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ぼっち《英雄》の入学初日のこと。1

 「それではこれより諸君はこのクラスの仲間だ。これから仲良くするように」

 四十人ほどの生徒達が存在する教室。その教壇に一人の若い男性が立っている。このクラスの担任を務める事になったその赤髪の教師は生徒達の顔を見つめて、そんな風に声をかけた。

 このアルフィルド学園は十五歳から十八歳までの生徒が通う場所で、魔法や武器の扱い方から、歴史など様々な事を学ぶための学園の一つである。

 特にこの学園では戦いを率先して教える場所で、此処を卒業したというだけでステータスになる。卒業生の中には警備兵や軍人、ギルド員として名を響かせている者も多く居る。

 そんな学園の教師を務めるものはそれなりに戦闘経験があり、生徒達よりも一回り上のレベルを保持している存在だ。最低でもレベル六十を超えていなければ教員になる事が出来ないほどである。

 自分達よりも強く、それでいて外見も良い男性教師に騒いでいる女子生徒も教室内には何人もいた。

 そんな様子を全く興味がありません、といった様子の少女が居る。

 十五歳に見えないほど幼い顔立ちをしていて、髪はショートカットの茶色である。

 入学式が終わってすぐの教室でのホームルーム。

 大抵の生徒は新しい環境になれようとするものであろうし、友人を作ろうとするものであろう。

 しかし少女―――リアは正直そんなもの興味がなかった。

 学園に通うのは新しい発見と資格を手に入れるためであって人となれ合うためではない。

 というよりリアは《一匹狼》という称号(単体行動を好むことによって手にはいる称号で、要するに所謂ぼっちが手にするものである)を持っているほどに交流関係は狭く、人づきあいは苦手だ。

 友人が霊榠山に住まうルーンだけという周りから見れば寂しい少女である。まぁ、幼馴染やギルドでの知人は別にいるわけだが。

 此処は戦う事を学ぶための学園であるため、教室内だというのに生徒達はそれぞれ自身の武器が持ち込まれているのも自然な光景である。

 現にリアも長剣を一本机に立てかけている。

 「まずはステータスを見せてもらおうと思う。呼ばれた順にこちらに来るように」

 担任であるギルタース・ガリオンがそんなことをいって、ステータスの確認がはじまる。

 ステータス―――それは個人のレベルから、スキルのレベル、所持している称号までもが書かれているものである。STRは力、VITは生命力といったようにネットゲームで使用されているようなそのまんまである。

 スキルはその人物の行動により手に入るもので、そのスキルを使用することによってレベルがある。個人のレベルは魔物を倒すかスキルを発動させ経験値を稼ぐことによって上がるものだ。

 称号は個人の行動によって手に入り、攻撃力や素早さなど様々なものに影響するものだ。

 ステータスは本人がオープンするか、《分析》というある条件で手に入るスキルによりみることが出来る。二つの違いはオープンなら誰でもそのスキルを見る事が可能だが、《分析》ではスキル行使者以外には見る事は不可能である。

 ただし《分析》のスキルを使おうとも自身よりもレベルの高い者のステータスは見れないし、《隠蔽》というスキルがあればステータスをいじくる事も可能だ。

 リアは教師の方へと向かっていく生徒達を《分析》する。

 強い人はいないか、面白い人間はいないか。

 ただのその好奇心から教師にもクラスメイトにも悟られないようにそのスキルを行使していた。

 (三十三、二十五、十六、二十……んー、やっぱり十代の学生となるとレベル十~二十五が平均的か。今の所、クラスの最高レベルも三十……と次は、ってん?)

 リアはつまらなさそうに息を吐きながら、次の人物に視線を向けて少し驚いた。

 その人物の名はティアルク・ルミアネス。

 それは美しいの一言に尽きる少年だった。

 窓から差し込む光がその金色の髪を輝かせていた。ルビーのように煌めく赤目は、酷く美しい。学園で指定された緑色のブレザーを着ていても彼が着てるというだけで何か特別なものに感じるほどだ。

 その天使と称するにもふさわしいような神秘的な美しさに、幾人かの女子生徒達がその外見に感嘆の息を吐いていた。

 そんな彼のステータスはただ《分析》するだけではこう見える。



 ティアルク・ルミアネス。

 年齢 十五歳。

 種族 人間、

 レベル 三十一。



 STRやVITなどの能力やスキル、称号は省略してあるそれにリアは違和感を感じ、心の中で面白そうと呟くと、《分析》のスキルをもう一度発動させる。

 そうすれば今度はまた違ったステータスが見えてきた。

 どうやら《隠蔽》のスキルを使っていたらしかった。

 リアよりも彼のレベルが低いため、《隠蔽》されていようとリアは彼のステータスを見る事は可能である。最もいくらレベルが相手よりも高くても  《隠蔽》に気づかなければ本当のステータスは見れるものではないのだが。

