二年目の闘技大会 ②
「リア」
「……お義父さん、こんにちは」
「おう。相変わらず一回戦負けか」
「ん」
学園の闘技大会には、ギルドマスターである義理の父親が来ていた。
毎年来ているわけではないらしいが、時々こうしてきているらしい。ギルドマスターがこうして闘技大会を見に来ているというのもあり、学園の生徒たちのやる気は最高潮である。
リアにとってみれば面白い事が大好きでちょっと厄介な義理の父親は、ギルドマスターとしてギルドを牽引してきた存在で、一般人からは憧れられている。
そしてリアがユニークスキルを使っていようと、ギルドマスターは当然見つける。
「まぁ、それはいい。聞いていたしな」
「ん。じゃあ、何の用?」
ギルドマスターはちゃんと周りに人がいない場所で話しかけてきた。去年のようにリアをサプライズイベントに駆り出すことはないことは知っているが、なら何故話しかけてきたのかとリアは訝し気な表情を浮かべている。
リアのそういう態度を見ても、ギルドマスターは楽しそうに笑っている。
リアがどういう風にしていたとしても、ギルドマスターはリアのことを義理の娘として親しみを込めて接する。リアは考えてもいないことだが、こうしてギルドマスターが此処にきたのは、義理の娘であり中々姿を現わさないリアの事を見に来るためというのもある。
一回戦で負けたリアを見て、内心で笑ってしまったギルドマスターであった。多分、周りに人がいなければ綺麗に負けたリアに爆笑していたことだろう。
「この学園は目立っているだろう。特にルノとゲンの弟子が派手に色々やっているから、色んな所から注目を浴びている」
「あー……」
リアも観察しているからその心当たりぐらいある。
そのため、ギルドマスターの言葉にそりゃそうだと思った。
まだ正体を隠して大人しく学園生活を送っているリアとソラトはともかくとして、ティアルク・ルミアネスは隠す気はあるだろうが、隠せていない。寧ろ中途半端だからこそ、逆に訝しい。
ティアルクを知る卒業生の中でもティアルクのことを噂するものもいるだろうし、正直言って不思議で、目立つ学生である。
「うん。目立つ。で、それが?」
「そしてあいつの周りには目立つ連中がそろっているだろう。あれだけ目立ったら色んなものに目を付けられる。あの弟子のことをどういう存在かは分かっていないようだが、手を出そうとしている組織がいるな」
「えー。闘技大会中に?」
「そうだな。リアは一回戦で負けて退屈しているだろう。ついでにつぶしてきたらどうだ? まぁ、リアがやらなくても俺がやるが。でも俺はリアが遊んでいる方が楽しいからな」
「んー。じゃあ、ちょっと遊んでくる。闘技大会で私以外の存在が目立つのは全然いいけれど、そういう裏組織的なのが目立つのは嫌だし。なんか余計な目立ち方は困るから」
リアは自分以外の生徒が目立つことはいいと思っている。とはいえ、そういう組織に襲撃されて変な風に学園が目立つのを望んでいるわけではない。それでその学園の生徒だというだけでリアが注目されるのも嫌である。
もう起こってしまっているのならば止めようがないが、まだ起こっていないのならばどうにでも出来る。
それに折角なので鍛えたカトラス・イルバネスがどれだけ闘技大会で結果を出すかも楽しみにしているので、リアは闘技大会が中断されるのも望んでいない。
――そういうわけでリアは闘技大会中にも関わらず、そういう組織をつぶすことにした。
闘技大会という学園の行事中に組織をつぶすなんてそう言う真似をしようとしているだけでリアは異常である。そういう存在はリア以外にはいないと言えるだろう。
(……よーし、やるか)
リアは気合を入れて不審な連中を学園の周りで探すことにした。ちなみにちょっと大きめな組織なのか、騎士に紛れ込まれている内通者も発見したのでさっさと捕縛した。ギルドマスターの元へさしだし、やったのがギルドマスターであるという風に告知させて行動していた。
《姿無き英雄》がまた闘技大会に来ているなどと噂されてもややこしい。そして《姿無き英雄》が学園の関係者だと思われてもややこしいからである。ギルドマスターもそれで問題ないので、自分の手の者が行ったと、リアがやったと思われないようにしてくれるらしい。
(それにしてもそこそこいるなー。それにしてもこれがハーレム主人公たち一味を狙ってるって、本人達が全く気付いていないのがまず笑える。冬休みもハーレム一味の実家にいったり、色々目立つ事やらかしていたみたいだしね。それにしてもハーレム主人公はまだ誰も選んでないけれど、女性陣の親たちはハーレム主人公と娘が結婚すると思っている親もいるっぽいし。そのあたりもどうなるかなって感じ)
そんなことを思いながらリアはこそこそと行動をしているのだった。
年明けしばらくまで更新止まります。
4日か5日ぐらいからまた更新しますのでお待ちください




