放課後の殺戮
キーンコーンカーンコーン。
ベルがなる。授業の終わりを告げるベルが。
それがなると同時にリアは立ち上がる。バイバイとか、さようならとか誰とも挨拶する事なく、教室からすたすたと出ていく。
すぐに《何人もその存在を知りえない》を行使して、家へと《空中歩行》のスキルを使って向かう。誰にも悟られることなくのんびりと歩きながらも、上空から人を観察して遊んでいる。
基本的にリアは様々な事を観察する事を楽しんでいる。
家へと到着すると、自分の部屋へとこっそりと帰り、着替えを済ませる。
ネアラの決意を聞いて鍛えるとは思ったものの、出会ってまだ日が短い、心を許していない相手の前に出たくないらしいリアであった。
そのため、同じ家に住んでいるというのにネアラとリアはほとんど顔を合わせる事はない。
結局の所、リアがネアラを鍛えるかどうかは、ネアラの決意はともかくとしてリアの気まぐれ次第なのであった。
さて、今日は学園の課題も出ていない。
家に居てもやることはない。
ギルドへの依頼も何もない。
そんな状況で、リア・アルナスがやることとなれば一つである。レベルを上げるための魔物狩り。
要するに、大量の魔物の殺戮。
一日で多くの魔物を殺戮して、絶滅したりしないのかとそういう事を危ぶむ事はない。なぜならこの世界はVRMMOの世界と同じだからこそという理由もあるが、魔物が絶滅するなんて例はない。しかも、この世界では時折繁殖期と呼ばれる魔物の大量発生や、強大な魔物の出現による魔物の大量発生が起こる。魔物を狩りすぎて得をする人は居るものの、デメリットはない。しいて言うならば魔物を狩る事によって狩る者が危険な目に合うとか、装備品を消耗するとかそういうことだけだ。
リアは基本的に防具は軽装である。重い防具は防御力を高めるが、その分動きが鈍るから好きではなかった。リアの戦い方はそのスピードと打撃力で、一気に敵を殲滅するスタイルだ。そのため、動きやすい服をリアは好む。
防具らしい防具なんて《姿無き英雄》として動く際に纏っている魔法耐性のついたローブぐらいであった。それ以外は基本的に私服である。
本来こんな軽装で人が魔物の群れの中に飛び込めば致命的だが、リアに限っていえば、それは昔からやっている事であり危険な事では決していなかった。
幼いころから普段着で魔物を倒しに街の外に出て、死にかけながらもレベルを上げた存在―――それが、リア・アルナスという少女。
それ故に、寧ろ軽装な方がリアにとってやりやすく、しっくりくる。
学園のあるフィナスという街から隣の街の間に存在する大きな森林。そこは、魔物の闊歩する危険地帯であり、そこから魔物が街へと出てくる事はほとんどないが、基本的に人は隣の街へと移動するときは護衛を雇って森を突っ切るか、遠回りをして移動する。
その方が危険がないからだ。
今日のリアはその森林―――カザエイラの森に来ていた。
魔物たちは、リアの存在に気づく事はない。
ユニークスキル《何人もその存在を知りえない》を使用しているリアの存在に気づける生物なんて本当に滅多に居ない。
そしてその場に自分の命を狙う敵が居ることも知らないままに、たった一瞬で魔物たちはリアによってその命を散らされていく。
この世界では、命は酷く軽い。
何処までも軽く、本当に呆気なく、生物は死んでいく。
そういう世界。弱者には決してやさしくもない世界。
その場に次々と魔物の死体が落ちていく。バタバタと倒れていく。
そのあたり一帯にいた魔物を、リアは殺戮した。何処までも、圧倒的に。
魔物の死体の上に立ち尽くす一人の少女―――その両手には魔物の血で穢れた二本の長剣がそれぞれ手に持たれているだなんて、普通に考えておかしな光景だ。
魔物の死体というものは、どんなものでも様々な道具の材料になる。ギルドの登録者は、ギルドで自身の狩った魔物を鑑定してもらい、買い取ってもらうことが出来る。
単体の魔物を倒したとかならこの場で解体してギルドまで持っていくのだが、これだけ大量にいると面倒なので一旦全部、《アイテムボックス》の中へと放り込む。ちなみにリアの《アイテムボックス》は最高峰の技術の使われた高値のものであるため、魔物の死体と非常食を突っ込むエリアをわけたりとかそういう高性能な部分もある。
(少し物足りないけど、そろそろ帰るか)
数えきれないほどの魔物を殺戮しておきながら物足りないなどと耳を疑うようなことを考えているリアは、そのまま、その場から姿を消すのであった。
魔物の死体はギルドの《姿無き英雄係》とか言われている鑑定班に回され、ついでに解体までされることになる。ちなみにこの鑑定班は、リアが散歩でもするような感覚で大量の魔物を一気に狩ってくるためにギルドマスターが設けた班である。
そして、それが終わるとリアはネアラに気づかれないようにそろーっと自室へと戻り、眠りにつくのだった。




