ハーレム主人公VS過去アリ主人公という勝敗の分かり切った勝負 ①
「どちらが勝つんだろう」
「それにしてもイルバネスに勝負をしかけるなんて」
「流石、ルミアネスだ」
ティアルク・ルミアネスとカトラス・イルバネスの決闘の日、当日である。学園内は浮きだっていた。何故かと言えば、あのティアルク・ルミアネスの起こした事だからである。
彼は、この学園の有名人だ。
彼は、紛れもないカリスマ性を持ち合わせている。
彼は、実力者として知られている。
だから、そんな彼の戦いだからこそ、学園の人々は関心を持っているのだ。
そのため、勝負の会場となる闘技場には開始前だというのにもう人が沢山集まっている。
アルフィルド学園には闘技場と呼ばれる場所が存在する。それは全校生徒の数より多い観戦席を持つ。学園で数カ月に一度行われる大会や今回のような決闘の場合にこの場所は使用される。観客席が多いのは、大会には外部の人も訪れるからである。
生徒の姿も、教師の姿も見られる。
ティアルク・ルミアネスに、それだけの人が注目している。
(結構人が集まっているね。それだけハーレム主人公も過去アリ主人公もある意味目立つからだろうけれども、なんというか、こんな分かり切った勝負してどうなんだろ? というか、ハーレム主人公は何を考えているの? 意味不明だよね)
さて、そんな中でリアはいつも通りユニークスキル《何人もその存在を知りえない》を行使してひっそりとその様子を見ていた。
周りははやくはやくと、誰もが急かしてる。
はやく、ティアルク・ルミアネスの戦いが見たいと誰もが望んでる。
望まれているのは、彼の勝利。彼の強さ。彼の戦い方。
そう、それが見たいと、それを見るためにと皆集まっている。
カトラスに対しての期待はそこにはない。カトラスは只のやる気のない不良としか認識されていない。いや、寧ろカトラスを認識していない学園の生徒の方が多い。
この場の正義は、ティアルク・ルミアネス。
カトラス本人のためにも、カトラスにやる気を無理にでも出させようとしている心優しい好意。
それがわかるからこそ、彼は正義。
そして彼は自分が正しいと思った行動は迷わずにやる。
行動力がある。そしてそれを行動出来るだけの実力がある。故に彼は何時だって注目を受けているのだ。
「……ティアルク・ルミアネスが勝つのは当たり前」
ぼそりとそんな事を呟いたものが居た。
観客席の後ろの方に腰かけて、周りでティアルク・ルミアネスの勝利を期待して騒ぐ生徒達に一瞬冷めた目を向けてそう言ったのはソラト・マネリである。
でも、その目は一瞬。
先ほどの呟き同様、誰の関心も集める事はない。
いつもの人を馬鹿にしたような目がまた、浮かぶ。
何を考えているかわからない目、顔、態度――それが、ソラトの特徴とも言えるだろう。
本心が何処にあるかわからない。そんなソラトが何故ティアルクとカトラスの勝負を見にわざわざこの場にやってきたのか、それは甚だ謎である。
へらへらと笑い、気持ち悪い表情を浮かべてる。
視線は、舞台を見てる。闘技場の舞台。闘いの場所。
(ソラトも見に来ているし、あいつ多分私が見に来ていること分かっているから見ているんだろうなぁ。それにしてもハーレム主人公ってルミさんたちの弟子だし、本当に欠片も学生に負ける要素ないんだけど?? 弱い者いじめでしかないのに、ハーレム主人公が正義って空気怖くない? めちゃくちゃ怖いと思うのだけど。やっぱりこれも主人公体質だからなのかな。だからこそ、どんな状況でも味方が多いみたいな)
リアはリア充の考え方は全く持って分からないが、少なくともカトラスにやる気を出させるためとかいいながら弱い者いじめのような戦闘を行おうとしているティアルクを理解出来ない。そしてこの行動こそが間違ってないと思い込んでいるのも分からない。
理解は出来ないが、良い見世物なので、リアはのんびりとそこで見ている。
まだ、ティアルクもカトラスもきていない。
はやく来ないかな、と誰もが考えている中でミレイ達が観客席へと姿を現す。
それを見て、観客席はまた騒ぐ。
ミレイ、エマリス、レクリア、アキラは学園内でもそこそこ有名だ。実力がある事も一つの理由だが、一番の理由はティアルクという注目の的の存在の傍にいつも居るからである。……ちなみにアキラに関しては最近の心が壊れている様子からも有名だったりもする。何があったのかと、口さがなく噂するものもいるが、ティアルクの手前、大きな声でアキラの事を悪く言うものはいない。アキラは、ぼーっとしながら目の前の舞台を見ている。相変わらず何を考えているかは、分からない。
彼女たちは観客席の一番前の席へと向かう。
人気者の彼女達へだからか、さっと前列の生徒達が席を空け、悠々と座る事が出来る。
そして、彼女たちが来たと言う事は主役ももうすぐ姿を現すという事―――。
―――ティアルク・ルミアネスが姿を現したのは、それからすぐの事だ。




