週末はエルフの国へ ②
リアの姿が現れると、マナは楽しそうに微笑んだ。
「こちらにお座り。リア。飲み物やお菓子も用意してあるわよ」
リアが学園が休みな週末にやってくるという事はマナも知っているので、飲み物やお菓子を準備していたのだった。
もちろん、今日、リアがやってくることは把握しているので誰も部屋の中に入ってこないように根回し済みである。マナはリアよりレベルが高いとはいえ、リアの事を敵に回したいわけでは決してない。
リア・アルナスという存在を、敵に回してしまったらマナだってただですまないことだろう。
「おいしいです」
「でしょう? リアがくるって聞いていたらからこの国で有名なものを集めたのよ。私もお気に入りなのよ
。最近若い子の間で流行っているんですって」
リアは口の中にイチゴ味のお菓子を口に含み、もぐもぐとさせている。無表情のまま、椅子に腰かけて、美味しいなとお菓子を食べるリアは年相応に見える。
「ん、私も気に入りました」
「じゃあ、帰る時にもお土産であげるわ」
「ありがとうございます。……それで、私、何すればいいです?」
リアはこの場所にお菓子を食べに来たわけではない。マナと話をするためにきたわけでもない。――あくまでリアは、マナから頼みをされてきただけである。基本的に人との関係が希薄で、進んで人に関わらないリアなので、終わらせられるならば即急に用事を終わらせて自分のペースで行動をしたいと思っていた。
マナはすぐに用件を聞きたがるリアに、相変わらずせっかちだと思ってならない。
(本当にリアはリアで、ぶれることが全くないわね。そういうリアだからこそ、こういう頼み事がしやすいのだけど)
マナはリアの性格を好ましく思っている。
「そうね。最初はエルフの国を見て回って、私に不満を持つ者たちの情報を集めてほしいわ。ただすぐにつぶすのはやめてほしいわね。ちゃんとどのタイミングで、どんな風に彼らを粛清する方がいいかというのを考えて行動したいもの」
「え。面倒くさい……です」
リア、正直言ってさっさと終わらせたいという気分なので、じっくり粛清方法を考えるというマナにちょっと嫌そうな顔をする。リアに策謀は似合わない。
深い事は考えずに本能の赴くままに行動する方が性にあっているので、嫌そうな顔だ。
「そんな嫌な顔をしないの。リアはすぐに相手を殺して終わりとしたいのかもしれないけれど、それじゃあ遺恨が残る可能性があるでしょう?
リアは一匹狼気質だし、一人でも生きていけるかもしれないからそれでもいいかもしれないけれど、私は王だもの。国を背負っているからこそ、そこのあたりはちゃんとしなければならないわ」
「……女王様、強いからどうにでもできそうなのに」
「そうね。確かに私は強いわ。この力をもってして相手を黙らせることも、好き勝手に行動することも出来るわ。だけど、私は一人で生きているわけではないもの。それに幾ら私が強くても、国民達を蔑ろにしたら酷いしっぺ返しを食らう可能性もあるわ。私はこの国とこの国の国民と生きているもの。だからこそ、粛清の方向性は考えてやりたいわ」
はっきりとした口調でそう告げるマナ。
それを見てリアは、マナは統治者なのだなと思う。
(女王様は統治者だ。ちゃんとした王で、だからこそ、周りのことも考えている。きっと女王様は良い王様。私はこういう風な存在にはなれないだろうなぁ。未来というのは誰にも分からないものだろうけれども、それでも私はきっとこんな風にはなれない。うん、私って転生者だからあんまり思いの変化ってないんだよなぁ)
リアはそんな自己分析をしながら、マナの言葉に頷く。
「わかりました。じゃあ、情報集めます。沢山集めて、明日は学園間に合うように帰ります」
「リアは真面目ね? 学園は予定があれば休む人もいるでしょうに」
「嫌。私は、普通に学園生活送ります。理由なし、休むの嫌です」
リアはやると決めたことはとことんやり遂げたいと思っているのだ。だからこそ、休みたくないのである。休まずにエルフの国での女王様の頼みをこなすと決めているリアだ。
普通はそんなことやろうと思っても出来ないが、そこはリアである。
「そう。なら間に合うように帰らなければね。リア、別に今日明日で不穏分子のことをすべて把握しろって言っているわけじゃないから自分のペースでやりなさいね」
マナも今日、明日でリアが情報を持ってくるとは思っていない。それこそ寿命が長いからこそ、明確な解決をするのは今すぐじゃなくても構わないと思っている。
「今日、明日見つからないなら、来週も手伝い、します。でもなるべくはやく終わらせます」
ゆっくりでいいと言われたところで、リアがゆっくりすることはない。あくまで即急に解決を求めている。
「じゃ、女王様行ってきます」
「ええ。いってらしゃい、リア」
リアは、窓から外へと出ていく。
マナの部屋から出た瞬間行使されるユニークスキル。そして誰にも気づかれることなく、リアは王城を後にする。




