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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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闘技大会に向けて ②

 闘技大会ではカトラスは、団体戦には参加しない。一緒に団体戦に参加する仲間もいないし、個人戦だけの予定である。

 そのため、リアが主に面倒を見るのは一対一の戦い方である。

「一対一。それで戦い方、考える。イルバネスは、一対一ってどのくらい戦ったことある?」

「……いや、一対一はあまりないな。どちらかというと人相手というよりも魔物相手がおおかったし」

「ん、私もそう。でもまぁ、やりようは幾らでもある。自分より、レベルが高い相手でも、下克上は可能」

 リアはカトラスにそう告げる。

 ちなみにこの場は、霊榠山の中腹付近である。リアがカトラスを鍛えることを知って、ネアラとソラトもこの場に来ている。ソラトに関しては誘ってもないのに聞きつけてやってきた。

 ソラトはカトラスがリアと話しているのが気に食わないのか、カトラスの事を睨むように見ている。

 カトラスはその視線を気づいているが、下手に話しかけると面倒そうなのと放っておいても問題なさそうなので放置していた。

「戦いの中で必ず一対一であるなんてことはない。魔物相手だと、魔物たちはどんどん来る。一対一の戦いなんてない。――イルバネス、勝てはしないかもしれない。でもあのハーレム……ルミアネスは、あのレベルの割には経験が少ない。なら、経験を積めば、良い勝負は出来る。驚かせることはきっと出来る」

「……アルナスは、ルミアネスのことを脳内で何と呼んでいるんだ? ハーレムって聞こえてきたが」

「ハーレム主人公」

「あー……まぁ、確かに女子生徒に囲まれてるからな。しかも目立つ」

「ん。あの周りの人たち、色んな事情持っている。よくもまぁ、あれだけ集まったと思う。だから、ハーレム主人公。で、あのルミアネスには予想外のことをどんどんするのがいい。正々堂々というのが闘技大会。でも戦いの中では……生きるか死ぬかでは、正々堂々なんてどうでもいい。勝つために、力を尽くす」

 ――リアにとって、正直言って正々堂々の一対一の戦闘なんてどうでもいい。そんなもの弱肉強食のこの世界で、そこまで意味がない。魔物との戦闘の中では、多対一というのが多い。人との戦争でも、一対一の場というのはそんなにない。

 ただ強ければ、勝てればいい。勝ったものが正義だ。

 リアはカトラスに身体で分からせることにする。ひたすらに模擬戦をする。もちろん、ユニークスキルを行使しながら攻撃してくるリアにカトラスが敵うはずがない。

(……ただただ、強い。そして俺がどれだけアルナスよりもレベルが低くても、アルナスは俺を侮ることはしない。そういう侮らない強さがあるからこそ、アルナスは強い。俺にはアルナスが何処にいるかもわからない。アルナスは、いつでも俺のことを殺すことが出来る。――だけど、だからと怯えてはいけない。怯む気持ちはあってもいいかもしれないけれど、それでもあきらめてはいけない)

 カトラスは、リアという存在を恐ろしいという気持ちはある。自分と同じ年でありながらも、驚くほどに、これだけの強さを手に入れた存在は、畏怖を感じても仕方がない。

 それでも、カトラスの気持ちは高揚している。

(俺は……《姿無き英雄》に、アルナスに失望されたくない。折角、俺のことを鍛えてくれるようになったんだから。だからこそ、アルナスが鍛えてもいいと思える俺になりたい。まぁ、全然相手にはならないけれど)

 リアとの一対一で、勝てるわけはないが、それでもカトラスは諦めているわけではない。

 ――ただ、むずかしくても、何か一矢を報いることを望んでいる。

 その目が、諦めていないのを見て、ユニークスキルを使うリアも笑っている。リアは、楽しそうにしながら、カトラスとひたすら模擬戦を行った。あえてティアルクをまねた戦い方をしてみたり――、とりあえずリアはカトラスのことを闘技大会で目立たせようとやる気満々であった。

「あー、リアちゃんが楽しそうなのは嬉しいけれど、イルバネスに構ってるの、すげぇ、嫌!!」

「ソラ兄さ……、睨みすぎだよ? リア姉は恋なんてしないし、イルバネスさんのことも気まぐれで構っているだけだっては知っているでしょ」

「知ってる。でも俺はリアちゃんのよさを、皆が知るのがいやだ。だってあいつ明らかにリアちゃんのこと尊敬してんじゃん!! リアちゃんはそりゃあ素敵だよ。世界で一番だけど!!」

 ソラトの言葉に、ネアラは呆れたような表情である。

 ちなみに今回はというより、今のリアは闘技大会でカトラスを目立たせようと考えているので、ネアラとソラトは時々しか訓練をつけられていない。

 

 そんなわけでソラトとネアラは、それぞれその場で魔物退治や、模擬戦を行うのだった。

 リアはソラトが騒いでいることは分かっていたが、気まぐれに模擬戦をするとき以外は視線さえも向けていなかった。




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