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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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王家の山へ、エルフの女王と ⑤

 リアはその地面に書かれた文字に、ああ、こういう形なら意思疎通できるのかと驚いた。それにしてもよろしくと書いたのは普段からそういう口調なのか、それとも文字に書くからそんな風に書いたのかそれはリアには分からなかった。

 リアは少し驚いた顔をしながら、どういえばいいか分からない。

(……私は喋るのが苦手だから、精霊に何を言えばいいんだろう。精霊にどんなふうに話しかけるのがいいのか。私には難しい)

 思わず無言になるリア。

「あらあら、リア、話さないの?」

「話すの苦手です。何言えばいいか分かりません。姿も見えませんし」

 リアがそう言えば、面白いとでもいう風に、土が揺れる。精霊はリアに何かするということはない。多分、リアのことを嫌がっているわけではないのだろう。そのことはリアにも分かる。

 精霊というのは、人のことなんてどうでもいいと思っている。そういう存在である。だからこそ、本当に気に食わない人には容赦ないことだろう。

 だからこそ、リアを本当に気に食わなかったら、リアはそのことにほっとする。

 リアはなんというか、話すのが苦手だし、精霊のことを怯えている。精霊と共に過ごしたくないと思っている。それでもいつも通りなのである。

「……精霊、私、話せないです。精霊、面白いこときっと何もないです。寧ろ、何か聞きたいことがあるなら、そっちから聞いてもらえます?」

 リアは何だかんだ不遜である。それは《超越者》であるからといえるだろう。

 地面に文字が描かれる。言葉が聞こえないから、話しているという実感は中々わかないものである。リアも目の前に何かがいることは分かるが、それでも本当に目の前にいるのか疑いたい気持ちになる。

(ああ、でもそれでも此処にいる。ああ、怖いな。恐ろしいな。それでも目の前に、自分が知らない存在がいて、私がその存在を知ることが出来れば――私は対抗手段も知れる。怖いけど、それでも私は目の前の存在にだって、勝利したいから)

 強くなりたい。誰よりも強く。――そして誰よりも生き延びていきたい。

 その願望がリアをリアたらしめている。

 ――あなたはふしぎ。

「そうですか? 私は私のやりたいようにしているだけです」

 ――わたしたちと、にている。だれにも知られず過ごしている。それはふしぎ。なにか使っているのは分かるけど。

「……そうですね。精霊、ちなみに精霊を感じ取る方法は、ありますか」

 ――精霊精霊と呼ばずに、わたしの名は、ヤシェ。そう呼ぶといい。精霊をあなたはかんじられない。なら、難しい。

「……そうですよね。でも何か、手段はありますか?」

 ――あなたが、精霊に気に入られれば、精霊は姿をあらわすでしょう。

 地面に文字を書く精霊のヤシェと、言葉で喋るリア。

 その様子を見て、マナはクスクスと笑う。

「リア、貴方質問されて答えるっていいながら質問しているわね」

「……そうですね。精霊に気に入られる、私には無理そうです。……それに自分の力で見れなくて、精霊の気まぐれでしかないのは、ちょっと嫌です」

 リアは、我儘だ。自分はよくても、精霊は嫌だとそんな我儘なことを考えている。

「リアは本当に面白い子ね。貴方がそういうのだから精霊は貴方を気にしているのよ。リアが嫌がれば嫌がるほど、多分精霊は面白がるわよ」

「……そうですか」

 ――そう。あなたがそうだから、おもしろい。

「……えぇええ?」

 リアは嫌そうな顔をする。

 精霊というのは、リアにとって恐ろしい存在で、相手から気に入られているからと喜べるはずがない。

 リアは正直自分よりも強いエルフの女王と、長く生きている精霊が目の前にいるというのが心地悪い。

 自分を今は殺さないとしても、いつ敵対するか分からないのは恐ろしいものである。とはいえ、強者の言葉に逆らえないのが、この世界である。リアも二人を敵に回したいわけではないのであった。

 ならば、情報を集めた方がいい。

 リアはそう考えた。

「……精霊、感じるようになりたいです。……私と、戦いませんか」

 ――たたかい?

「はい。ヤシェさんと、戦えば……私は、精霊のこと、なんとなくつかめるかもしれません」

 リアは、そう言い切った。恐ろしい存在なのに、戦いたいなどと口にする。それはリアだからこその言葉である。

 ――いいよ。

 そしてその言葉が刻まれる。

 リアは、口元を緩ませる。やっぱり何だかんだ、戦うことが、リア・アルナスは好きなのだ。幾ら怖がりでも、強くなることに、そのために戦う事が、ただ好きなのだ。

(……精霊と戦う。精霊は私が精霊を知ることは出来ないと言ったけれど、戦っていれば、感覚がなれてくるはず。精霊から気に入られなきゃいけないなんてそれは嫌だ。私は……自分の力で、自分でどうにかしたい)

 リアは我儘だから、だからこそこうしてそんなことを思っている。

 マナはリアと精霊のヤシェの言葉に、楽しそうに笑っている。

「じゃあ、私は審判をするわね」

 ――こうして、リアと精霊の戦いが始まる。


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― 新着の感想 ―
[一言] お、どうなるかな?
[一言] 龍のルーンに守護鳥のイランに精霊のヤシェ リアは修行相手に困らないな
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