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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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ソラト・マネリの学園生活

 ソラト・マネリはギルドランクSSランク所持者であり、その年にしてはおどろくほどレベルが高い。

 《炎剣》――――それが、彼の呼び名である。

 ただし、学園の中でその威厳は欠片もない。リアと同じアルフィルド魔法学園に通うソラトは入学して間もないながらに周りから距離を置かれる存在であった。

 落ちこぼれの、嫌われ者として。

 1年C組の教室の一番後ろの窓際。そんな位置に席のある彼に近づこうとする生徒は見るからにいない。窓の外を見上げ、何かを思い出したようにニヤニヤしているソラトは見るからに不審者であり、学園ではあえて人の癪に障るような話し方をしているソラトは不気味な男として遠巻きにされていた。

 そんな彼が、ニヤニヤしながら何を考えているかといえば――、

 (リアちゃんは昨日も可愛かったなぁ)

 などというリアの事であった。

 ソラト・マネリとリア・アルナスは長い付き合いである。リアがギルドマスターに発見され、養子にされてすぐに二人はであった。

 幼いころからリアは変わらない。転生者だからということもあり、幼いころからリアは自分を持っていた。揺るぐことのない、”死にたくない”という信念のもと常に動き続けていた。

 昔から圧倒的だった。だというのにそのくせ臆病で、おびえていた。

 矛盾しているようで、芯が通っている―――それが、リア・アルナスという少女。

 ブレない、自分というものを持っていて、そんなリアだからこそ、ソラトはリアが大好きだった。

 「またあいつニヤニヤしている……」

 「気持ち悪い」

 なんて思われていても、ソラトは一切それを気にしない。学園での自分への評価などどうでもいいと、そう思ってさえいる。

 時折聞こえてくる陰口のような言葉たち。”気持ち悪い”というのが、ソラト・マネリに対するクラスメイトの思い。

 それに加えて強さこそすべてのこの学園において、”強者”であることを見せない。一切感じさせないようにしている。ソラトは他人の目から見て、明らかな”弱者”。

 弱者であり、気持ち悪い事もあり、評価はリアよりも低いといえるだろう。

 敢えてそのようにふるまうのは、この学園内で深いつながりを作る必要性も何もソラトが感じていないからともいえるだろう。

 ただ学園に通うのは、リアと一緒がいいからであって、そこに目標も何もない。

 学園内でリアとかかわれなかったとしても、それでも、リアと同じ学園を卒業したという事実がほしいだけである。あと学園内で隠れてうろうろしているリアを一番近くで見ていたいとか、そういう理由だ。

 ソラトがニヤニヤしている間に、気づけば一限目は終わっていた。一限目の授業は魔物学。実際に自分も敵対したことがあるような魔物の説明だったため、特に真面目に聞かなくてもその情報は頭に入っていたため、形だけ聞いているように見せていた。

 次の時間は移動教室だった。

 実践の勉強のために、訓練所へと向かう。

 訓練所に向かう途中は、ちょうどリアの教室の前を通る。

 目の前を通りながらちらりとリアの姿が見れないかなとソラトは教室内へと視線を向ける。

 そこには、いつものように無表情で読書をしているリアが居た。

 話しかけるな、というオーラを醸し出して、黙々と本に目を通している。その読んでいるものはただの小説に見える。が、実際はもっと違うものだろうとソラトは確信していた。

 学生が読んでいておかしいような本を読む時、リアは《隠蔽》スキルを使ってそれとわからないようにして読んでいる。

 いつも自分を磨くことに対して努力を惜しまないリアは、自身がやりたい事をどこまでも極め上げようとする。《姿無き英雄》と呼ばれ、強者の一人であるというのに満足はしていない。限界など感じていない。もっと、もっと強くなろうとひたすら自分を磨いている。

 (……そんなリアちゃんにおいて行かれたくないから俺は強くなりたい)

 今も、読書をして沢山の知識をつけているであろうリアを見ながらソラトはそれを思う。

 そんな決意があるからこそ、ソラトも何もせずに学園に滞在しているわけではない。今だって、ソラトは誰にも悟られずにスキルを行使している。

 スキルを行使するのには、MPを使う。そしてスキルは使えば経験値がたまり、それが一定溜まると自身のレベルとスキルのレベルが上がる。

 故に誰にも悟られないように《空中歩行》のスキルを使い、周りから見て床に足がついているように見えながらも実は空気を踏んで歩いているという器用な事をやっているソラトの行いは無駄ではない。というか、こうやって誰にも悟られないようにスキルを行使するのはリアが真っ先に考えた事である。ソラトはそれを真似しているだけである。

 リアはどんどん、どんどん先へと進んでいく。

 貪欲なまでに強くなろうとしているリアには、そうでもしないとついていけない。いや、むしろ現時点でおいて行かれているのだから傍に居たいとそう願うのならば自分を必死に磨くしかない。

 そもそもこの年でギルドランクSSを所持しているだけでもほめられたものなのだが、ソラトの基準はリアであるために今の自分では満足する事が出来ないらしい。

 退屈だ、と思いながらもリアと同じ学園を卒業するぞと意気込んでその後も授業を受ける。

 実技の授業では、自身が最も得意とする《火属性》の魔法を敢えて不得意に見せ、悟られないように器用に剣術も手を抜く。

 それが出来るという事はソラトが自身の力を制御できているという証であった。

 教師にも、生徒にも、一切違和感を感じさせないように落ちこぼれを演じ切る。

 それていて話しかけられたとしても相手が不愉快になるような言動を繰り返し、向こうから離れていくようにする。

 手を抜くことも、人に嫌われるような言動をする事も、ソラトは苦には思っていなかった。ただ一つ、不満があるとすれば、

 (リアちゃんがすぐそこにいるのに)

 リアに話しかけられないこと、リアとのつながりを隠し通さなければならないこと―――など、まぁ要するにリア・アルナス不足みたいなそんな症状になっていた。

 どうにか、リアとのつながりを感じられるようにできないか。

 そう思ったソラトは一つの事を思いつき、実行することにした。

 どうせ、道化になるのならばとことんなろうじゃないかと。

 「―――俺は、《姿無き英雄》の弟子なんだぜ? すごいだろ?」

 そしてやった事が、自称《姿無き英雄》の弟子を演じる事であった。



 そしてますます学園の中で”嘘を吐く気持ちの悪い弱者”としてさげすまれ、「何してんの!」とリアに怒られることになるのだが、本人はとくに気にせずに学園生活を続けるのであった。









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