はじめての天空島 3
リアは、一日人が住んでいるエリアの天空島を見て回った。
――その中で不思議な生態を持つ魔物もちらほら見られて、そのあたりはリアにとって楽しかった。途中で観光客相手に殺人を犯そうとしていたものがいたのでそれを捕らえたり――といったこともリアはさらっとしていた。
天空島に《姿無き英雄》が来ているのでは? と少しだけ噂になっているが、リアはその噂に素知らぬふりをした。
さて――今日はリアにとっての本題である、人が住んでいる天空島よりももっと上のエリアへ向かうことにする。
スキルを行使して、上へ上へと昇っていく。
――息の苦しさが、身体に痛みが走る。それはリアが地上を生きている生き物だからだろう。魔力を体に纏わせ、なんとかリアは上へと昇れている。だけれども、上へ上へと向かえば向かうほど、身体の不調が増えていく。
(うん、結構きつい。こんなにキツイとは思わなかった。でも仕方がないか……)
リアはそんなことを思いながら上へとのぼっていれば、横から魔力を感じる。
リアは慌てて、飛び込んできた魔物を避ける。
(うわ、小さな竜みたいなやつ。んー、まぁ、空はドラゴンの領域みたいなものだから、仕方ないと言えば仕方がないか)
リアはそんなことを考えながら、隣から突っ込んできた小さな竜のような魔物――地上の竜とは姿かたちが少し違うので、竜とは断言はできない――その魔物とリアは対峙する。
此処が空の上で、動きにくさがあるからもあるだろうが、リアは少しだけ苦戦した。
(……というか、私ユニークスキル使っているのに迷わず突っ込んできたのよね。この魔物……あれか。人が住んでいるより上の領域は、私がユニークスキル使っていても分かるってことなのか? んー、嫌なものだよね。精霊といい、私になんとなくでも気づく存在がいるっていうのは)
リアは嫌そうな顔をしながら、魔法を使い、剣を振るい、その魔物の息の根を止めた。そしてその魔物の死骸は、そのまま落ちていく。
この空の上で解体することは出来なかったのだ。
(こういう死骸は、天空島に落ちていくのかな。それにしても今回は初めての戦闘で余裕がなかったけど、これからそのまま《アイテムボックス》に放り込めるようにした方がいいか)
今回は、はじめての事だったのでリアもそこまで気が回らなかった。でも素材を無駄にしないために、もっとリアはそう決意する。
(……それにしてもちょっとのぼっただけでこういう魔物がいるのならば、警戒はもっとしないと。まだまだ島にもたどり着いていないのに。それにしてもどれだけ上まで島が続いているんだろうか。もっともっと――本当に天に届くほど上に島が続いているのならば、本当にそこは神様が住んでいる場所とでも言える気もする)
――リアはそう考えながらもっと上へと昇る。その最中に息苦しさももっとひどくなる。しかしそれでもリアは上に行きたいので、なんとか、一つの島までたどり着いた。その島も近づかないとみることが出来なかった。――此処よりも上も今のリアには見えないが近づけば見えることだろうとリアは確信する。
(それにしてもこの島も大きい。それに魔物気配がする。だけど、わたしにも分かりにくい。私のようなスキルを持つ魔物か?)
リアはそんなことを考えながら嫌な予感を感じていた。
リアが気づかないうちに魔物が接近していた。そしてリアは、その魔物の攻撃を受ける。
(痛い。もう面倒だなぁ。モヤがかかったような魔物だし、物理攻撃きかなさそう? ちょっとぐらいなら私が攻撃を受けてもどうにでもなるけれど――何度も受けるとヤバい。あと数が結構多そう。魔法でやる)
リアはそう考えて、火属性魔法を行使して、魔物を一掃する。
それはリアにとってなんとかなるだけの脅威だった。ユニークスキルを使っているリアをなんとなく気づける存在が少なからず此処にはいる。
その事実はリアにとって怯えるには十分なことである。
(……さて、どうしようかな。とりあえずもっと上を目指していけるところまで行くか)
もっと時間があるのならばリアもゆっくりと見て回るだろう。だけれども、今回は時間がないのでリアはもっと上を目指すことにする。
リアは気合を入れて、上へと昇っていく。
――リアは、今の所、脅威はあるものの問題はなさそうだと考えて上を目指していた。
だけどその途中で、リアは自分の甘さを知る。
何か強烈な威圧感を感じたかと思えば、風の魔法がリアを襲い掛かる。突風に襲い掛かられたリアは、そのまま、落下する。
(うおっ!!)
そして落下する中でリアはなんとか空中で体勢を整える。
(うわー、ヤバいやばい、威圧感と一緒にユニークスキルも《空中歩行》も、身体に纏わせていた魔力も解かれた)
慌てて体勢を整えたリアはまたスキルを身にまとう。
(……天空島よりも上はちょっと対策しないと厳しいか。死にはしないけど、それでも難しい。なら、もっとどうにかしないと)
リアはそう考えて、一旦天空島の集落に戻ることにした。




