二年目の闘技大会 ④
闘技大会二日目。
本日は、特に裏組織などはこの闘技大会にちょっかいを出そうとしていないらしい。
最も初日にリアがせっせと組織の連中をつぶして回ったことが噂になり、手を出したらやばいことになると噂になっていたからというのもあるようだが。
(……うん。良い天気)
リアはのんびりとユニークスキルを使って、宙に浮いている。
周りに気を配りながら、リアはじっとそこに佇んでいる。
――自分に気づいているものがいないか、気を配る。今の所、そういう者はいなさそうなので、リアはほっと一息を吐く。
眼下では、ティアルク・ルミアネスが勝利をおさめていた。
相変わらず、レベルが圧倒的に高いにも関わらず大人げない。リアはどこかでわざと負けるとか、自分のレベルを正式に公表すればいいのにとさえ思っていた。
(んー……結局ハーレム主人公はどうなりたいんだろう。どんな風に生きていきたいんだろうか。この学園でこれだけ目立てば、色んな所からスカウトがくるかもしれないけれど、そもそももうハーレム主人公はギルドに所属している。ルノさんとゲンさんの弟子として活動していて、今更ギルド以外で働くわけにもいかないだろうし……。普通の学園生活を送りたいといいながら普通ではないし。そもそも私、ああいう普通の学園生活を送りたいって願望よくわかんないんだよね。私は薬師になりたいからこうして学園に通っているけど、学園に通わずにもっとはやく違和感なく薬師になれる道があるならそっち選ぶけど)
この学園で一生懸命頑張って、そして将来のために力を尽くす――この学園の生徒達は基本的にそうである。何かしらの目標があって、そのために、それを掴むために行動しているのだ。
リアの場合は薬師になりたいからである。……ソラトはリアの傍にいるためという不純な動機だが、それでもまぁ、わざわざ目立って実力を示したりはしない。
今日も、ティアルク・ルミアネスは、目立っている。有望な若者を見るために来たものたちは、ティアルクに目を付けているものもいる。とはいえ、実力があるものは、ティアルク・ルミアネスがおかしいことは気づいている。
(馬鹿正直にハーレム主人公をスカウトする人は寧ろ実力がそこまでないよね。多分スカウトしない人はハーレム主人公が誰か知っているか、いぶかしんでいる。うん、明らかにおかしいもんね)
下手な目立ち方をしているので、ティアルクは色んな意味で目立っている。
学園内でも気づいている存在もいるだろう。ただ関わるとややこしいかもしれないというので指摘していないだけな気がする。
ティアルクのあとはカトラスの番だった。カトラスはティアルクのハーレムの一人のレクリア・ミントスアと戦っていた。
(というか、ミントスアも女王様の家系だし、精霊と親しくなるかもしれない。今は、そういうのなさそうだけど……。うん、絶対にそれまでに精霊からも悟られないようにならないと)
ちなみにレベル的にいえばカトラスもレクリアも大体二人とも同じくらいである。
(レベル的には良い勝負。ミントスアは魔法は結構得意な方なんだよね、確か。でも女王様の家系なら、お嬢様だろうし、ハーレム主人公と一緒に過ごして色々経験していたとしてもあまり経験値は少ないはず。イルバネスも頑張れば勝てるかな)
そういう風に考えながらじっとリアはその様子を見ている。
――リアに見られているとは正確には分かっていないが、カトラスはリアがどこかで見ているだろうというのが分かっていた。
だからこそ、ふがいない真似を見せるわけにはいかない。カトラスは、レクリア・ミントスアの魔法を避けている。
レクリアの魔法は、細かい。その細かい魔法の操作がレクリアの強さであると言える。
そしてレクリアは、自分が接近戦に向いていないことは分かっている。だからこそ、カトラスに近づけさせないように行動している。自分の長所と短所をきちんと把握しているのは良い点だと言えるだろう。
(……俺を近づけさせないようにしている。そしてミントスアは決して接近戦が出来ないわけではない。でもとりあえず近づく必要がある)
近づくためにどうしたらいいか。
――レクリアのMPはカトラスよりも高い。それはレクリアがエルフであり、魔法特化な成長をしているからである。
近づくためにどうしたらいいかと考えて、カトラスは動いた。
――レクリアは対人戦が得意なわけではない。どちらかといえば魔物退治の方が得意だろう。まだ経験値が足りない。それはカトラスにも言えるべきことかもしれないが、――カトラスはリア・アルナスという英雄に近づくために何だってしたいと思った。
だからこそ、レクリアが想像しないような行動を行うことにした。
まずはその腰の剣を投げつけた。武器を投げつけるなどと、レクリアは思っていなかったようで驚いた顔をする。カトラスはその隙を見逃さない。一気にレクリアに近づく。レクリアは魔法を行使しようとするが、間に合わない。
カトラスは、そのままレクリアに近づき、レクリアを気絶させた。




