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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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ハーレム主人公の男友達は、世界を知っていく。

 アキラ・サラガンは、必死に剣を振るっている。

 ――死を前にして、アキラは自分を取り戻した。自分の大切な場所――宗教団体がつぶれ、居場所を無くしたアキラは、学園生活を送りながら”自分”というものをてにしていく。

 今まで宗教団体の言う事だけを聞いてきた。ただ命令されるがままに生きてきた。――それでも今、アキラ・サラガンは、自分の意志で自分が思うままに生きてこなければいけないのだ。

 その事実に戸惑いを感じる。

 しかしそういう戸惑いを感じていたとしても、確かにアキラはいきている。

 アキラは、ただ宗教団体に育てられ、その思考に染まっていた。それ以外どうでもいいと思っていた。だけれども……その宗教団体は、他でもないリアによってつぶされた。

 自分の拠り所としていた場所がなくなってしまったこと――それはアキラにとって大きな衝撃だった。

(どうして、俺はまだ生きているのか。どうして、俺の大切にしていた場所があんな様になったのだろうか。……誰が、ああいうことをしたのだろうか。……怒りよりもそういう疑問を感じている段階で、俺はもう昔の俺ではない)

 ……アキラは、宗教団体をつぶされたことにより、大きな衝撃を受けた。それは自分の価値観を全て壊してしまうものだった。

 《姿無き英雄》はそれだけのことを成したのだ。

 ――最もアキラは、それがリアによってもたらされたことなどとは思っていない。それを成したのが誰なのかは知らないのだ。

 けれどもあれだけの場所をつぶした存在は、まぎれもない強者であるということはアキラにだってわかっている。

 ――不思議と怒りがないのは、それだけ衝撃で、価値観が壊されるものだった。

(……誰が、あそこをつぶしたのか知りたい。復讐は考えていない。あれから、心ここにあらずの状況の中で、沢山のことを考えていた。そしてティアルクと共に過ごして……色んな価値観を知った。それを踏まえればあそこは普通じゃなかった)

 拠り所としていた宗教団体がつぶれたからこそ、アキラはその価値観が普通ではないということが分かった。理解することが出来た。

 それに加えて、ティアルクが色んな人たちとかかわりがあったからというのも大きいだろう。それだけの影響力があり、アキラは世界を知っていった。

 今まで見ようとしなかったことを、見るようになった。

 人というのは、変わらないとおもっていても、影響を受けて変化するものである。

 アキラは、変化し、世界を見るようになった。今までの常識がなくなり、今は――アキラはどうしていいか分からない。

 自分のすべてだった場所がなくなった。

 そして周りを見るようになり、自分がどのように生きて行けばいいのか分からない。

 自分の意志で何かを考えるなんてほぼなかった。ただ命令されるがままに生きてきた。

(……俺は何をしたいんだろうか。あそこで生きていくことしか考えていなかった。あそこで役に立つことしか考えていなかった。……でも俺と同年代の者たちは、ちゃんと将来を見据えている)

 自分が何になりたいのか、どうありたいのか――アキラには分からない。そういう将来のことなど考えたことがなかったから。

 だからアキラは、ただ分からないと思う。

 剣を振るっているのは、他に何をするべきか分からなかったからだ。自分がやりたいこと、自分が好きなこと。そういうのさえもアキラにはない。

 ただ宗教団体のためにアキラは学園に入学した。そしてティアルクに近づいて、軽薄に微笑んでいたのは、ただそうあるべきだと演じていたから。

 課外実習の後、アキラはいきたいと望んだ。学園でもどのように過ごしていけばいいのかもわからなかった。――それでも今まで通り演じている。それ以外にどうすればいいか分からなかったから。

(学園で過ごしている俺は……そう演じているだけ。そのはずだけど……、ティアルクたちといるのは嫌じゃない。いつか、演じ続けていれば俺にとってそれが当たり前になるのだろうか)

 思考する。

 自分の事が分からなくて、どんな風に生きて行けばいいかも、どう学園で過ごしていくかも……分からない。

 ただ分からないからこそ、アキラは思考しながら剣を振るっていた。

(俺がどう生きていくかはまだ分からない。どうやって行けばいいかもわからない。この世界をもっと見て、俺がやりたいことを探す。……ティアルクも過去がどうであれ、見つけて行けばいいとそう言ってくれたから)

 ティアルク・ルミアネスの言葉は、アキラによく響いているようだ。

 アキラはティアルクのすべてを知っているわけではない。だが、ティアルクの側で世界を知って、そしてどうしていこうか考えているのだ。



 この後、アキラがどのように生きていくかは本人次第だろう。

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