久しぶりに天空島へ ①
リアは休みの日、少しひさしぶりに天空島にまた向かうことにした。
薬を売っている連中をどうにかすることは一息ついたので、天空島攻略も進めることにしたのだ。
とはいえ、天空島を完全に攻略するのには十年単位でかかることだろう。リアはそれを想定した上で少しでも天空島の攻略を少しずつ進めていきたいと思っているのだ。
(天空島は中々難しいからなぁ。それにしても魔物の繁殖期が起こったら天空島はどうなるんだろうか? それとも天空島はそういうのの影響を受けなかったりするのだろうか。ああいう空の上で、魔物に追い詰められたら沢山の人が落下する未来しか見えない)
――天空島は、空の上に浮いている。
その空の上で、魔物が繁殖したら大変なことになるだろう。天空に住まう人たちは、地上よりも数が少ない。
その数が少ない人達が繁殖期の魔物に襲われてしまえば、滅亡してしまうことも当然あるのではないかとリアは思うのである。
その謎を知りたいというのもあり、リアは天空島に向かっている。
ユニークスキルを行使して移動し続けるリア・アルナスのことを誰一人気づく事はない。その天空島まで向かうまでの間も魔物が増加しているのをリアは確認していた。
(んー、やっぱり魔物が多いなぁ)
その最中に魔物が人に襲い掛かっているのも見かけた。
それは当然、リアは助けることにした。目の前で魔物の命が刈り取られる様子を見て、助けられたものは目を見開いていた。それはリアにとって見慣れた反応である。というよりリアが誰かを助けた場合は大抵、そういう対応をされるものである。
ただ《姿無き英雄》の知名度が高まったからこそ、特に騒ぎにはならないけれども。
(ふーん。この大陸自体は繁忙期の影響を受けている。でも天空島の方はどうなんだろう? 天空島以外にもああいう大陸から隔離されている場所があるのならば、そういう場所は魔物の繁殖期が起きたら大変だと思うけど、何かしらそこが潰れないための理由があるんだろうか?)
この世界は不思議で溢れている。その不思議は、リアがどれだけ探ったとしてもまだまだ解明しきれないほどである。
リアは天空島へとスキルを使って登った。
天空島で暮らす人々は相変わらずの日常を送っているようである。
(そこまで魔物の繁殖期の影響を受けていない? 何だか不思議だなぁ。そもそもどうしてこんな風に平然と暮らせるのだろうか)
リアは天空島の人々が平然と暮らしていて、魔物の繁殖期に備えていないのを見て不思議な気持ちになっていた。
気になったのでリアは天空島の中の郷土資料などがおさめられている建物の中に侵入する。その建物の中で、リアは勝手にパラパラと書物を読む。その書物は郷土資料なので、リアは雑に触らないように気を付ける。
(ふーん、魔物の繁殖期の記録もあんまりないな。古い記録だと、神様についての記述はあるけど、魔物の繁殖期の影響が少ない事と、神様は影響がある? こういう天空島全体に影響を与えるってどういうことなんだろう? それだけ恐ろしい存在ってこと? ……こういう恐ろしいのが世の中にいるってのが分かるからこそ、恐ろしいんだよなぁ。今世界は怖いものが多すぎる)
竜の絵が描かれている。
――その古い資料。魔法によって保存されているその資料を見ると、何だかこの天空島の事が少しだけ分かった気がした。しかしあくまで少しだけである。天空島を現在生きている人たちは、その神様に実際に会った事がある人は少ないだろう。何故ならそれはずっとずっと昔の、天空島が出来た頃の話なのだ。誰も実際には知らないのは当然だ。
(――この天空島にとって、魔物の繁殖期はあまり関係ないもの。あくまでこの人が住んでいるエリアはだろうけれども。もっと上のエリアはそうとも限らない。というか、この人が住んでいるエリアに魔物がよってこないようにと、何かされているってことかなぁ。でもその代わり別の場所に魔物がいくとか?)
リアはそんなことを考えながら、天空島についての本をパラパラとめくった。
最後に綺麗に並んでいた本棚に古い本を片づけておく。
その後、リアは天空島の集落をうろうろとした。そのエリアで、リアはこの天空島の集落が平和的なことが分かった。魔物の繁殖期のことを噂で知っていても、現実だと実感していないのかもしれない。
リアはその後、移住区以外のエリアに向かった。
そこに向かえば、思ったよりも魔物はいた。
(ふーん、人が住んでいるエリアだけ、魔物が少なめなのかな? でも思ったよりも魔物はいてもこのエリアは魔物の繁殖期の影響をそこまで受けていないようにも見える。……となると、やっぱり上か? この上のエリアはもっと影響を沢山受けてそう。この辺りに思ったよりも影響が少ないのも、やっぱり神様の影響なのかな? この天空島特有なのか?)
リアは魔物の繁殖期と、天空島の関係を考えて上空を見上げた。――魔物が沢山いるであろうエリアにリアは足を踏み入れることにする。




