エルフの国で粛清 ⑤
エルフの女王、マナへと反逆を企てたものたちは全員捕まった。――その圧倒的なマナの力に、彼らはもう反逆する気持ちもなくしてしまっている。それも無理はないだろう。本人たちにとっては十分に準備をして、あれだけのことを行った。
だというのに――、あれだけ圧倒的にマナは勝利した。そもそも、マナはその道具を使用されても全く、それに阻害された様子はなかった。マナにとってはあんな道具は、何も問題はないのだ。ただ彼女にとってみれば、蚊にさされてしまったようなものだろう。
「……女王様、精霊ってどんなものですか?」
リアはマナと共に、王城にいた。
正直言ってリアは、このまま帰宅してもいいかなーと思っていたのだが、マナに視線で帰らないようにと言われたのでリアはこうして王城にやってきた。
もちろん、マナ以外には悟られていない。リアはマナの自室に共に入ると、すぐにリアはそんなことを問いかけた。リアにとってみたら、正直言って捕らえられたものたちがどうなるかというのはどうでもいいのだ。
それよりも興味を抱いているのはマナの行使した《精霊魔法》についてである。《精霊魔法》というものにリアはあまり関わったことがない。だからこそ、《精霊魔法》についてマナに聞いてみることにした。
そもそもリアはコミュ障なので、基本的にこんな風に《精霊魔法》を使える存在と話すことはないのである。
「《精霊魔法》にリアは興味はあるの?」
「そうです。私、《精霊魔法》使えないから」
「そうなのね。エルフの国は精霊がそれなりにいるのだけど、リアは見えないのね。結構リアが~してたよと精霊たちが報告してくることも多いのよね」
「え」
リアはそれを聞いてショックを受ける。
精霊という存在をリアは見えないので、精霊が何処にいるかはリアには分からない。それなのに精霊にはリアが見えていて、報告をされていると思うと嫌な気持ちになる。
(こそこそしていたとしても精霊だと私が分かったりするってこと? ユニークスキル使ってても分かる精霊には分かるのか。それともユニークスキルを使っていない状況で私の事を報告されているのか。どちらにせよ、精霊について知ることは重要だね)
リアは誰にも負けたくない。――死なないように、ただ生きていきたいとそう望んでいる。だからこそ……リアは情報収集に努めることを決意する。
「……精霊は、ユニークスキル使っていても私が、わかりますか」
「精霊の強さにもよるわね。弱い精霊はリアには気づけないと思うわ。だけど精霊の中には、私よりもずっと強い存在だっているの。ずっと昔から――この世界に息づいている精霊もいるもの。漂うようにそこにいる、そういうものよ」
「……それは、怖いですね」
「そんなに怯えなくていいわよ。少なくともこの国の精霊は、貴方に嫌な気持ちは抱いていないわ。それどころか興味を抱いているもの。精霊はそこまで人に興味を抱かないから、興味を持たれるだけでも良いことなのよ?」
リアはそれを聞いて何とも言えない気持ちである。
(本当に良いことなのだろうか……。精霊に興味を抱かれているなんて怖い。そもそも精霊なんて訳が分からない存在が怖い。今の所、精霊は敵でもないけれど、敵対した場合のことを考えないと……)
リアはそんなことを考えながら、仮面の下でリアは嫌そうな顔をしている。そんなリアに、マナは予想外のことを言う。
「リア、王家の山にいく?」
「王家の山に? それって、一人前の王族と認められるために入る山で、普通に入るの駄目なんじゃないんですっけ」
「ええ。許可がなければ駄目よ。そもそもあそこには魔法の力が働いているから無理に入ろうとしても入れないとか、迷って外に出されるとか、そういうのがあるもの。でも今回は私が許可を出してよ。私が一緒に行くなら何も問題はないもの」
「……興味はありますけど、そこに何があるんですか?」
「それはいってからのお楽しみよ。でも私が一緒に行くなら日程の調整をしなきゃだから、そのあたりの調整が出来たら連絡するわ。休みの日だったら来れるわよね?」
「はい。休みの日だったら来れますね」
リアは王家の山について興味があったので、マナと一緒に王家の山に入ることが決まった。王家の山にいったら何があるかというのは、行ってみなければ分からない。精霊の話をして王家の山へ――という話なので、リアは精霊に関係があるのだろうなとは思っている。
「じゃあ、女王様。私は帰ります」
「もう帰るの? 日帰りで往復するなんて本当にリアは面白いわね」
そんな会話を交わして、リアはこのまま帰宅することにする。
これから夜になるので、魔物も活発化するのだが、リアは気にもせずに帰宅することにするのである。通常なら出来ないことだが、リアにとっては簡単なことであった。




