薬師の元でのんびり過ごす
リアは薬師の元へとやってきていた。
というのも、ようやく弟子として認めてもらえたからである。弟子になることを認められているとはいえ、それで卒業までの間、此処を訪れないというのならば薬師はリアを弟子にすることをやめるかもしれない。
そう考えているので、リアは進んで薬師の元へとやってきた。
リアは無駄なことは嫌いな人間だが、薬師の元へ来るのは無駄な事とは思っていない。
(それに師匠はあんまり聞いてこないから心地が良いのもあるか)
リアはコミュ障なため、沢山喋る人は得意ではない。騒がしい人も好きではない。特に会話が出来る人というのは、余計なことを聞いてきたり、煩わしいものである。そもそも人がいる場所をリアが苦手なのもそういう人が世の中には多いからといえるかもしれない。
(師匠みたいな人ばかりだったっら世の中、もっと生きやすいだろうに。そうじゃないから嫌なんだよなぁ)
リアはそう考えながら無言でその場にいる。
薬師も《調合》スキルで調合はしているがずっとしているわけではない。自分のノルマと決めているものを終えれば薬師ものんびりとしていたりする。常にずっとそればかりやっているわけではないのである。
(んー、師匠の生活サイクルはこういう感じか。うんうん、これはこれで自由に動けそうでいい感じだけど。師匠は特定の所にだけ薬を卸している感じだね。それでいてその実力を認められている感じか。師匠は《調合》のスキルだけレベルが高いから、師匠自体のレベルはそこそこか。一つのことだけ認められていてちゃんと生きていけるっていうのもありだよね)
リアはそんなことを考えながらのんびりと過ごしていた。
「そういえばリアは……卒業後、何処に住まうつもりだ。私の家に住むでも構わないが」
幸いにもというか、薬師の職場兼住まいであるこの建物には部屋があいている。その空き部屋にリアを住まわせることは可能なのだ。だからこそ、薬師はリアにそう告げた。
薬師は一度弟子にすると決めたからこそ、リアの面倒をきちんと見るつもりである。そういう所は、薬師が良い人なのだというのがうかがえるだろう。
薬師がそういう性格だということにリアは小さく心の中で微笑む。
「それは考えさせてください……。何処に住まうか、色々考えます」
家賃的な問題であるのならば、薬師の家に住んだ方が良い。一般人として装うのならば、そちらの方がいい。
だけどリアは自分が動きやすいように生きていきたいため。ギルドマスター経由で家を借りるのもいいかもしれないと考えている。
(んー。師匠は悪い人ではないし。疑問に思っても私の事を聞いてくる気は全くない。ならばここで断っても問題はないはず。とりあえず卒業の時にどうするか近いうちに決めておかないと。どういう風にするのが一番いいんだろうね。悩むなー。まあ、師匠だったら私が住み込みで働いていて好き勝手に出て行っても気にしないだろうけれど)
リアは人と生活するのがそもそも苦手である。自分のプライベートスペースに誰かが入ってくるのは嫌で、今住んでいる部屋の自室にもネアラたちを入れたこともにない。基本的に寝ている時しか部屋にはいないが、その時も《結界》を厳重に張り、ユニークスキルを使う徹底ぶりである。もちろん、扉や窓も塞いでいる。寝ている間という無防備な時間はリアにとって一番警戒しなければならない時だ。
流石に薬師の家の一角を借りてそれだけ厳重にするのは不自然である。とはいえ、この薬師ならばリアが入らないようにといえば、部屋に無断で入ることもないだろうが。
「そうかい。なら、それでいいだろう」
「決まったら、言います」
「そうかい。そういえば、卒業までは後一年あるんだったか?」
「……ん。そうです」
「こんなにはやく就職先が決まっているのも珍しいことだろう」
「……ん、そうです」
リアは相変わらず喋るのが苦手だからか、それだけしか口にしない。
薬師も短い付き合いでもリアが喋るのが苦手だと分かっているからか、それでも気にしないようだ。
(というか学園の教師にも私が何処に就職するかは軽く報告がいるんだよなー。私の通う学園って前世で言う進学校みたいなものだから、卒業後の進路は重要だからなぁ。ハーレム主人公の進路を気にしている人も多いし。……うん、いや、本当私が言う話ではないけれどギルドとかで働いている所謂もう社会人になっている人が学園に通うのって本当に特例なんだよなぁ)
リアはそんなことを考えていた。今の所、リア、ソラト、ティアルクぐらいだろうが、彼らはもう立派な社会人である。ティアルクはともかくとして、リアとソラトに関しては積極的に依頼を受けているためある意味二重生活である。
(……教師と話すのも面倒だけどさっさと報告しとこうかなぁ)
自分から教師に話しかけるのも苦手だが、薬師と話しながら学園でのことを考えるのだった。
のんびりとその日は、時間が過ぎて行った。
薬師とリアはその間、時々しか会話をすることはなかった。




