二年目の闘技大会 ⑥
ティアルク・ルミアネスは、カトラスに勝利した後も無事に勝利をおさめ、個人戦で優勝を果たしていた。
(……俺はアルナスに聞いているからこそ、ルミアネスが勝利したことが当然だと思える。レベルが七十を超えているのならば、この学園で優勝するのも当然だろう。でも俺が知らなかったら、ルミアネスのことを不思議に思っただろうな)
カトラスは、ティアルクの優勝を目の当たりにした後、そのまま学園を後にする。あとは団体戦が行われるだけである。カトラスは、誰かと特別親しくしているわけではなく、団体戦には参加しない。カトラスの闘技大会は終わった。
(……良い手ごたえだった。負けたのは、まぁ、レベル差を考えれば当然だけど、レベル差があったとしてもやりようによっては戦い方があるというのが分かった)
そんなことを考えながら外を歩くカトラス。――闘技大会を終えたばかりだというのに、カトラスは街の外へと向かっていた。というのも、カトラスはもっと強くなりたかった。疲れがないわけではなかったが、カトラスはもっと――強くなりたかった。追いつきたかったのだ。カトラスのあこがれの存在に。
ちなみに、その様子をちゃっかりリアは観察していたが、当然カトラスは気づかない。リアは闘技大会後に、こうしてそのまま鍛錬をすることは良いことだとそんな思考をしながら、その場を後にしていた。
――リアもソラトも、カトラスも、闘技大会という学園の一大イベントにも関わらず、その後にすぐ鍛錬に向かっていた。
闘技大会というのは、学園の生徒達にとってみれば、重要なものである。それでも強くなるためには、日々の鍛錬が重要である。どんな時でも何があっても――ただ鍛錬を積むことが大切だ。カトラスはリアの様子を見て、そう思ったからこそこうして鍛錬に向かっていた。
その後、二日間は団体戦が行われた。リアとソラトは、興味本位でそれを見ていたが、カトラスは自分が参加しない団体戦に興味がなかったのか、学園にさえきていなかった。
(イルバネスは鍛錬か。まぁ、どっちでもいいよね。団体戦を見てもタメになるかもだし、鍛錬はすればするほど強くなれるし。ちょっと無茶をして死んだらそれは結局それまでだったってだけだろうしね)
リアはユニークスキルをしながら団体戦を見ていた。
ただこうして見学しながらも何かしらのスキルを使い続け、リアは経験値を積んでいる。何をするにしても鍛錬をしながらだからこそ、今のリアがいると言えるだろう。
(ソラトも団体戦見ているな。ソラトは多分私がいるからっていうのもあるかもだけど。それにしても個人戦の時と違って、変な組織とかちょっかい出してこなくて平和でいい)
そんなことを思いながらリアはのんびりと団体戦を観察していた。ちなみに想像していた通り、団体戦もティアルク・ルミアネスが優勝していた。リアはやはりティアルクは目立つ気しかないように思えた。
(凄い周りも騒がしいな。まぁ、仕方ないね。個人戦も団体戦も二年連続優勝なんて真似をしていたら目立つよ。初の三年連続優勝という伝説みたいになりそうだよね。よくそんなに目立とうとするなぁ。しかも何だか囲まれて嬉しそうだし。卒業後の進路の話も本格的にこれから出てくるだろうし、どうするんだろうね。まぁ、それはどうでもいいか)
リアは無言のまま、そんな思考をする。そうしていれば、急に司会の者が騒がしくなった。
『では、今回の特別イベントに移る!! 今回は《炎槍のロス》様と、個人戦の優勝者であるティアルク・ルミアネスの戦いが始まるぞ!! 二年連続優勝という快挙を達成したティアルク・ルミアネスがどれだけ健闘するのか!!』
……今回は、《炎槍》とティアルクの戦いを行うのだという。
それを聞いてリアは、どうなるかななどと思考していた。
(……レベル的には《炎槍》が圧倒的に強い。それに経験値も。だから《炎槍》が負けるはずがない。それはハーレム主人公自体も分かっているだろう。でもハーレム主人公が、《炎槍》相手に健闘するならそれはそれでおかしい。レベル三十台を偽っていて、《炎槍》とやりあえたらおかしいし。んー、というか、《炎槍》もハーレム主人公を見て違和感バリバリだと思うしな)
でもリアはティアルクは、そのまま戦いそうだなと思っていた。
(そもそもそれだけの頭があるのならば、こんな風に目立つ真似はしないしね。やっぱりあんまり深く考えていないんだろうなぁ。ゲンさんとルミさんは何で注意しないんだろ?)
リアがそう考えている中で、目の前で《炎槍》とティアルクの戦いが繰り広げられていた。《炎槍》のやり捌きは凄まじいレベルなのだが、それを何度もいなすティアルク。リアの目から見てそれはレベル三十台の動きではない。《炎槍》の目から見てもレベルを偽っていることはバレバレだろう。
その特別イベントに関しては、《炎槍》が勝利した。その後、ティアルクは《炎槍》に話しかけられていたらしい。そのことも含めて、その後、学園内は騒がしくなるのだった。
――そうしてリアの二度目の闘技大会は終わった。




