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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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夏休みは鍛錬の日々 ②

 リアは強くなれたと実感する瞬間が好きだ。殺されることは嫌いだけれども、戦うことで自分が強くなったと知れることは好きだ。

 誰かに殺されたくない、とそう思い続けているからずっとリアは訓練ばかりしている。

 つい先日裏組織を見つけてそのトップをギルドマスターに渡したばかりのリアであるが、常にユニークスキルを使って誰にも気づかれずにぶらぶらしているというのもあってそれはもう色んなものを目撃し続けている。

 ――魔物退治の合間に、リアが次に見つけたものは不自然な動きをしている子供である。

 姉弟だろうか、寄り添いあっている二人の子供はなんだか人目につかないように動いている様子だった。

(んー? なんか動きがおかしい感じがするね。周りは孤児っぽい子供って感じで気にしてないけれど、何だか不自然な感じがする)

 リアはほぼ常に人を観察している。人と会話を交わすことは少ないが、その分人のことを良く見ている。

 そういうリアだからこそ、不自然さに気づく。そういう気づく力がリアを《姿無き英雄》として活躍させる下地となっていたと言えるだろう。

 ユニークスキルと、その性格と、気づく力。そのうちどれかが欠けていたらリアは《姿無き英雄》としてこれだけ有名になることはきっとなかっただろう。

 リアはその姉弟の後を追った。

 姉弟は孤児院に入っていく。その孤児院の子供たちはにこにこしている。けれど、その笑顔は不自然な部分が多かった。

(予感がする。何だか、普通の孤児院じゃない気がする)

 リアだって孤児院育ちである。

 ギルドマスターにすぐに引き取られたとはいえ、孤児院というものを知っている。孤児院の中には後ろ暗いことを行っている場所も当然ある。孤児というのは身寄りがない存在で、その存在をどう使おうがどうでもいいと思っている王侯貴族は多数いる。いや、王侯貴族だけじゃなく同じ平民たちだって孤児のことを見下しているものは多い。

 だからこそ、孤児院というのは後ろ暗いことの隠れ蓑にされたり、利用されることも多い。

(私も強くなければそういうものの被害にあっていた可能性もある。とはいえ、本当にそういうことをやっているかどうかの情報を集めてからでないと動きようがないけれど)

 元々リアだって孤児なので、そういうことが孤児院で行われているのは少し気分が悪かったりする。

 リアは誰にも気づかれることなく、孤児院の中へと侵入する。

 一見してその孤児院は普通のように見える。

 むしろ問題視されている孤児院のように汚くはない。孤児院はお金が足りなければ結構汚れていたりする。その日の食事さえまともに取れない場所だったり、そのお金を横領している人がいたり。汚い大人によく狙われている場であると言えるだろう。

(普通に見えるけど、なんか私の勘が普通の場所じゃないって言ってるんだよね)

 リアは自分の直感を信じている。

 《超越者》に至るほどに強者であるリアの直感は侮れるものではないのだ。もしこれで本当にこの孤児院が真っ白だったとしたらそれはそれでよいことで、リアの勘が鈍っていたというそれだけのこと。

 なので、リアはしばらくその孤児院について調べてみることにした。

 《姿無き英雄》と呼ばれているリアは、あらゆる場所に侵入し放題である。リアのような例外的な侵入者を周りは想定していない。だから、リアが侵入したことに誰も気づかない。

 数日見た限りではその孤児院は問題のあるところはあまりない。にこやかに微笑む孤児院の職員たち、表面上は穏やかに過ごしている孤児たち。

 ……食事もまともに取れている。リアが見た限り、暴力なども振るわれていない。

 だけれども、なんだか違和感がある。

 ただそれだけの理由でリアはその孤児院について調べていた。

 孤児院を見ているだけじゃ分からなかったので、街自体のことも調べてみる。

 少なくとも平民たちにとっては表面上良い領主がおさめ、治安もそこまで悪くはなさそうだ。

(でもなんだか違和感がある。普通の場所に見えるけど、違うみたいな)

 リアはそんなことを思いながら、領主の館の中を歩く。

 軽い調子で侵入しているが、ばれたら大事である。最もリアは領主の館どころではなく、王城などにも侵入しまくっているが。

(領主自体はまだ若くて、善良そう。でも周りはどうだろう?)

 あの例の孤児院は領主から援助されている場所である。

 大元の領主は問題なさそうに、少なくともリアの目では見えた。ただその周りまではどうだろうと見て回った結果、一人真っ黒な人を見つけた。

(うん、横領してるね。人のよさそうな笑みを浮かべて、大人しそうに装っているけど中々の金額横領してる)

 こういう真っ暗な人があの孤児院にもかかわっているのかもしれないと、リアはその黒い人を観察することにした。




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