ハーレム主人公の男友達の動き ①
さて、レベル中位のものたちを殺して回っていた連中は《姿無き英雄》——リア・アルナスが対処した。
ギルドマスターとのどちらが先に捕まえかという勝負に勝つことが出来て、リアはご機嫌であった。表情は一切変わっていないが、無表情でもリアはご機嫌なのである。
リア・アルナスは今日も今日とて、自身の通っている学園の中で《何人もその存在を知りえない》を行使してぶらぶらしている。何で自分の通う学園でそんなスキルを使うのかという突っ込みをリアは受け付ける気はない。
(んー、なんか面白そうなものないかな。観察しがいがあること起こってくれたらいいのだけど)
などと考えながらぶらぶらしているリアは、一人の少女を見かけて、目に留める。
(お、あれはソラトの事を慕っている一年生だ。何しているんだろ?)
ポユ・ルジは、そもそもソラトに興味を持った時点で変わった生徒である。何かを覗いている様子のポユ・ルジ。……覗いている先は、二人の男女。恋人同士の関係を覗き見しているらしい。
「……私もいつかソラト先輩と」
などとブツブツ言っているのを聞いたリアは、趣味が悪いなぁなんて思っていた。幼馴染としてソラトのことをよく知っているリアからしてみれば、一般的に考えてソラトを恋い慕うというのは大変なことである。
そもそもソラトはリア以外に興味や関心を抱かず、《超越者》には至っていないとしてもレベル高位者であるから変人である。
そんな変人に恋をするのは《超越者》に至る事がない普通の人からしてみればなんともまぁ、難儀なことか。
(まぁ、この一年生がソラトを落としてもそれはそれで面白いのかな)
リアがこんなことを考えていると知ったら、ソラトはそれはもう「リアちゃん!! 俺が好きなのはリアちゃんだけだよ」と嘆きそうだが、リアはそんなことを考えていた。
その後、リアはポユ・ルジを横目にリアは他の場所へと向かう。
音をたてないように、ひっそりと移動するリアは移動しながらも沢山の会話を耳に入れる。そしてその中で観察しがいのあるものが何かないかと選別している。
リア・アルナスがそうやって動いていれば、——ハーレム主人公たち一味を見かけた。
彼らはレベル中位のものたちを自分たちの手でどうにかできなかったことに落ち込んでいるようだ。しかし、《姿無き英雄》が動いたのならば仕方がないという気持ちもある模様である。
(これって《姿無き英雄》が動いたから仕方がないと思っているけど、もしネームバリューがない人が横取りというか、捕まえてたらどうしたんだろ? というか、そういう相手がいたらこいつら突撃しそうだからなー。やっぱり私が《姿無き英雄》ってばれないのが一番平和的な日常を守るためのことだよね)
そんなことを思いながらリア・アルナスは、宙へ浮いたまま、下で会話を交わすハーレム主人公たちを見る。
リアは、誰に悟られることもなく、のんびりと過ごしていきたいと思っている。
そのためにも、自分が《姿無き英雄》だとバレないようにしなければと思ってならないのであった。
「――《姿無き英雄》様は流石だわ。私たちには手が届かない場所にいるもの。どうやったら《姿無き英雄》様のようになれるのかしら」
「僕たちが頑張ればきっと《姿無き英雄》にも追いつけるよ」
ミレイの言葉に、ティアルク・ルミアネスは軽い感じでそんなことを言う。
リアからしてみれば、なんて希望観測的な言葉だろうか……とそんなことばかり考えてしまった。リアは、ひたすらにスキルを使い続け、ひたすら魔物を狩り続けている。だからこそ、手に入れた強さであるので、学園生活を満喫しながら、悠々とした暮らしの中で強くなろうとしているティアルクには共感出来ない。
(結局、まだまだハーレム主人公はレベルを上げ悩んでいるんだよね。ゲンさんとルミさんが何かしら働きかけてはいるだろうけど……。んー、どうなんだろ。でもハーレム主人公はなんだかんだレベルをあげるのかな。主人公体質ならそういうのが続くのか? 運がいいはずだしなぁ)
リアはそんなことを考えながら、じーっとハーレム主人公たち一味のことを見ていた。
そうしているうちに、その場にいるハーレム主人公の男友達――アキラ・サラガンの様子が普段と何処か違うと気づく。たまに観察しているリアでさえ気づくほどなので、当然、いつも傍に居るティアルクたちは気づくものである。
「アキラ、どうかしたのか?」
「いや……」
本音がどうかはさておき、基本的にアキラ・サラガンという存在はにこやかにいつも笑っている。笑みをうかべて、そうしてティアルクを見守っている少年の様子が何処かおかしい。
(なんか動きがあるってことかな? ハーレム主人公の男主人公は宗教的な集団と関わりあるのは知っているけど、何かやるのかな?)
リアはそんなことを考えながら、何かが起こるんだろうなという予感を感じているのだった。
 




