ルーンの元で遊んで、会話を交わして
リアはルーンの元へと向かっていた。
そしていつも通り、ルーンにユニークスキルを行使して襲い掛かり、いつものように負けていた。リアは少しずつレベルをあげていて、強くなろうとしている――それにも関わらず、まだルーンという存在に追いつけない。
少しずつその差は縮まってきている……といえるかもしれないが、それでもまだ足りないのだ。
「あー、もうルーンは相変わらず強い!!」
「それはそうだろう。俺がリアに負けることはまだないだろう」
「やだなー。あ、でもルーンも流石に精霊には負けたりもする?」
「精霊? ああ、そうだな。精霊は俺も相手にしたくない。急に精霊の話をしてどうした?」
「この前さ、エルフの女王様と一緒に精霊に会いにいったんだよね。滅茶苦茶強くてさ。全然相手に出来なかった。でも私はそれが悔しいから、どうにかしたいなーって思って。それで精霊の見える子を買ったんだよね」
「相変わらずリアは強くなるためなら何でもするな」
ルーンは自分の傍に座り込んでいるリアを見下ろしながら楽しそうな様子である。
ルーンは、この小さな友人の事を面白いと思っている。自分に幾らでも戦いを挑んできて、そして日に日に強くなっていく。
本能のままに行動するリアは、人よりも魔物の思考に近いようにルーンには見える。そういう人間だからこそ、ルーンはリアと仲良くできるのかもしれない。
「精霊にさえも私が気づかれなくなったら、ルーンも私に気づけなくなる?」
「そうだな……。精霊にも気づけないぐらいにリアが自分の事を隠せるようになるなら、俺だってユニークスキルを使っているリアには気づけないかもしれない」
ルーンの言葉を聞いて、リアの目が輝く。
そこには、大きな期待が見られた。
(精霊に気づかれないようになれば、ルーンにも気づかれなくなる。そうなれたなら……、きっと楽しい。もっともっと誰にも気づかれなくなる。私よりもレベルの高い存在にも、気づかれずに過ごせるかもしれない。お義父さんにも、そしてエルフの女王様にも――そうなれたらいい。そうなれたらもっと楽しい)
リアは誰にも気づかれずに、色んな事を成したい。
――人に気づかれることは嫌いだから、本当に誰にも悟られることなく、過ごしていきたい。
(ああ、でも私が精霊にも気づかれないほどになったとしても結局、そういう私に気づく存在はいるかもしれない。でもそれでも……私って存在に気づかない人が増えるならばそれはそれでいい)
この世に絶対というものはあり得ない。だからこそリアが精霊に悟られないようにしたとしても、誰にも気づかれないということはありえないだろう。
「じゃあ、私頑張る。精霊にもルーンにも気づかれないようになるから。覚悟してね」
「ああ。楽しみにしている。ところで天空島にはいったのか?」
「うん。行ったよ。ただ私にはまだルーンがいっていた、人が住んでいる天空島よりもずっと上の場所はまだ厳しかった。ルーンはいった事ないんだよね?」
「そうか。まぁ、俺の同族も厳しいといっていたぐらいだからな。リアでも厳しいか。俺はまだいったことはない。話を聞いていただけだ」
「そう。もう少し色々準備をしないと厳しい。でもルーンの同族が神って言う存在、私は会いたい。そしてもっと強くなりたい。……正直すぐに向かうのは難しそうだから、色々準備してから。精霊とは上手く戦えないし、天空島も攻略出来ないし、なんか色々上手くいかないけど……!! 私は絶対にいつか精霊にも負けないし、天空島も攻略する!!」
そういう本音をリアがルーンに語ることのは、リアにとってルーンという存在がかけがえのない友人だからだろう。そういう本音を言っても問題ないとされる友人。
精霊にも負けないように、そして天空島のことも攻略出来るように――そうなるとリアはルーンに対して、宣言する。
「なら、リアがそのくらい強くなるのを俺も楽しみにしておく。そのころになれば、リアは俺に勝てるようになっているかもな」
「……それも当然、私の目標だよ!! ルーン、そのためにもまた殺し合う(遊ぶ)よ!! ルーンに絶対に勝つから」
「ああ」
ルーンは当たり前みたいにリアが自分より強くなるとでもいうように口にする。それはルーンがリアのことを、リアが小さなころからずっと知っていて、リアが強くなることをどこまでも諦めないことを知っているからである。
リアはまたルーンを殺し合い(遊び)に誘う。
そしてリアはまた、ルーンに襲い掛かるのだ。
ルーンはそれを当たり前みたいにリアと戦う。
そしてリアが飽きるまでの間、ルーンとリアの戦いは続けられるのであった。




