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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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気まぐれ強化合宿 5

「……リア姉、なんで、その人、倒れてるの?」

「情けないな。折角リアちゃんが鍛えているのに意識失っているとか。捨てていきたいな」

「いや、ソラ兄、それ駄目でしょ。相変わらずリア姉以外にはひどいんだから」

 ネアラとソラトが戻ってきた。

 その時には、リアの姿はその場にない。いや、こんな状況でも《何人もその存在を知りえない》を使っているというべきだろうか。なのでそこに見えるのは、倒れている《爆炎の騎士》ラウルだけである。でもこの場にリアがいることを確信して二人はそう告げる。

「ん。ちょっとやったら、倒れた。情けない」

 姿を現したリアは、そう言いながら少しつまらなそうだ。

「リア姉、なんでこういう人と友達なの?」

「……昔の知り合いだから? じゃなきゃ、多分、友達違う」

 あくまで前世の知り合いだから友人関係にある。

 あくまで前世の知り合いだからラウルの事を気にしている。

 もしラウルが前世のゲームでの姿ではなかったら、リアはラウルの事を放置していただろう。ただ昔の知り合いが、死んでいくこと――それは流石に寝覚めが悪いと思っている。

「リアちゃんに気にされてるとか、やっぱり気に食わない……」

「……ソラトが気に食わないとか、関係なし」

「だって、だって!! こいつレベル高くても色々足りないじゃん!! てかずるいじゃん!! 何でこいつこんなにレベル高いわけ!? 俺はリアちゃんに追いつきたくて、リアちゃんに並びたくて――だから必死なのに、何だかこんな情けない奴にレベルが負けているとか、俺、なんかすごいむかつくんだけど」

「いや、まぁ、それはあるけど。ラウル、私たちよりレベル高いの事実。私、友人は死ぬのちょっと嫌。でも多分、ラウルは……ある程度強くなったら、停滞はする」

 リアは、ソラトのちょっとずるいとか、凄いむかつくとかそんな主観的な思いに肯定する。

 リアはこの世界に転生して、苦労して、死ぬ思いを何度も重ねて――そして《超越者》に至った。だけど異世界からの転移者は、そういう努力なしにレベルが高い。ちょっとだけずるいなと思う気持ちはわかる。

(でもラウルは……強くなりたいって渇望が薄い。死にたくないっていう思いが薄い。だから、多分、すぐに満足しそう。私がラウルより強くなったとしても、それを簡単に受け入れてしまいそう。だから、多分停滞する)

 そんなことをリアは考えている。

「とりあえず、ごはん準備する。食べたら、続き。ラウル、無理やり起こす?」

「起こそう。折角、リアちゃんが強化合宿やっているんだから起こそう」

「……いやいやいや、失神するまでやっておいて、それはちょっとかわいそうじゃない? この人、レベル高くてもリア姉のしごきに慣れてないんでしょ? それに……本気で強くなろうとしていないのならば、そこまで死ぬほどのものに組み込まなくていいんじゃない?」

 リアとソラトの発言にネアラが突っ込みを入れる。

 リアとソラトはあくまでマイペースなので、ネアラは元々皇女だというのに、すっかり突っ込みキャラになっていた。

「それよりリア姉、ソラ兄、私のことを鍛えてよ。私はリア姉とソラ兄に追いつきたいからどんどんスパルタでやってほしいから!!」

「……うん、じゃ、ネアラ、鍛える。ラウルは友人のよしみで、ここいる。けど、メイン、ネアラ」

 リアもどちらかというとこの世界で生まれ育って、強くなることに執着しているネアラの方をメインで鍛えようと思った。元日本人で、前世の記憶があろうとも、リア・アルナスはすっかりこの世界の住民なのだ。

 ラウルは死なない程度に鍛えられればそれでいいので、リアはネアラにも同じことをやってみることにする。

「私、攻撃する。刃物は使わない。不測の攻撃への、対応手段、鍛える」

「リ、リア姉に攻撃されるの? ちょっと怖いけど、私、頑張る!!」

「じゃ、俺はスキル使いながら見とく」

 リアの申し出に、ネアラは恐る恐る頷く。正直リアに攻撃をされるというのは恐怖しかないが、まだリアが自分を殺そうとしていないのならば……と決意に満ちた目でネアラはそれに挑む。

 ネアラのレベルはその年にしては高いが、リアとの差は歴然である。……それでも強くなるには無茶をしなければならない。《超越者》に至るというのは普通ではないから。

「じゃ、行くよ」

 リアのそんな言葉と共に、ネアラへの攻撃が開始される。

 ネアラはもちろんだが、対応できない。リア・アルナスという存在を知覚出来ない。ユニークスキルを使った彼女の場所が分からない。

 痛みに歯を食いしばりながら、ネアラは考える。

(リア姉は何処からでも攻撃をすることが出来る。そして何処にいるか分からない。魔物でも同じように姿を隠せるようなものが世の中にはいるかもしれない。――その時に私は、何をすればいい?)

 考えている間に、次々とリアからの攻撃が繰り出される。死ぬほどの攻撃じゃない。だけれども、休みなく、時折繰り出される攻撃。

 ネアラはこのままでは駄目だと魔法を完成させる。



「燃やしつくせ。(Ogni scottatura)

 その身を、その魂を。(Sul corpo, è l'anima)

 それは業火の炎。(È una fiamma di hellfire)

 全てを灰に変えるだろう。(Tutti saranno cambiati in ceneri)

 地獄をかの者に見せよ。(Mostri che inferno di persona)

 骨まで燃やしつくす、その炎を。(La fiamma che tutto ha bruciato ad un osso)

 出現せよ!!(Appaia!!)


 《地獄の炎》(《Una fiamma infernale》)」




 ネアラは、《火属性》の魔法を完成させる。それに思いっきり魔力を込め、四方や上空にもその炎を出現させる。

 それは場所が分からないなら、全てを燃やし尽くせばいい――そんな力技を行ったらいいのではとネアラが思ったからである。

「ん。狙いよし。でも甘い」

 そしてリアの声が聞こえたかと思ったら、ネアラは次の瞬間今までで一番強い攻撃を受けた。一瞬だけ意識を失う。

 しかしすぐに目を覚ました。

「……リア姉は、やっぱり凄い」

 すぐに目を覚ました時、リアはいなかった。ソラトに聞いたら、「ちょっと魔物狩ってくる」と去っていったらしい。

「当たり前だろう。リアちゃんは凄い」

 何故だがソラトは自分の事のように自信満々に笑っていた。




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