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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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リアは空に浮かぶ ③

 リアはずっと空の上にいられるわけではない。

 それはリアが人だからである。幾らMPが高かろうとも、通常は地面の上で過ごしているリアが延々と空の上にいるのは難しい。

 種族としての限界というのは確かにあるものである。

 リアは、そのことが何だか悔しい気持ちになっていた。誰よりも強く、どこでも生きられるようになりたいが、それでも種族としての限界はあることを。

(でも……人をやめたいわけでもないしなぁ。仕方がないけど、少しずつどこでも生きられるようにしないと。最悪、誰にも会えないようにこういう誰もいない場所で過ごすのはありだし)

 あの不思議な魔物を追いかけた翌日もリアは空の上にいた。

 何故かといえば、不思議な生態の魔物について興味があったからである。普通に考えれば食事をすることなく空で飛び続けることなどありえない。それをいかにして行えているのかというのは疑問だった。

 リアも食事をとらずにそうやって過ごすことが出来るようになれば楽しいかもしれないとも思ったからというのもある。

 リアは、何よりも、誰よりも強くなることを望んでいる。

 そのためにその生物は観察対象に相応しかった。

 あのあまり大きくないその魔物をじっとリアは見つめる。やはりその魔物は食事をとることなく飛び続けている。羽ばたくことは当たり前なのだろう。宙にいるのが当たり前で休むことを必要としていないのだろう。

(んー、でもなにかしら栄養分がないとこんな風に飛び続けることは出来ないよね? となると空気中にあるものから何かを手に入れている?)

 リアはそう思いながら至近距離に近づいてみる。そしたら、何か吸い取られるような感覚があった。

(魔力か!! 空気中の魔力を体内に入れることによって、この魔物は生活することを可能にしている。うん、そう考えるとしっくりくるね。それにしてもどちらかというと生物というより植物的なものに近いとかなのかな? 植物だと光合成で成長するわけだし。空気中のものを吸うだけで生活が可能なんて万能だし、どこでも生きていける感があるけれど……ああ、でも流石に火山とかに放り込んだら死ぬかな? 色々試してみたいけどこの魔物の個体数が少ないなら下手に実験しにくいしな。何処か、この魔物の巣とか見つけられたらいいのだけど。……もうすぐ魔物の繁殖期がくるというならこの魔物に関しても繁殖をしているはず。昨日の数時間では確認できなかったからなぁ。そのあたりを確認できればきっといいよね)

 リアは繁殖期がもうすぐ起こるからこそ、そういうのを確認できそうだと喜んでいた。繁殖期でこれだけ喜ぶのもリアぐらいだろう。

 そしてそれから数日間、放課後にずっとその魔物をおっていた。……同じ学園の生徒たちが闘技大会で如何に良い結果を残すかというそれだけを考えているというのに――リアはなんとも自由である。

 闘技大会は本気を出す気もなく、どうでもいい行事であるというのがリアの感想だ。まぁ、最近鍛えているカトラス・イルバネスが何処まで行くかというのは興味があるものの、それだけである。

(ん? 下降する?)

 リアはその件の魔物を観察していると、下降していくことに気づいた。

 急に下降していくなんて驚きである。リアがその魔物についていけば、その魔物は、途中で姿が見えなくなった。存在しないわけではないだろう。リアのユニークスキルのように一時的に姿を隠していると考えるべきか、それとも地上に近づけば近づくほど、その姿が見えなくなるのか――そのあたりはリアには分からないが、なんとも面白い生態である。

 そのままリアは、なんとなく気配を感じるその魔物をおう。リアのユニークスキルと違い、気配を少しは感じるのだ。とはいえ、気にしていればである。その魔物は決して強いわけではなく、気配を感じても皆気にしない程度である。

 そしてその魔物が向かったのは森の中である。

 その森の中の高い木の上に鳥型の魔物の巣がある。その魔物はリアも時々見かけたことがある弱い魔物である。虫のような小さな生物を食べる、決して狂暴ではない魔物だ。

 《召喚術》のスキルで小型のものは、人に従っているものもいる。しばらくすればその魔物との契約はなくなるらしい。何とも不思議な魔物である。ちなみに《召喚術》は人と魔物の互いの意思が合致してはじめて召喚獣に出来るものなので、どちらかが解除しようと思えば解除できるものである。やろうと思えば絶対服従で従えることも出来るらしいが、そうすれば後から大変なのである。

 その鳥型の魔物のことを、例の魔物が食べるかと思ったがそういうことはなかった。

(仲よくしてる? あの鳥型の魔物には、おりてきた魔物の姿が感知できてるっぽい? というか、よく見たら似てる?)

 などとリアが考えていれば、巣の中にいた一匹が光りだした。

 そして次の瞬間には気配があるが、姿は見えなくなった。上から降りてきた魔物と一緒である。

 リアは驚いた。そして姿が見えなくなった鳥型の魔物と、上から降りてきた魔物はその後仲良く上空に向かった。

 そしてリアがその不思議な魔物を発見したエリアに近づくにつれ、二匹の姿が見えるようになった。

 姿が見えなくなるまでは、鳥型のありふれた魔物だった一匹も、あの不思議な魔物と同じ姿になっていた。

(へぇー。面白い。何かしらの変化というか、成長でこんな上空で暮らす生物になるってこと? 卵を産んで、それから成長するまではこうだけどってこと? あの鳥型の魔物も魔物だから寿命は結構長いだろうし、いつ、どのタイミングで成長してこういう謎生物になるかは分からないけれど、それまでの間だったら召喚獣に出来るってことかな? それにしても地面に下りるまでと上に上がるまでで姿が消えるのは強敵から身を隠すためかな? あの鳥型の魔物の状態なら人が狩りやすいけれど、成長したら狩りにくそう。まぁ、空で基本暮らしているなら人の敵ではないだろうけど)

 リアはそんなことを考えながら新たな発見に、仮面の下で楽しそうに微笑んだ。




 それからリアは、闘技大会までの間、空でもっと新しい発見がないかと見て回ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、かなりの大発見なのでは? もちろん、リアがそんなことを報告公表するわけないのだけど。 魔力を吸って生きる、人間でも出来ないかな? なんかスキルで出来ないかなぁ
[良い点] 何よりもリアの生態が一番面白い。
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