久しぶりに天空島へ ③
リアは念のため、地上から天空島に逃れている人たちの情報も集めていたりする。何かの機会にその情報を使えることがあるかもしれない――というそういう気持ちがあるからである。
どんな情報だろうとも、後々に何かにつかえるかもしれない。リアはそう思っているのだ。
(それにしても天空島にだけ地上の有権者が逃げているわけではないだろうし、他にもこういう場所があるんだろうか。……そういう場所は、もしかしたら世界中にあるのかな? 私がまだ知らない場所、そして他の人だって知らない場所――この天空島のような場所がこの世界には沢山あるのかもしれない)
まだ見ぬ世界が、この世界には沢山広がっている。リアは世界の広さを実感する度に、そんなことを考えている。
(天空島だけではなく、もっと色んな場所に人が住んでいて、その中には少数民族と呼ばれる存在だってきっといる。私たち《超越者》のことは世界の人々が結構把握しているとおもう。けれど、《超越者》のことも知らずに生きている人だってきっと沢山いるだろう。……私も時々訪れた場所で、ただその自分が産まれた世界しかきっと知らないから。――私も《超越者》になれなければ閉じられた小さな世界を生きていたかもしれないけれど)
リアはそういうことを考えると、自分に前世の記憶があって、それでいて強くなれた事実に感謝しかなかった。
そのどちらかが欠けていれば、リアは今のようではいられなかっただろう。
前世の記憶だけあって強くなれなければ、この世界の恐ろしさに絶望しただろう。
逆にただ強くあったとしても、それはそれでどこかで躓いて、すぐに死んでしまったかもしれない。そう考えるとリアは今の状態の自分で良かったとそう思って仕方がない。
(んー、情報は集められた。お義父さんがこういう情報が必要だっていうなら渡してもアリかも。というか、あれかなぁー。前に私がつぶした組織は魔物の繁殖期を長引かせようとしていた。ああいうのが他にもいるのならば、そういう人はこういうところで高見の見物を決めて、地上を混乱に陥らせるのだろうか? となると、色々情報収集してそういう連中がいたらつぶしておいた方がいいか)
この世界には自分が利益を得るために、周りの人がどうなろうともどうでもいいと思っているものは結構いる。リアは自分に害がなければ別にそういうのは自由にすればいいとは思っている。たまたまリアの目についたからそういう者たちは運悪くつぶされるだけである。
リアはそれからしばらく天空島の魔物を倒したり、情報収集を続けた。その後、そろそろ帰らなければならない時間になったので、リアはスキルを行使して家まで戻るのであった。
学園をリアはなるべくさぼりたくないので、天空島への滞在時間はわずかであった。とはいえ、そのわずかな時間でリアは色んな情報を手にしていたのだ。
(とりあえず、天空島に逃げ込んでいる連中は今の所自分の保身を考えているだけで、魔物の繁殖期を延ばそうとかはしてなさそうだった。なら、魔物の繁殖期を延ばそうとしている連中がいようとするのならば、また違う所にいるのかな。今回の魔物の繁殖期が起こって、終わるまでの間に天空島以外のそういう場所を見つけるのは難しいかもだけど……また次の魔物の繁殖期が起こる時期がくるまでは全部見つけ出しておきたいな)
そう言う場所はきっと、隠されているところが多いだろう。
天空島はその存在を他の場所にだって知られているが、まだまだ未知に溢れているこの世界には、きっと天空島のような例外的な場所はきっとある。そしてそこは普通の感覚では決してたどり着けない場所なのかもしれない。
だからこそ、そういう場所を見つけることをリアは人生の目標のうちの一つにする。
(あー、もう本当に、この世界は広い。私が思っているよりも広くて、それでいてまだまだ私を殺せるような強者が溢れている。だからこそ……もっと私は知らなければならないし、もっと強くもならなければならない)
リアはそんな思考をすると、ぞくぞくした気持ちになる。
それは自分の知らないことが沢山あり、自分を殺せるような強者がこの世界にまだ溢れていることに対する恐怖の感情でもある。――だけど、この世界が面白いというそういう興奮を感じた感情でもある。
リア・アルナスという存在は、臆病で怖がりで、だけれどもその状態を楽しんでいる戦闘狂だ。
彼女はきっと、この世界に安心することはないだろう。――そして彼女はきっと、それゆえに益々強くなることだろう。
天空島の上空にある島々を攻略することも、天空島のような他の場所を見つけることも、誰よりも強くなることも――、リアにとっては人生の目標の一つでしかない。
(ひとまず魔物の繁殖期で、私はもっと強くなる)
そして、魔物の繁殖期に向けて強くなることもリアは妥協しない。




