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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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リアは、薬師へ接触する。 1

 その日、リア・アルナスは珍しく緊張していた。

(決めた薬師のおばあさんに接触しようと思ったけれど、何だか案外ドキドキするな。ギルドの依頼をこなすとか、魔物を退治するとかよりも緊張する)

 というのもリアは、薬師に接触しようとしていた。

 ――学園卒業後に、薬師の下で働きたいと思っているリアははやめの就職活動を進めているのだ。そもそもコミュ障であるリアは正直言って、自分が即急に学園卒業後の就職先がすぐに決まるとは思っていない。

 そのためもう二年の半ばという今の時期からきっちりなんとかしていこうと思っているのだ。

(脅して言うことを聞かせるとかだと楽だけど、そういうのをするのはなしの方向で。そもそも私は普通に薬師として働くつもりだし。そういうのをしたら私が《姿無き英雄》だと悟られてしまうしさ。こういうまどろっこしいのは好きじゃないけれど、仕方ないよね)

 リアは深く考えずに即急に解決させる手段の方が正直言って好きである。手順なんて踏まずに、その力をもってして言うことを聞かせる――その方がぶっちゃけ楽である。

 しかしリアはそういう手段を望んでいない。あくまで普通の学生として、目をつけた薬師の弟子になることを求めている。

(……しかしあれだな。私は前世では引きこもっていたし、就職活動など全くしていなかったもの。それなのにこの世界で就職活動をするなんて思ってもいなかったなぁ。いや、うん、まぁ、どっちにしろさ。どの世界でもやらなければならないものなんだけど、生きていくためには。でもなんかんー。就職活動って考えるとちょっと気分が沈む)

 リアは就職活動をすると思うと、少しだけうんざりしている。ちなみに今、薬師に接触しようと思っているため、ユニークスキルを使わずに街を歩いている。そもそもの話、基本的にユニークスキルを常に使い続けているのでこうやって歩くだけでも何とも言えない落ちつかない気持ちである。

 ――誰か敵がいたら。自分を《姿無き英雄》と知る者がいたらどうしようか――。そんなことばかり、ずっと考えている。

 周りがリアという存在のことを気に留めているわけではない。そのことはリアも理解している。あくまでここにいるリアは、ただの少女である。リアのことを《姿無き英雄》だとは誰も知らない。――それでも誰かが自分を見ているのではないか、自分のことを知るのではないかという不安を感じるのは、リアがそれだけ心配性だからであろう。

(まだ前世の世界よりは楽かなー、企業に行って面接とかはまず私には出来ないしさ。集団面接とかそういうの本当想像しただけで無理だし。ああいうの出来る人って本当凄いよね。私はそういうの無理だしそれを考えると集団面接とはまずないし。あの薬師のおばあさんの所だと多分、弟子とかもそんないないだろうしね)

 リアはそう考えながら、面倒なことはないだろうなと期待している。

(……弟子は一人だといいな。弟子になれて姉弟子とかいても面倒だし。そういうの本当に嫌だ。面倒。ちゃんと調べて弟子はいないことは分かっているけど、後から弟子を作られたらどうしようか。他の人をそこから探すのはもっと怠い。どうしようかな。多分ああいうタイプの薬師ならこっちからいかなきゃ弟子をとらないだろうし、技術が廃れるならそれはそれでいいって思っているだろうしね。そういう職人タイプの方がいい。下手に私に話しかけないタイプの人だからこそいいんだよね)

 リアが何故こんなに心の中で話しまくっているかというと、ただ単に慣れないことをするので色々考えてしまっているだけである。

 言ってしまえばリアは少し緊張して落ち着いていなかった。

(こんなに落ち着かないのも久しぶりかも。でもまぁ、たまにはこれだけ緊張するのも良い経験だよね。とりあえずやりきろう)

 リアはそう考えて、薬師の家の元へと歩いていく。

 ゆっくりゆっくりと歩く。ちなみにその間もちゃっかり《空中歩行》などのスキルは行使している。寧ろいつもスキルを使うのが常なため、スキルを完全に使わないでいるというのはリアにとってありえない状況なのである。

(こんにちは? はじめまして? どっちがいいんだろう。はじめまして、弟子になりたいです? いきなりだとおかしいかな? 考えてはきたけれど、やっぱり悩んじゃうね。どんな風にしたほうがいいんだろう……ってまぁ、考えても仕方がないか。とりあえず話しかけて、私がどうしたいか説明する。それが一番大事なこと。私は言葉が達者ではないけれど、見た感じ、あの薬師もそこまで口が回るわけでもなさそうだから、そのあたりで引っ掛かる事はないと思う。職人気質な人だったなら私が本気で弟子になりたいことを知れば余計なことは聞かないだろうし。弟子にしてくれるはず……うん)

 リアはそう考えて、薬師の家の扉をノックした。




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