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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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夏休み終わりに受け取る手紙

 リアはその日、ギルドマスターからの呼び出しを受けてギルドへと来ていた。いつものように《何人もその存在を知りえない》を使って、誰にも悟られないように侵入する。

(……お義父さんからの呼び出し。なんだろ。面倒なことじゃなければいいけれど。面倒なの嫌い。でもちょっと嫌な予感もする)

 リアはギルドマスターからの呼び出しに、少しだけ嫌な予感を感じていた。

 もうすぐ夏休みも終わる。

 二年生の夏休みは、リアはルーンの元にほとんどいた。ルーンの元で殺し合いという名の遊びをずっと行っていた。あとは気まぐれにネアラやラウルを育てたり、薬師を見つけたり――大体、リアの夏休みはそれらのことしか行っていない。

 このまま何も起こることなく、夏休みが終わるだろうと思っていたリアだが、このギルドマスターの呼び出しに何か起こる予感がしていた。

 ギルドに居る誰もが、リアという存在には気づかない。そんな中で少しずーんとした気持ちになりながらギルドマスター室に入るリア。

 ギルドマスターは流石というべきか、すぐにリアの存在に気が付く。

「リア、来たか」

「ん」

 声をかけられれば、リアは姿を現す。

 仮面越しでもその様子が不機嫌そうなのが丸わかりである。

 その様子が分かったギルドマスターは苦笑する。

「なんだ、機嫌が悪そうだな?」

「ん。折角楽しく、夏休み謳歌していた」

 リアは夏休みを楽しく謳歌していた。

 学園に通うことを決めたのはリア本人であるが、学園生活というのはコミュ障なリアにとってはストレスのたまるものである。なんせ、ユニークスキルが開花してからほとんど人前に出ずに生活していたので、常に姿を現していなければならない学園生活は疲れるのだ。

「それで何? お義父さん」

「ほら、マナからの手紙だ」

 ギルドマスターは不機嫌そうにじっと自身を見るリアに、苦笑を浮かべながら手紙を渡す。

 その手紙には、エルフの女王、マナの印が押されている。マナとの手紙のやり取りは何回かしているが、何だか今回受け取る手紙には嫌な予感がしていて、正直リアは受け取りたくなかった。

(なんか嫌な予感するし、受け取りたくない。でも女王様は私よりもレベルずっと高いし、無視したり受け取らないと報復が面倒そう。……受け取るしかないか。もっと私が誰の手も届かないぐらいレベルが高ければこんなことを気にしなくていいのになぁ)

 そんなことを考えながらも仕方なしく、マナからの手紙を受け取る。目の前でギルドマスターがニヤニヤしているのを見るに、ろくなことではないだろうとリアには分かった。

 そしてマナからの手紙に目を通す。

 それを見て、リアは嫌そうな表情をした。

「……やだ」

「やだじゃないだろ? マナがリアに関わってほしいって思ってんだから」

「……お義父さん、手紙の中身知っているの?」

「ああ。マナから俺宛てにも手紙が来ていたからな。言っておくが、マナはレベルも高いし、あのエルフの国の女王なのだから仲よくしておくのに得しかないぞ?」

「それは、分かる。でも面倒……夏休みもう終わるし」

 書いてあったのは、エルフの国の不穏分子をどうにかするのに協力してほしいという言葉である。嫌ならば断わってもいいと手紙の最後の方に書かれているが、正直言ってその言葉をどこまで信じていいものか、リアには分からなかった。

 なんせ、相手はレベル三百オーバーの化け物のように強い存在である。同じ《超越者》であるとはいえ、リアとは格が違う相手だ。

 断らずに、言う事を聞いた方がいいだろうとは分かっている。

 ただ面倒だなという気持ちと、もうすぐ夏休みが終わるし学園が始まるからなという気持ちがある。

 ギルドマスターはそんなリアの言い分に面白そうに笑う。

「学園生活とエルフの女王の頼みを天秤にかけるなんてお前ぐらいだろうな。別に土日だけ関わるとかでもいいだろ。マナは最初から最後まで関われって言っているわけでもないし、リアがエルフの国に行って手伝ってもいいと思った時だけ手伝えばいい。

 エルフの国に仕えているわけでもないリアに不穏分子をどうにかするのを一からすべてやれっていっているわけでもないしな」

 ギルドマスターの言うことも最もである。マナはリアよりもレベルも高いし、無理やりリアに最初から関わらせることもやろうと思えばできるだろう。そういう強制的な力をこの手紙は帯びているわけではない。ただリアにちょっとした協力をしてもらえないかと聞いているだけだ。

 いうなれば知り合いだから少しお願いをしたと言ったそんな感じのノリの手紙である。

(……まぁ、確かに女王様は強制はしていない。私が土日だけ、気まぐれにいっても受け入れそう。それならいいか)

 リアはそう結論付けて、「じゃ、時間ある時だけ」と口にしてエルフの女王様への手紙を書き始めた。返事は時間がある時だけ手伝うという簡潔なものである。エルフの国がこの大陸なら放課後も手伝えたが、流石に他大陸には土日ぐらいじゃないと手伝えないこともちゃんと書いていた。


 その後、「じゃ、返事これ」と口にしてリアはギルドマスターに手紙を渡すのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] リアの嫌そうな顔がありありと目に浮かぶな
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