 彼の本当のステータスはこうであった。



 ティアルク・ルミアス。

 年齢 十五歳。

 種族 人間。

 レベル 七十一。



 見えてきた本当のレベルにリアはおお、と感心して詳しいステータスを見る。

 HPやMP、STRなどの能力は特に興味がないので、スキルや称号で面白いものはないかと《分析》のスキルで見てみる。

 (《男の敵》、《ハーレム属性》、《鈍感》……何だこの何かの主人公っぽい称号。というか、《ギルドランクA》ってあれか。強い事を隠して学園生活を送る物語の主人公って感じだね。現実でこんなあからさまな主人公君が居るとか、びっくり)

 十五歳程度の年でレベル七十一なのは異常な事なのだが、リアにとってはそのレベルよりも称号に関心がいくものらしかった。

 ギルドとは魔物退治から護衛まで幅広くこなす何でも屋の総称である。

ギルドは所謂中立の立場にある機関であり、国家間の機関に所属しておきながらギルドに所属する事は出来ない。

 リアもギルドに所属している一員であるため、面識はなかったもののティアルク・ルミアネスは同僚にあたる。

 「次、リア・アルナス」

 ティアルク・ルミアネスのステータスを見ている間に、いつの間にかリアの番がやってきたらしい。

 リアは教師の言葉に「はい」と返事をして、席を立つ。

 席を立った時、リアを見て何人かの生徒達がひそひそと小声で会話を始めた。

 時折、「え、小さい…」、「あの子、本当に同じ年?」などという囁き声が聞こえてきて、リアは不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 リアの身長は今年十六になるというのに百四十一センチしかない。女性の平均身長が百六十五センチ以上のこの世界では低すぎるといえる身長である。

 リアはそんな声を気にしてない様子で教壇へと近づいていき、ステータスをオープンさせる。そこに書いてある称号を見て、教師は眉をひそめた。

そこに表示されているのはこうである。



 リア・アルナス。

 年齢 十五。

 種族 人間。

 レベル 十五。

 スキル 《闇属性level 11》、《火属性level 9》、《我流剣術level 9》、《浮遊level 3》。

 称号 《活字中毒者》、《臆病者》。



 その教師が眉をひそめていたのは《臆病者》という称号に関してだった。

 この称号はその名の通り、おびえ続ける事で手に入る情けないものだ。持っていると馬鹿にされる事も多いものだ。そんな称号を所持している生徒がクラスに居る事がお気に召さなかったらしい。

 この世界、強い事は正義である。

 魔物の危険性、人間同士の争い。

 この世界には驚くほど多くの危険が溢れている。それ故に強さに誇りと自信を持ち、向かっていくものが多い。

 そんな強さに誇りと自信を持ち、強敵と戦ってきた経験のある目の前の人間にとって《臆病者》などという称号を持っている人間を軽蔑でもしているのだろうとただリアは感じた。

 特にこの学園は強くなるための場所であるからなおさらその傾向は強い。

要するにこの世界は脳筋が多いのだ。

 「……戻ってよろしい」

 「はい」

 ただそこは教師だからかその場で何か言う事はなかったが、その目にはこんな生徒を持つなんてという視線がありあふれていた。

 開かれたステータスを見たらしい生徒達が、《臆病者》の文字にこそこそと話し始めた。

 リアはそちらに視線も向けずに自分の席に戻っていった。

 その後、生徒達が交流を深めるための時間となったもののリアは鞄から取り出した本を読み始め、周りと関わる気は一切ないようだった

 交流を深めようと騒いでいる生徒達の中では、読書に夢中になる姿は明らかに浮いていた。

 時折話しかける生徒もいたのだが、あまり会話が弾まず結局リアは誰とも仲良くなる事がなかった。



 そのクラスの中で生徒達と絡もうとしない生徒はリアを含めて二人。カトラス・イルバネスという少年とリアだけであった。





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― 新着の感想 ―
モブでレベル33は高くありませんか?おそらく23の間違えですよね? 学年ではなく「クラスメイト」の最高30台も副会長に迫りますし、副会長のレベルを上げるか周りを下げないと副会長ただの無表情女子になって…
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