二学期の始まり
二年生の二学期が始まった。
あっと言う間にリアの夏休みは過ぎていき、相変わらず無表情でリアは学園に来ていた。
正直言ってもっと夏休みは長くてもいいのに……などとリアが思うのは、やっぱり姿を現しっぱなしという状況が二年目でも全く慣れていないからといえるのかもしれない。
周りの生徒たちが「久しぶりー」「夏休みどうだった?」といった久しぶりの会話をしていても、リアはただ無表情に本を読んでいる。《隠蔽》スキルを使って難しい本を淡々と読むリア。
(始業式ってつまらないよね。特に授業があるわけでもないし。流石に始業式さぼると目立つかもってここにいるけどさ)
リアは退屈そうな様子を見せている。
それはそれだけリアにとって、夏休みというものが充実していたからといえるだろう。
(ちゃんとは確認していないけど、ハーレム主人公は夏休みの間も色々やらかしたみたいだね。なんだかんだ他の大陸の権力者とも仲良くなっているみたいだし。なんというか、流石ハーレム主人公だよね。何だかんだ運がとてもいいとか、そういうのがきっとあるんだろうね)
リアはそんなことを考えている。
リアは夏休み中にちらりとハーレム主人公を見かけた。その時は他大陸から戻ってきた様子だった。周りのハーレムたちと仲良くなっていた。相変わらずアキラ・サラガンは腑抜けたままだった。
(夏休みを終えてもやっぱり自分の拠り所にしていた宗教団体がつぶれた衝撃から立ち直れないって心が弱いよね。そんなに心が弱くてこれからこの世界で生きていけるんだろうか?)
アキラ・サラガンはリアが宗教団体をつぶしたことで、居場所を失っている。自分の拠り所を失い、相変わらずまだ心を無くしたままだ。リアはそれに対して何か行動を起こすつもりは全くない。ハーレム主人公が勝手に解決するだろうと思っているのだ。
(それよりもエルフの女王様のことだよね。多分女王様は私が土日にあっちに向かうなら何も文句はないだろうけど……。それにしても女王様に不満を抱いている不穏分子ってバカなのかな? 女王様って《超越者》である私からしても怖いし、絶対に敵に回したくないんだけど。そもそもエルフの国って、とても栄えているし、皆幸せそうだったし、良い国だと思うんだよね。その女王様の手腕を見た限り、女王様が女王様である方が断然、国も幸せだと思うんだけど。
それに周りの国も女王様を敵に回したくないって思ってあの国に手を出そうとしないわけだし)
リアは、マナから頼まれたことについて思考する。今度の休みに早速大陸間の往復を行い、話を聞きに行くつもりである。学園を休むつもりはないので、間に合うようにいく予定だ。
エルフの国は、色んな街をぶらぶらしているリアから見ても良い国だった。マナが統治者として優秀なのかこれといった問題は起こっていない国だ。
それなのにどうして不満があるのか?
そうリアは思うが、人は幸せな日々が当たり前になればもっと幸せを望むものである。今が幸せだと思えず、もっと幸せになれるはずだとそんな風に求める存在は少なからずいる。
マナに不満を抱いている者も総じてそういう者たちである。
今の幸せがマナのおかげであることを忘れ、今がどれだけ幸せなのかを忘れ――そして権力を欲している。
リアはそういう表立った権力などいらないと思っているので、そういう権力重視な人々の思考は全く分からない。
(権力が欲しいのか、国が欲しいのか。どちらにせよ、今のエルフの国は女王様が王だからこそ成り立つものだよね。女王様は《超越者》だし、後継ぎについても考える必要がない。今が延々と続くのならばいいことだと思うんだけど。でもそうか、自分が権力者になりたいとか、女王様が権力にしがみついているとか、そんな風に思っているのかな? でもどうして女王様の代わりを自分ならやれるなんて思いあがれるんだろう?)
基本的にリアはネガティブな思考である。誰かに殺されたら、といったことをいつも考えている。人前に立つことも嫌だと思っているし、自分なら~の代わりになれるなどといった思い上がりはリアにはまず出来ない。
(女王様が優しいから? いや、違うか。強いからこそ余裕を持っているから、その余裕さを見て自分はやれるはずだとそう思っているのかもしれない。人って不思議だよね。特にエルフ何て女王様がどれだけ凄い人か身に染みているだろうに)
リアは不思議で仕方がないが、まぁ、そういう人が出てくるのも仕方がないことかもしれないなどと考えていた。
結局のところ、リアは誰とも会話を交わさなかった。
――そして周りもリアが会話を交わさないことが分かっているからか、リアに話しかけることもなかった。
この場にティアルク・ルミアネスたち一味がいたら絡んでくる可能性もあったが、今年はクラスが違うので大変平和であった。
200話達成です。
 




