三年生に上がる。
その学園では、生徒たちの楽しそうな声が響いている。
――今日は、春休みが終わって、はじめての学園である。すなわち、リア・アルナスが三学年に上がった日である。
リアは短い春休みを充実して過ごしていた。好き勝手に動き回り、楽しく春休みを過ごした。
《姿無き英雄》――リアの春休みに起こした出来事は噂になっている。学園でもリアの話はされている。とはいえ、それでもやはりその正体がリアだとは誰一人気づくことはない。
(春休みは良かったなぁ。中々楽しかったし。もっと色々と天空島と精霊対策が出来たらよかったのだけど。まぁ、むずかしいものは仕方ないか。少しずつでもこなしていくしかない)
リアはマイペースである。
ちなみに三年生に上がったリアだが、なんとソラトと同じクラスだった。……クラス表を見た時に「あ」とリアは思ったものである。もちろん、表情も声もかえなかったが。ちなみに王女様が学園に入学するというのもあり、そのことで騒がしい。
(王女様の入学と、ハーレム主人公が生徒会長になったり、あとは魔物の繁殖期。うん、色々ありそうだなあ。ハーレム主人公もトラブルをどんどん舞い込む感じだしさ。どうなるんだか。卒業までの一年、私が目立たなければいいんだけど)
面倒ごとが起こるならば起こればいいとリアは思っている。だけれど当然のように自分が目立つことがないように一年過ごせればいいとそう考えている。あくまで自分のやりたいことばかり考えているリアである。
無言で喋ることもせずに、ただリアは本を読みながらそんなことを思考している。
……ちなみにそんなリアの事をソラトは周りに知られないようにたまに見ている。内心はニヤニヤしているが、そういう表情は外には出さない。ちなみにソラトがたまにリアを見ていることはリアは気づいている。
(……はぁ。他には気づかれてないけど、チラチラ見るなっていっとかないと。ハーレム主人公もイルバネスもクラスは違うけど、ソラトと一緒っていうのは注意しとかないと)
リアはソラトに注意をすることにする。
ソラトはリアの事が大好きで仕方がないので、リアが嫌がることは徹底的にしないが、リアと同じクラスな事が嬉しくて暴走してしまう可能性は当然ある。話しかけてくることなどはないだろうけれど。
(それにしてももう三年目。学園生活は案外はやかったな。たった三年だからっていうのもあるだろうけど)
学園生活というのは、人によっては重要なものである。今後将来を決めるための所謂青春時代といわれる期間。その期間に友人を作ったり、将来のために行動をしたりと皆大忙しである。学生時代の繋がりというのは、大きな財産である。
……そんな中で誰ともかかわることもなく、ただ過ごしているリアは周りの向上心豊かな生徒からしてみれば怠惰に見えるのかもしれない。実際はリアは立派にギルドで働いているし、その少ない人脈はすさまじいものがあるが、そんなことを周りは知る術もないのだから。
それはソラトも同様の事が言える。生徒たちはソラトのことを馬鹿にしていたり、嫌悪していたりするものが多いのだから。
(……最後の一年。今までバレなかったとはいえ、何が起こるかは分からない。魔物の繁殖期もあるし、少しはバタバタすることは確定。ならその中で気を抜かずに如何に私が目立たないか。そしてハーレム主人公とイルバネスをとことん目立たせる! あいつらを主人公枠として目立たせてサブで、王女様とか、ハーレム主人公のハーレムを目立たせれば私が目立つことなどありえないだろうし)
とりあえずリアはティアルクとカトラスをひたすら目立たせることを決めていた。本人達の意見など聞く気もない。ソラトを目立たせることも考えたが、ソラトを目立たせれば自分にも飛び火がきそうなので、それはやめることにする。
始業式や担任からの話を聞き終えたリアは、担任に話しかけ、もう就職先が決まったことを報告した。教師はリアの言葉に驚いた様子だった。普段からあまり動く事も話すこともせず、学園卒業後の進路を積極的に探したりしなさそうだったリアが真っ先にその報告をしてきたからそれは当然であろう。
リアはコミュ障であるし、言葉を喋ることはしないが、行動力がないわけではない。寧ろ意志は強すぎて、自分がやりたくないことは絶対にやらないタイプである。
とはいえ、リアの事を表面上しか知らない人達からしてみればリアがそれだけの行動力があることは驚きなのである。
「じゃあ、帰ります」
「あ、ああ、分かった」
報告をするだけして去っていくリアを見ながら教師は驚いたままだったが、そんな教師の様子をリアは気にすることもなかった。
喋る事が苦手なので、リアは報告を終えた事にほっとしながら、そのままユニークスキルを使って、魔物退治へと向かうのであった。




