れにさえ思ってしまうほどだ。

 第一今は正体を隠しているとはいえ、ソラト・マネリは《炎剣》の名を持つギルドランクSS所持者だ。もし《炎剣》である事が公表されれば、現在いじめを行っているいじめっ子たちは、それはもう生きた心地がしなくなるはずだ。

 弱者は強者に逆らう事なかれ。

 それこそが、この世界においての絶対的なもの。逆らい、反感を買い、そうすれば、どうなっても文句が言えない。

 そんな学園では嫌われ者のソラトは、現在霊榠山(リアの友人であるホワイトドラゴンの住処)の麓に一人で来ていた。この霊榠山は、ギルドランクSSランクでも一人で行くのは危険だといえるほどの場所である。まず、命がほしいなら近づくなが人々に言われている言葉だ。

 この山で最も危険な存在が、《ホワイトドラゴン》。リアの友人であるルーンである。

 リアとルーンは付き合いの長い友人であるが、ソラトはルーンに一度もあった事はない。ルーンに会いに行く際はリアはさっさと一人で行ってしまうし、そんなリアにソラトはついていくことがかなわない。

 ギルド最高ランクのリアとSSランクのソラトではそれだけの差がある。

 その差をソラトは埋めたかった。リアに近づきたかった。追いつきたかった。―――おいて行かれたくなかった。

 ソラトが強くなりたいと願う理由なんて、本当にそれだけだった。

 ソラトにとってリアは”特別”だった。本当に、他の全てがどうでもいいといえるほどに特別で、置いて行かれたく何てなくて、幼馴染だからとリアが心を許してくれているのがうれしくて。

 それもあって、ギルドマスターが養子にするといったからとリアと同棲(リアはほとんど姿を現さないが)しているネアラが余計気に食わないらしい。あとリアがソファで足をぶらぶらさせてくつろいでいるのを見るのが好きだったソラトはネアラのせいでそれが見れなくなった事が嫌だった。

 (……リアちゃん、どんどん強くなるからなぁ)

 神経を研ぎ澄ませて、目の前から迫りくる魔物を葬る。この場に生息する魔物は所謂雑魚とは違う。油断しすぎるとソラトだけでは危ない。

 それにソラトはリアと違って《神聖術》は使えない。回復には一々そういう薬を飲む必要がある。

 リアはどんどん強くなる。経験値をため、確実にそのレベルを上げていく。

 強くなったかと思ってもその差は縮まらない。追いつけない自分の事がソラトはどうしようもなく嫌になる。

 《アイテムボックス》から取り出した長剣や短剣でソラトは魔物を追いやっていく。リアと共に居ることも多い事もあって、基本的にソラトとリアの戦い方は似ている。圧倒的スピードで、力で魔物をたたききる。最もリアのように複数の武器を扱えるなんてわけもなく、ソラトは長剣と短剣しかスキルを持っていない。

 ある程度魔物を葬れば、血の匂いにつられてもっと魔物がやってくる。ソラトを囲うように現れた魔物たち。正直この霊榠山のこれだけ大量の魔物に襲い掛かられればソラトだってキツイ。でもキツイのを承知の上でソラトは魔物を大量に呼び寄せた。

 (こんなところで死ぬならば、一生リアちゃんに追いつけない)

 無茶をしなければ、普通に過ごしていれば強者になんていたれない。リアとずっと一緒に居たいならば、《超越者》になる必要がある。種族の限界を超える必要がある。そのためには、無理をしないという選択肢はない。

 何かを得るためには何かを捨てる必要がある。

 安全を捨てて、ソラトは強さを手に入れようとしている。死にかけたっていい。生きてさえいるのならば。死ぬのが怖いなんていってれば強く何てなれやしない。

 《空中歩行》のスキルを行使して、空を歩く。次々と襲い掛かってくる魔物たち。気を抜けばやられる。実際に魔物の攻撃を完璧にさけれているわけでもない。最速のスピードをだし、幾らかの魔物を葬りながら上へ上へと飛び上がる。最も上空に上がりすぎても空を狩り場とする魔物も存在するから危険な事には変わりない。

 空へと上がってこれない魔物を放置し、とりあえず空で襲い掛かってくる魔物たちを交わし、切り裂いていきながらもソラトは意識を集中させる。

 魔物たちの相手をしながらも意識を集中させ、スキルを、それもユニークスキルを行使することは正直大変な事である。それでもユニークスキルを行使するのがこの場の状況を打破する一番の方法であった。

 そして、それは発動される。


 ―――――ユニークスキル《かくて炎の雨は降り注ぐ》発動。



 ソラトは一気に体内のMPが持って行かれる感覚に陥る。それは仕方のないことだ。ユニークスキルは通常のスキルとは勝手が違う。その消費MPは凄まじい。

 発動と同時にソラトよりも下の位置に現れるのは、数えきれないほどの炎で形成された短剣。轟轟と燃えるそれは、灼熱の炎。百はあるだろうか。それだけの数を形成しているのだから、ソラトがどっとMPの消費を感じるのも仕方がないことだ。

 そしてそれは、まるで雨のように魔物たちに向かって降り注いでいく。

 ソラトと同じ高さに居る飛んでいる魔物には向かっていないので、それらは一匹ずつ葬る。それらを終えて下を見下ろせばそこには大量の魔物の屍が存在した。

 ユニークスキルの炎によって、ほとんど跡形もなく燃えつくされた魔物たち。

 正直魔物の素材を集める際には扱いにくいスキルであるが、倒すだけならば効果抜群の『攻撃系統』のユニークスキルである。

 そしてそれが《炎剣》と呼ばれる所以。《火属性魔法》とその剣術が、ソラトの戦い方のもっともな特徴。

 どうにかまだ身体を保っている魔物から素材を適当にはぐと、ソラトはそのままその場を後にするのであった。

 なお、《炎剣》ソラト・マネリのステータスは以下の通りである。





 ソラト・マネリ level.86

 種族 人間。

 年齢 十五歳。

 HP 1600

 MP 988

 STR(筋力値) 657

 VIT(防御値) 500

 INT(知力値) 460

 DEX(器用値) 367

 AGI(俊敏値) 650

 LUC(運値) 625

 CHARM(魅力値) 389

 獲得スキル

 《空中歩行level.55》、《魔力level.77》、《火属性level.89》、《家事level.67》、《無音移動level.60》、《アイド流短剣術level70》、《カナドルア流剣術level.79》、《演技level.39》、《瞬速level.42》、《隠蔽level60》、《回避level59》

 ユニークスキル

 《かくて炎の雨は降り注ぐ》

 獲得称号

 《炎剣》、《幸運者》、《自らを偽る者》、《溺愛者》、《ドラゴンキラー》、《英雄の弟子たる者》、《嫌われ者》、《ギルドランクSSランク》





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