二年目の闘技大会 ①
『皆、盛り上がっているか!? 去年は《姿無き英雄》様と《炎槍》様の熱い戦いが見れたな!! 今年も特別ゲストが来ている!! 俺たちの力を見せつけようではないか!!』
闘技大会の初日。
四日間も続けられる闘技大会が今日から始まる。
リアは、司会者の声が熱すぎて正直嫌な気持ちになった。リアは、こういう熱い人間が苦手である。というのも、リアが常にこういう熱さを見せつけない人間であるからだろう。
(私の個人戦。一回戦で負けよう)
相変わらず闘技大会で本気で戦う気などないリアは、目立ちたくないので一回戦で負けることにしていた。なんともまぁ、この学園の生徒であるというのに驚くほどにやる気がない。
リアにとってみれば闘技大会というのは、そこまで関心を持てるイベントではなかった。
そういうわけでリアはのんびりといつも通り過ごしている。
(とりあえずイルバネスが何処まで行くかは見ておくけど)
この学園の生徒たちは、闘技大会というものに力を尽くし、此処で良い結果を出せばよい未来が待っていると信じ切っている。
しかしリアからしてみれば、そうだとは一概に言えない。そもそも、幾ら人との戦いが得意であろうとも、圧倒的に強い相手にはその強さは無意味である。
……この闘技大会のために視察にきている者達は、誰一人ユニークスキルを行使するリアに気づく事はない。リアはやろうと思えば、この場を血の海にかえることが可能である。相手が何人いようとも、圧倒的な強者からしてみれば虫けらと同然の存在でしかない。
リアよりも強い相手が本気で人を減らそうと思えばどうにでも出来るだろう。
リアでさえ出来ることなのだから、リアよりも高見の存在はどうにでも出来る。
本当に強くなりたいのならば、闘技大会や学園に通うというよりも、もっと実践を積んだ方がはやい。強者しかいない場所で如何に生き残れるか。そういうことをやった方がはやいのだ。
リアはこの学園以外の学園も見かけたことはあるが、結局の所、そういう学園だって甘っちょろいとリアは思う。
(……結局、この学園生活の授業で強くなったと満足をしているような者は、《超越者》になんて至れない。ハーレム主人公もレベルは高いけれど、このまま《超越者》にはきっと至らない。アレが目指しているのは平和な暮らしで、がむしゃらに強くなることではない。まだハーレム主人公よりもレベルが低いネアラやイルバネスの方がそういう風になる可能性は高い)
リアが十七歳で《超越者》に至っているので、簡単に《超越者》に至れるように見えるかもしれない。でもそんなことはないのだ。あくまでリアがそういう存在であるというだけで、普通の人々は《超越者》になど至れない。
そんなことを考えているリアは即急にわざと負けて、ユニークスキルを行使してのんびり観戦をしている。
ちなみに闘技大会において優勝すると思われているのは当然、ティアルク・ルミアネスである。去年、圧倒的な力によって個人戦も団体戦も優勝した天才と思われている。
今年も優勝する気満々のようだ。
リアはやっぱり自分のレベルが周りよりも圧倒的に高いことを知っておりながら、優勝を掻っ攫おうとするティアルク・ルミアネスは大人げないと思っている。
(ソラトも一回戦で綺麗に負けてるな……。ソラトは別に本気出してもいいのに。私と同じがいいって相変わらず。ソラトを慕っているあの後輩は一生懸命だね。でもレベルも低いし、一回戦は勝てても二回戦は無理か)
リアはそんなことを考えていた。
リアは強さを求めるからこそ、人の強さを敏感に感じ取る。
――この中で、ティアルク・ルミアネスに勝てる強さを持つ者は勝つことを目指していない。優勝するのはティアルク・ルミアネスだろう。
(ルノさんとゲンさんは優勝報告聞いてどう思っているんだろ? 最近ちゃんと話していないからなぁ。会議の時は即急にずらかっているし。まぁ、二人とも毎回会議にいるわけでもないけどさ。進んで話しかけようって気もないし。ただ二人はティアルク・ルミアネスの普通の学園生活を行いたいっていう気持ちを尊重したいらしいからなぁ。そもそも今の生活が普通とも言えないけれど)
何をもって普通と定義するかは人それぞれ基準が違うだろうが、少なくともリアの目から見てティアルク・ルミアネスの生活は普通ではない。
それを普通と称して、楽しんでいるティアルク・ルミアネスは、強い精神力を持っていると言えるのかもしれない。
ちなみにリアがそんなことを考えている間にもカトラスはしっかり勝利していた。
(ちゃんと順当に一回戦は勝利と。ハーレム主人公とどれだけやれるかだよね。いい感じに目立てばいいんだけど)
リアはそんなことを考えながら、仮面の下で楽しそうである。




