表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/460

リア、薬師を決める。

 リア・アルナスは、《何人もその存在を知りえない》を行使して、うろうろしている。

 夏休みを絶賛謳歌しているリアは、相変わらず人前には出ない。リアの夏休みというのは、人と交流をする夏休みではない。学園に通わない分、リアはのんびりと過ごしている。ただ自分の好きな事だけ行うわけにもいかない。

 ――リアは学園生活二年目である。

 三年で卒業することになるので、将来のことをちゃんと考えなければならない。

 リアの場合は、別に働かなくても生きていけるぐらい、お金はある。やろうと思えば、どうにでも出来るのだが、リアは基本的に臆病で、将来のことをちゃんと考えている。どちらかというとポジティブよりもネガティブよりの思考である。

(ネアラはそこそこ強くなっている。もっと強くなるかもしれない。ネアラはやる気がある……ネアラが学園に通う時はどうなるか。通わなくてもいいけど、私たちと同じ学園に通いたいって言っているし)

 リアはそんなことを考えながら、その場にいる誰にも気づかれることなく、その場にいる。

「――《姿無き英雄》様ってかっこいいよな」

「流石だな。本当に。特に正体が分からないから知りたいよなー」

 そういう話をよくされている。《姿無き英雄》は正体が分からないからこそ、皆が《姿無き英雄》の事を知りたがっている。

 そのことをリアは百も承知である。

 それでもやっぱりリアは自分の正体を知られたくないのである。

(んー、自分の事を噂されるのはやっぱり好きじゃないなぁ。まぁ、とりあえずバレないようにしないとな)

 そんなことを考えながらリアはぶらぶらしている。

 現在、何をしているかと思えば薬師のことである。何処で働くか、誰の弟子になるか――リアはそればかりを最近は考えている。さっさとどこの下で働くかを決めて、三年生はのんびりしたいなーというのが正直な思いである。

 そんなわけでリアは一学期のうちに誰にするかというの候補を決めていたが、その中で誰の弟子になるかをようやく決めた。今後、他の候補を見つけたらどうするか分からないが、一先ず決定ということでリアは一人にやついている。

 リアが決めた薬師は、おばあさんの薬師である。黙々と、淡々と調合をしているような存在である。リアはそういう存在の方が良いと思っている。

(レベルも高いし、ただ調合をやり続ける存在の方がいいよね。そちらの方がきっといいよ。だって下手に接客業務とかもやっているのは嫌だもんね。あの薬師さんだと、元から契約している場所に調合を卸しているだけで下手な接客しないもんね。接客業務とか本当に無理だもん。前世から思っていたけれど、接客業は出来ないものな。皆どうやって接客業とかやってるんだろう? 本当無理だよねー。多分接客業している存在は私よりもある意味凄いんだろうな)

 リアは前世から含めて、接客業というものが出来ない。そういうことが出来る存在はすさまじいなと思っているのだ。

 基本的に人に関わりたくない、そもそも人前に出たくないと全力で思っているのがリアだ。だからこそ《何人もその存在は知りえない》というユニークスキルが芽生えた存在だ。

(あの薬師さんは良いよね。接客もしないで、淡々としているから。ああいうのが一番良いよね。私もぶっきらぼうに対応しても許されそうだから)

 リアは「おはようございます」「いらっしゃいませ」と元気よく言うのは無理だ。

 なのでそういうのを求めるような前世の薬局のような場所だと働けない。というわけで決めたのは一人で調合を行い、決まった所と対応する相手だ。

 その存在を見つめ、リアは笑う。

 目の前でのんびりと調合をしている存在。一日のルーチンが決まっており、それ以外の一日を過ごさない。そういう存在である。

(私は逆にその日その日が違うから、そういう人はある意味凄い。いや、でもある意味魔物退治も一種のそれにあたるのかな? でもあの神もどきみたいなのと戦ったりは普通はないしな。しかしこの人の調合技術凄いな。私も同じぐらい出来たらいいのだけど。調合だけやっているわけでもないから調合だけ上がるわけじゃないしな)

 リアはその見た目六十代ぐらいの年配の女性の姿を見据えて、職人のような姿はいいなと思っている。

「ふぅ、今日はこれぐらいにしとこうかね」

 そんなつぶやきを発して、薬師は立ち上がる昼ご飯の準備をしている。

 自家製の野菜を収穫して、街の端の方に住んでいる。なんともリアの理想である。決まった人しか訪れないのもポイントが高い。リアはその薬師の弟子になって薬師をやることを思って、楽しそうだ。

 ただし、その薬師が弟子を取っているかどうかは分からない。上手く取り入って、弟子になれればと考え中だ。

(……よし、どこかのタイミングでこの薬師に接触して弟子入り志願しよう。駄目だったら他の薬師に弟子入りしなきゃだからもっと考えないとね。色々と予測しながらやって、どうにか二年生のうちに誰の下で働くか決めたいな)

 リアは、二年生のうちにきめておきたいとそう願っている。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おばあちゃんて、何か良いよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