週末はエルフの国へ ①
リア・アルナスは相変わらずの日常を送っている。
誰もリアが《姿無き英雄》だとは気づかない。リアの学園生活は、平穏であると言えるだろう。さて、二学期が入って少しが経ち、はじめての週末がやってきた。
週末の訪れ――、リアが何をするかといえば、エルフの国へ向かおうとしていた。それもあの手紙が来ていたからである。
朝早くに目を覚まし、早速準備をすませる。
リアは基本的に寝過ごすということはない。いつも規則正しい時間に寝て起きる。たまに、予定が入って遅くに寝ることはあるが、身体を鍛えるためにも身体の体調を整えることは重要である。そのため睡眠はちゃんととっているのだ。
(女王様の所へ行く。土日で行って帰るからちゃんといつ出るかなど確認しないと。それにしても女王様に手を出している連中もちゃんとどうにかしたいし。というか、多分女王様以外がエルフの国の王になったら私もエルフの国で動きにくいもの)
リアはそんなことを考えながら、準備を終えると海を渡る。いつも通り、《空中歩行》と《瞬速》と《何人もその存在を知りえない》を行使して、海を渡る。
(潮の香、良い。鳥が沢山飛んでいるし、サメみたいな魔物もいるなぁ。前世だったらサメには近づけなかっただろうけど。今ならば私はどうにでも出来るからなぁ。そんなに強くない魔物なら討伐可だし。あれだよねー。イルカみたいなのに乗って冒険とかもアニメとかであったよね。ああいうのもありっちゃあり。なんか海の上で生きている一族みたいなのもいるのがファンタジーって感じ)
リアは空から海を見下ろして、色んな事を思考する。
水上生活を続けている人々もこの世界にはそれなりにいる。それは海賊と呼ばれる存在だったり、船の上で生きる者達――。リアは正直言って水上生活をしたことは特にないので、そういう生活をしている人たちは凄いなと思っている。
(水の上ってこの世界は危険だもんね。いえ、水の中だけじゃなくて、自然の中は魔物も多くいるしさ)
リアは釣りをしている人々を見下ろして、息を吐く。
ただ今回は急いでいるというのもあり、そういう所に寄り道をする暇はリアにはない。余裕がある時はたまに船に勝手に乗ったり、その水上生活を見聞きしたりするのだが、今は一生懸命エルフの国へ向かっている。
(ついでにネアラの出身地も見かけられたら見るかな?)
折角なのでついでにネアラの出身国も見に行こうかななどと思考しながらその大陸に到着する。
(さて、到着。まだ朝早いうちに到着出来てなんだか気持ちが良い。朝の雰囲気は、良いもの。人気も少ない。人が多いと面倒だからこうして誰もいないのは良い)
人が少ないことにリアは安堵する。誰も周りにいないことが嬉しく、思わず笑みを溢す。まぁ、誰も知覚していないけれど。
そしてネアラの故郷の様子を覗き見して、そこまで圧政は敷いていないというのを確認すると通りすぎる。
そしてエルフの国、マナフィルムへと一気に向かっていく。
エルフの国に辿り着いたのは、まだ午前中である。
一気にかけてきたため少しの疲労はあるが、この位の疲労はリアにとっては日常茶飯事だ。リアはエルフの国の王城の中へと侵入する。
王城に侵入しているというのに、誰一人リア・アルナスという侵入者には気づかない。
普通なら王家の住まう場所は、厳重な警護がされ、誰も侵入出来ないはずだが、そんなところに簡単に侵入出来るのが、《姿無き英雄》である。
リアはやろうと思えば、王族を殺すことなんて簡単に出来る。ただやる理由がないからやっていないだけである。
そのままリアはのんびりと足を進める。
朝早い時間というのもあり、そこまで王城にも人気は少ない。人のあまりいない王城というのは、不思議な気持ちである。
(警備の兵士はいるけど、皆レベルもそれなりか。それにしてもエルフって人より寿命永いからそれなりにレベル高い人多いな。寿命の長さって一種の武器だもんなぁ)
寿命の長さというのは、一種の武器である。レベルを上げやすいとも言える。まぁ、ただ寿命が長い分、人の成人が十六歳ぐらいなこの世界で、エルフの成人はもっと年を取ってかららしいけれど。
「今日も異常はなし」
兵士たちがそんなことを口にしている。
リアという異常には全く気付かないままだ。
気づかれないことにほくほくとした気持ちになりながら、リアはマナの居る場所へと向かう。朝だが、もうすでにマナは行動しているようだ。
(女王様って偉い人なのに、それが自然体だよね。こうやって朝早くから国のためにって動いているの凄いと思う。私は私のためしか動けないし)
そう思いながらリアはマナのいる部屋へと入る。マナはすぐにリアが居ることに気づいたようだ。
「あら、来たのね」
「ん。来ました」
笑いかけられ、リアも声を発する。
それと同時にリアの姿がその場に現れる。




